ラ ブ レ タ ー


「タクータクタクタク」
「何、一回呼べば分かるから」
「ハイ、渡してくれって頼まれた。ラブレターだよ、やるねータク!」
「・・・茶封筒のラブレター・・・?」
「うん、こばやんから」
「そんなことだろうと思った」

笠井は笑いながら封筒を受け取った。
担任からのラブレターらしい。中に入っていたのはこの間のテストの成績表と二者面談の時間の通知。

「うわ、タクあったまいー」
「普通じゃん。誠二は勉強しなさすぎ。やればできるのにさ」
「やる気も含めて勉強すると言うことなのです」
「なるほど」

つまり渋沢は毎回遊びに付き合ってると言うことになる。哀れだ。

「・・・あ、ラブレターと言えばさぁ、タクこの間下駄箱入ってなかった?」
「・・・言わなかったっけ・・・」
「何が?」
「・・・あれ・・・不幸の手紙だったんだけど・・・」
「ふ・・・!」

藤代が思いきり吹き出した。
ツボにはまったらしく、しばらく笑っていたかと思えばずるずるとしゃがみ込んでいく。

「不幸の手紙!」
「うん・・・」
「あははっ!それ大森からっしょ!キャプテンのトコにも来てたもん!」
「大森ィ?あれ三上先輩の字だったよ」
「三上先輩!」

藤代は今度こそ帰って来れないほど笑い転げている。
今更不幸の手紙もないだろう。誰が発生源か知らないが、女子棟ならともかく男子棟で不幸の手紙が蔓延しているのは心底気味が悪い。
日本男児たるもの阿呆な手紙に惑わされてどうする。
男らしい笠井に藤代は笑いの余韻を引きずる。

「あー腹イテー・・・」
「笑いすぎ」
「そういやタクって面談まだだっけ?」
「うん、こないだ委員会と重なったから」
「彼女欲しいなー」
「・・・自分で話ふっといて興味なかったらすぐ逸らすの止めなよ」
「だって俺委員会とか関係ないもん!」
「俺が何委員かも知らないだろ。なんか女子棟と合同で挨拶運動しようかって計画あるらしいよ」
「嘘っなにそれっタク何委員!?」
「風紀。まだ決定じゃないけどね」
「えーいいなーいいなー何それー!ずっこい!」
「あのなー・・・誠二そればっか」
「だってそこ見ても男ばっかじゃーん、恋がしたい年頃なんだよ!タクだって分かるだろ!!」
「俺はそんな暇ない」
「つまんないなー。それでも男か!?ちゃんと付いてる!?」
「ついてます!」
「よしっ見せてみろ!」
「ギャーッ!」






「まぁお前は全体的に心配はないな。何か困ったこととかあるか?」
「誠二が発情してるのどうにかして下さい」
「発・・・笠井の口からそう言うの聞くと裏切られた気分になるな」
「先生それ差別ですよ」

担任は資料を片付けながら笑う。

「何だ?笠井も女の子いないと嫌ってか」
「そういうわけじゃないですけど。・・・女子苦手だし」
「そうか?・・・あ、そうだ。コレ、昇降口に落ちてたぞ」
「え?」
「ラブレターかもなぁ」
「・・・まさか、だってここの昇降口でしょ?」

差し出された封筒を受け取り、笠井はそれをじっと眺める。
笠井竹巳様。

「・・・・・・」






小学校の頃。

もう今年も終わる頃だ、引き出しの中に封筒を見つけたのは。
何だろうと思っているうちに誰かが横から抜き取って。
それで。

笠井竹巳さま。
それは紛れもなく俺宛の手紙。
でも読んだのは別の人で。

もう彼女は随分前に引っ越した。
それから何度かうちに手紙が来たの。正直閉口した。
一度だけ返事を書いた。それから手紙は来ない。
俺は、なんて書いたかなんて覚えていない。

・・・手紙は貰うのも書くのも苦手だ。



笠井は屋上に上がってじっと手紙を見つめた。
笠井竹巳様。

「・・・・・・」

彼女は今どうしてるんだろうか。
そんな、考えても仕方のないことを考えている。

 

 


微妙ですか?微妙?アウト?
カプも夢もなしな感じで書いてます。

031223

 

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