米 食


「あっそうだ先輩、お願いー」
「・・・お前のお願いはロクなことがないから嫌だ」
「やーんお願いー!お米分けてー」

コメ?
三上は眉をひそめて振り返った。
片足だけ靴を履いた笠井は膝で玄関に上がり込んで三上に縋る。
お互いひとり暮らしで、歩けなくもない距離に住んでいた。行き来をするのはしょっちゅうで、中学から相変わらずの仲の良さだ。

「お米無くなっちゃったんだ」
「買えよ」
「バイト代まだでないんだもんー、ちゃんと返すよー体でv」
「そいつは俺のもんだから勝手に貸し借りに使わないで貰おうか。別に米ぐらいいけどよ」
「わーい、じゃあ2升ほど」
「・・・・・・」
「冗談ですよ。2合ほど。ちゃんと返しますんで」
「俺米買ってねェから返さなくていいけど、こっち頂戴」

腰の辺りの笠井の顔を持ち上げて、三上はぐっと体を屈めた。ぎゅっときつく唇を合わせる。

「っ・・・」
「あー、でも俺も米あったかなー。爺ちゃんが確か送ってくれたのが」
「・・・コレはもう先輩のものなんじゃなかったんですか」

三上が笠井を離して台所へ向かう。
力の抜けた笠井は冷たい床にへたり込み、膝と手の平で這って三上を追いかけた。

「あっ」
「あ?」
「ねぇ!」
「・・・・・・」
「・・・あ、こないだ中西が米貰ってくって・・・どんだけ持ってったんだあいつ!!」
「えぇ〜っコメないの?俺コメ党なのにー」
「中西に文句言え!カラにしてくかフツー!俺もどっちかっつーとコメ食いたいし」
「えー、じゃあ先輩コメ買ってよー返すからー」
「・・・つか、俺もコメあるからと思って金使っちゃった・・・」
「・・・・・・」

ゴン、
靴を履いた笠井の爪先が床を叩く。

「・・・俺給料日まで中西先輩に食わして貰おうかなぁ、体で返せばいいし」
「あのな・・・。しかもあいつんちって今辰巳いるぞ」
「えっ!」
「聞いてないか?」
「俺逆だと思ってた・・・」
「・・・俺も疑った」
「じゃなくてご飯どうしよう」
「・・・兄貴にコメ貰いに行こうかな・・・笠井売って」
「うそっやだー!」
「えらい嫌いようだな」
「だって」
「・・・・・・俺がいないところで会ったりとかしてないですよね?」
「そんな危険なことしません」

そして訪れた沈黙。
笠井はあぐらをかいて靴を脱ぐ。真剣に話し合う必要がある問題だ。

「・・・冷凍庫にちょっとだけご飯があるんですけど」
「ちょっとか・・・お前仕送りは?」
「追加は餓死しかけようとも一切ナシです」
「・・・これ以上おかんに泣きついたら京がキレるからな・・・」
「・・・迷惑掛けるけど学校の人に頼もうかなぁ」

ふう、と笠井は大きく溜息。
携帯をとりだしたのを三上がアンテナを引っ張って折ろうとする。

「ちょっと!」
「俺はー?」
「・・・友達居ないんですか」
「電気止まったとか言ってる奴らにコメ買う金なんかねェよ」
「・・・・・・」
「お前の友達で俺にも金貸してくれる奴いない?」
「金は借りません。給料日までの3日ぐらい泣きついたら食わしてくれるお姉さんいるもーん」
「・・・・」
「体で返すんですよ」
「ざけんな」
「あ、先輩も食わしてくれるかも、ちゃんと体で返せる?」
「あのな・・・」

 

 

「わー笠井ちゃんってホントにホモだったんだ」
「・・・先輩声でかい・・・」

やっぱり先輩のうちに来てよかった。笠井は溜息を吐く。
笠井の斜め後ろに立つ三上を見て、部屋から出てきた女は笑った。

「どーも初めまして」
「・・・どうも」
「笠井ちゃんお金なくなるとうちくるね、今月は何に注ぎ込んだの?」
「人をマニアみたいに失礼ですね、俺は金なくなってここに来るんじゃなくてあなたが餓死してないか見に来てるんです!」
「関係が読めないんですけど」
「あぁ失礼。この子のお姉さんのお友達よ。さぁ上がってー君脱いでー」
「え」
「本気本気ー」
「じゃあ俺は台所借りまーす、三上先輩気合い入れて頑張ってv」
「嘘ぉッ!?」
「透視されてる気分になるから脱いだ方がましですよ」
「・・・・・・」
「ハイ君ここねー」

 

「・・・すいませんもう限界ですが!」
「動くな馬鹿者ッ刺すぞ!?」
「ご飯出来たけどどうしますー?」
「後で!」

部屋を覗いた笠井は悲鳴も出そうな三上に笑う。家主は絶好調でクロッキー帳に向かっていた。
頑張ってねモデルv笠井が三上に愛だけを送ってテーブルに食器を並べていく。

 

 

「そろそろ三上先輩可哀想なので離してあげてくれません?」
「いやー彼モロ好みー笠井ちゃん薄っぺらいんだもんなー」
「ほっといて下さい!」
「あーでもお腹空いてきた、そっちの何とかという彼お疲れー」
「っ・・・」

筋肉痛確実。
ぎこちなく動き始める三上をよそに、笠井達は円卓を囲む。

「ねー先輩、コメ貰って帰っていい?」
「いいよー」
「つーか俺無視ですか」
「頑張って」
「・・・・」

 

 

「・・・疲れた」
「先輩すごい三上先輩のこと気に入ってましたよ」
「もう行かない・・・あれどういう人?」

真っ直ぐ歩いて下さいよ!
よろける三上を押し返して笠井は立たせる。帰り道、ふらふらと歩く三上はまるで酔っぱらいだ。

「だから、姉さんの友達。芸術家ですよ」
「体で払う、ね・・・モデルってか・・・」
「よかった先輩のお陰でコメ貰えて!」
「・・・あっ結局お前何もしてなくねェ!?」
「脱いで欲しかったですか?」
「・・・家で脱げ」
「体大丈夫です?」
「笠井ちゃんに頑張って貰うから大丈夫です」
「ばかですか」

 

 


なんか長くなった・・・そしてまとまらなかったよ・・・
いつにも増して妙な話に。

030511

 

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