イ タ イ


お願いだからそんな誤魔化すような答じゃなくてもっときつくリアルな言葉で縛り付けてよもっと吐き気にも勝る快感を垂れ流すように惰性で頂戴色んなことをもっと忘れていきたいから冷たい痛みでもっと飛ばせて!




「・・・グロー・・・」

シャツを脱ぎかけて見えた患部は既に肌の色をしていない。
緑か紫かよく判断の付かない色に染まった部分をそっと撫でてみる。走った痛みに眉を寄せた。
滑るようにベッドの傍にへたり込む。鬱血の縁を指先で撫でた。

(イタ・・・)

笠井はしばらく考えて指を載せる。軽く押してみて、表情を崩した。
しかしその目に浮かぶのは、喉を震わす吐息は、

「かさい」
「ッ!」

ノックもなしに戸が開いて、笠井は肩を震わせる。
咄嗟に謝りたくなった。だけどそれ以上、驚きの所為で強く触れてしまった鬱血が痛い。

「あ・・・」
「・・・何か、またイイことやってんじゃん」
「・・・勝手に入んないで下さいよ、三上先輩」
「いーじゃん俺とお前の仲だろ」
「何もないですよ、あなたと俺の間には」
「ンなコトゆーなって」

三上は冷やかすように笑って中に入り、ドアを閉める。
ついでに鍵を掛けられ背筋が震えた。いつものように何かが起こる。
シャツの前をかき寄せて自分を押さえつけた。
考えるな。考えるな。考えるな。
足音が背中で止まった。

「何?」
「・・・何も」

降ってくる声に淡々と応える。
聞くな。話すと気が散った。その分熱が集まる。

「見せろっつってんだよ」
「・・・・・・」

鋭い声に思わず手を緩めた。いっそ安心したような感覚。
背中はきっと笑顔がこっちを見ている。
振り返らない笠井にしびれを切らし、三上は隣に体をおろしてシャツを引っ張る。

「ぁ」
「うっわ、すげーコトなってんな」
「いたっ、」

力加減をされずにそれをつつかれ、笠井は顔をしかめる。
三上は笑って笠井を覗き込んだ。逸らそうとした笠井の顔を両手で挟んでこっちを向かせる。

「せんぱい」
「誰に遊んで貰ったんだ?」
「・・・そんなんじゃありません」
「何されたんだよ」
「・・・蹴られたんです」
「ふーん・・・」

手を離し、三上はまた患部を見た。
手の平を滑らせて、それからやはり指でつつく。爪が痛い。

「・・・触んないでくれますか、痛いんで」
「は・・・」

腹の傍で三上が笑う。

「何言ってんの?」
「・・・・・・」
「気持ちいいんだろ?」
「・・・痛いです」
「だってこんななってんじゃん」
「やっ・・・」

指先が滑ってかたさを持ち始めた中心に触れた。ほら、と確かめるように手の平全体で押される。

「お前のヤダってのはして欲しいってコトだろ?」
「違う・・・」
「いいから脱げよ」
「・・・・・・」
「脱げって」
「!」

手が腿に置かれた。
探るように身長に撫で、決まった場所に爪を立てる。

「やめっ、痛!」
「もっとイイことしてやるから、脱げってば」

三上は笑う。
見下すその目に細胞全部が従いそうになる。だけど視線だけでは刺激を待つ体は満足しない。

「脱いで」
「・・・・・・」

震える手でベルトを外す。
しかし三上は離れない。腿に手のひらを押しつけたままだ。

「・・・脱げない、んですけど」
「いいから」
「・・・・」

笠井がゆっくりズボンを引く。
三上が緩く押さえた部分の布が擦れ、笠井が顔をしかめた。それを見ると三上は満足げに笑い、手を離す。
動作の遅い笠井を待たずに、三上は下着と一緒にズボンを引き下ろした。
右の腿に、横に走るピンク。治らない生傷に三上が一瞥を投げた。

