初 恋


俺の初恋は多分姉さんだ。
だけどその初恋は初恋じゃない。
俺は恋とは認めない。

「おはよー英士、早いね」
「姉さんの方が早起きの癖に」
「今日は選抜の練習だっけ?」
「そう」
「ふふ、アタシがお弁当作ってもいい?」
「食べれるもので作ってくれるなら」

失礼ね、と言いながら姉さんは台所へ向かった。

姉弟仲が良いと言われる。
多分、良いんだろうとは思う。
だけど結人の所にも一馬の所にもお姉さんはいるけど、それぞれ姉弟仲が良いと思う。
うちとは違う、仲の良さだ。
少し、羨ましいと思う。

姉弟喧嘩というものをしたことがない。
多分それが違いだと思う。
結人達はそれが仲の良さだ、と言うけど。

「・・・英士、それ」
「弁当?うん、姉さんが作ったよ」
「キッレー」

結人が不満げにそれを言った。
もう何度聞いたか分からない。

「でも結人のトコも今日はお姉さんじゃない?」
「まぁかーさんはタコウインナーという器用な真似は出来ねぇから多分。でも自分の作るついでだぜ?」
「つーかうちの姉貴料理しねぇよ・・・」
「一馬に食わせるの勿体ないんじゃねーの?」
「いや・・・料理実習で病人出したから・・・」
「・・・・・・」

姉さんの話題が俺はない。
結人は直ぐにねーちゃんが、と言う。
一馬も姉貴がさぁ、と言う。
俺はあんまりない。

「お前ら3人揃って姉ちゃんいんの?」
「おう、凄くね?」
「誰か一人ぐらい紹介しろ」
「あー無理。姉ちゃん前に鳴海見てキモッって言い切ったから」
「うちの姉貴も年下趣味だかんなぁ」
「若菜はともかく真田、今の発言は聞き捨てならねぇな」
「姉貴がゆったの!」

「あ、でも俺前に若菜んちで3人とも見たことある」
「あぁ、たまたま上原遊びに来たときにうちに3人揃ってたから」
「何かさー、郭の姉ちゃんって一目見て分かるな」
「・・・そう?」
「うん、すっげー似てる」

それもよく言われる。
別に俺が女顔だとか、姉さんが男前だとか言う訳じゃない。

「なぁ、美人?」
「うん、美人が3人そろっててビビった」
「うっわいいなーそれ!」
「だからそのとき鳴海の話してたんだって」
「・・・・・・」

姉さんは何て言ってたかなぁ。

初恋が姉さんだというのは、俺自身は覚えてないからだ。
親から聞かされたから、ああそうなのかと思っただけだ。
姉さんも一度それらしいことを漏らしたことがある。

だから俺はそれを初恋だとは認めない。

だから俺は、初恋というのはまだだと言うことになる。
興味がないわけじゃないけど、あるわけでもない。
可愛いと思う子は日常生活で出会うけど、それと恋愛は別物だ(と前に言ったら結人に散々否定された)。

「あ、お帰り」
「・・・ただいま、姉さん今日は早いね」
「ちょっと熱っぽいからバイト抜けて来ちゃった」
「大丈夫?」
「うん、平気」







全部

嘘、だ。

姉さんのことを話したがらないのは独占欲が強いだけで
似てると言われて複雑なのは自分が好きみたいだからで
可愛いと思う子もホントは姉さん基準で考えてて

ホントはずっと初恋なんだ。

初恋は実らないなんて

・・・多分、それはこういうことだからだ。

 

 


英士さんでよく考えたら初姉夢?
ひょっとしたら一番シスコンかもしれません。

040325

 

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