パ ズ ル


外は雨。
暇を持て余す中西の部屋にノックがあった。

「どうぞー」
「お邪魔します・・・何て格好してるんですか」

うとうとしていた中西は目を開けずに答えた。
入ってきた呆れた声に誰だか分かるが、依然としてそのままだ。

「中西先輩、いいものあげる」
「いいもの?」

床に寝っ転がった中西が薄く目を開けると、天井の電気を遮るように笠井が立っていた。
眩しい、と呟くと笠井は小さく笑って、頭の傍にしゃがみ込む。
直ぐ傍に置かれたのは箱。
俯せになってそれを見るとジグソーパズルの箱らしい。笠井が素早く蓋を取って後ろに隠してしまったので、絵柄までは分からなかった。

「うーん、俺にとってはいいものじゃないかな」
「そうですか?」
「パズル面倒だから嫌い」
「俺がやってって言ってもやってくれませんか?」
「・・・だってコレ、額はないでしょ?」
「あ、・・・ないですね」
「どうせ壊すんじゃん」
「暇そうにしてるんだから良いじゃないですか」
「・・・・」

目を合わせると笠井がにやりと笑う。それに小さく笑い返して、中西は諦めたように箱をひっくり返した。
動物の写真らしい。元の絵が分かっていたとしても難しいだろう。

「どうしたのコレ」
「誠二がくれたんですよ。あいつも貰った奴らしいんですけど、誠二もこういうの苦手だから」
「ふーん。何コレ、赤いトコって鼻?」
「ひみつー」
「犬?猫?・・・ハムスターとか」
「ひみつー」
「出来るわけないしコレ」

そう言いながらも中西は端の部分をより分けていく。
角を見付けて、そこから少しずつつなげていった。

「これ絶対中西先輩一人でやらせますからね」
「えー、だってコレ壊すでしょ?」
「いいのー、額買ってきたときは一緒にやります」
「めんどいー」
「だーめ」

中西が溜息を吐いて、それでも少しずつピースをつなげていく。
笠井はその手元をじっと見る。
文句を言う割にはそれなりに早いペースで繋がっていくパズルに、今度は笠井が溜息を吐いた。

「なによー不満そう」
「だって中西先輩何でも出来ちゃうんだもん」
「俺にだって出来ないことぐらいあるよー?」
「例えば?」
「ピアノが弾けない」
「・・・片手レベルなら出来る癖に」
「あれ、いつ聞いた?」
「音楽室の前通ったときたまたま中覗いたら」
「あらら。はずかしー」

小さく笑いながら中西はまたピースをつなげた。
不満そうな笠井の顔を見てまた笑う。

「笠井がどんな気持ちなのかなって思っただけよ」
「・・・・・・嘘臭い」
「酷いなぁ」

あ、またはまった。
中西の手元を見ていても、笠井の口から漏れるのは溜息ばかりだった。

「どうしたの」
「・・・俺はさ、こうして、ジグソーパズルを組み立てるみたいにして中西先輩のこと一つずつ分かっていこうとしてるのに、まだまだ枠組みも見えないよ」
「そう?」
「うん、形も分かんない」

あっという間にピースは1周する。
そう大きくない長方形。

「じゃあ手伝ってあげるよ」
「・・・中西先輩が?」
「うん」
「・・・嘘つくのなしですよ」
「つかないよー笠井には」
「それが嘘っぽい」
「あら」





「俺だって笠井の形見えてないよ」
「嘘吐き」
「ホントだって」
「・・・・」

「キスしたら信じる?」
「いらない」
「まあそう言わずに」




「・・・パズルが完成したら信じてあげても良いですよ」

触れた唇にやっぱり信憑性はなかったから。

 

 


三笠あってもなくてもどっちでもいいや(え)。

030402

 

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