「・・・あ・・・笠井靴箱そこなのか?」
「あ、はい」
「・・・・・・」

躊躇うように辰巳がそこで口をつぐむ。
不思議そうな顔で笠井が見上げてきたので、仕方なしに口を開いた。

「そこの壊れてるだろ、」
「ええ、ちゃんと蓋が閉まらない程度で別に支障はないですけど。あ、もしかして辰巳先輩もここ使ってました?」

笠井が少し勢い付けて蓋を閉めると、横へ開くタイプの蓋は跳ね返って薄く開いた。
笠井は小さく笑いながらそれをそっと手で押して閉める。

「ああ・・・というか、悪い、それやったの俺なんだ」
「え」
「・・・閉まりにくかったから、少しだけ押したつもりだったんだが」
「・・・どんだけ馬鹿力なんですか」
「すまん・・・」
「・・・別に・・・辰巳先輩が謝ることじゃないですよ。悪いのは扉です」
「・・・・」

小さく笑って笠井は歩きだした。
笠井が横を通って、辰巳は少し見送って後ろを歩きだす。

「でもあそこ使ってたのが辰巳先輩でよかったな」
「・・・どうして」
「なんか、誰が使ったのか分からない所っていやじゃないですか。辰巳先輩でよかった」

笠井はもう一度繰り返した。
彼が少しだけ振り返ったときに、含み笑いをしているような表情に見えた。

それは思春期特有の潔癖だ。
それは分かっている。自分だから、と言う解釈はこの場合適切じゃない。
それは分かってる。

心の扉、とよく表現されることがある。
それについて言うなら、この後輩はその扉を閉めていることが多い。
時々外の様子をうかがって、細く開けたドアの隙間からこっちを覗いてくるのだ。

・・・目が合った。

いつまで経っても試されている。

 

 


え、辰巳キモイ・・・
キモ格好いい(よくないよ)
辰笠って、辰笠ってえー?

030421

 

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