「キショ、」
「・・・誰の所為ですか」
「お前の所為だろ?」

そうでもない、と思う。笠井の視線を三上はただ笑うだけだ。
三上に見付かる前に自身でつけた傷ではあるが、治らないのは三上の所為だ。
気持ち悪い、と言いながら三上はそれに触れた。痛覚を刺激した痛みで熱を吐き出しそうになるが、三上がまるでついでのように押さえつけそれをさせない。

「ゃん、せんぱい・・・」
「イきたい?」
「ん・・・」
「やだ」

いたい、笠井が甘く呟いた。





何となくそれに気付いたのは、父親が母を殴ったその一瞬。
過去から現在まで仲睦まじい、むしろ良すぎる両親を持ち笠井は自分が本当に幸運だと思っている。世間には酷い親も沢山居るが、彼等は自分をきちんと育ててくれた。
だけど昔、中学に入学して初めて家に帰った夜に。
理由は何だったのか知らないが、彼等は派手に喧嘩していた。
きっと彼等の生涯で最初に最後になるだろう。それでも父が母を殴った事実は確かだ。
ばれないように部屋に戻り、泣き出していた母親を思う。
笠井が抱いていた感情は一種憧れに近かった。




「なぁ、痛いのがきもちいってどんなん?」
「・・・どんなって、聞かれても」
「わっかんねェなー」
「イタッ、あ」
「あ、血ィ出てきた」
「ふぁ・・・」
「・・・痛くねーの?あぁ、痛いから良いのか。わかんねー」
「せんぱい、・・・せんぱ」

ちょっと待って、
笠井が緩く三上を押し返す。少し待って三上は力を緩めた。
ゆっくりと起き上がり、息を整えて鞄からペットボトルをだした。微妙な温さの水を嚥下する。
それは三上が思うに、自己嫌悪の現れだ。
笠井は痛くて気持ちよくて吐き気がする。

「・・・屋上で煙草吸ってんの見たときはぜってーサドだと思ったんだけどな」
「イタ、」

胸に熱い息が貼り付く。それでも笠井は拒絶するでもなく、じっと行為を受け入れる。
胸の飾りを口の中で転がし、歯を突き立て。笠井の悲鳴が喉の奥で潰れた。

「・・・ぁ」
「・・・・・・」

手が右腿の傷をなぞるように撫で上げ、その延長にさっき笠井が吐き出した精を指先に絡めた。
流れるような動作で、三上は手を滑らせる。

「!」
「もうイイだろ?」
「あ・・・」
「お前ばっかイイ思いしてんじゃ割にあわねーんだよ」
「あっ、やっ・・・!」

笠井が三上の手をシーツに押しつける。
そうかと思えばベッドを飛び出しトイレに駆け込んだ。三上は溜息を吐き、水の流れる音を待って立ち上がる。

「お前いい加減慣れろよ、いちいち吐くな」
「っ・・・で、でも」
「うっせぇ、何も言うな。待たないし聞かない」
「や、ん・・・あっ、」






「・・・辰巳なんかのどこがいいんだか」
「・・・俺のこと好きにならないから、じゃないですか」
「何それ」

吸いかけの煙草を笠井に渡す。笠井はそれをそのまま口にくわえた。
三上はベッドを降りて、ベッドサイドの灰皿を笠井に投げる。
笠井が薄く笑った。

「何だよ」
「だってね、先輩は俺のこと好きでしょ」
「・・・・・・」
「だから、俺は先輩が好きにならない」
「・・・・・・」

三上が煙草を奪い返した。
灰皿に押しつけ、それをどけて。

「・・・俺と付き合え!」





痛いばっかりの辛辣な言葉なんてリアルで甘い響きもっともっと体中に蔓延させてそれなしじゃ生きていけないぐらい乱暴な感情の一切を込めて針のように刺のように厳しく寂しくなんてあなただからお願いするのねぇ駄目ですか?

 

 

 


ごめんなさい・・・(土下座)
辰巳お題の21:ラーフルと12:反比例の丁度中間な感じで。
書いてたのにアップ忘れてた。
一番可哀想なのは三上。鬼畜な三上は書けないと思いました。

031215

 

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