僕 の 秘 密
「・・・・・・」
小さなかすれた声が聞こえてが立ち止まった。
手を引かれて一緒に歩いていた亮も足を止め、年の離れた兄を見上げる。「・・・猫や」
「あっ」段ボールを見かけるなり、亮はの手を振り払って駆け出した。
家から少し離れた場所のバス停、のベンチの下。「亮、」
兄の声に咎められるのかと思い、亮は足を止めて振り返る。
は猫アレルギーで、飼えないということは亮にも分かっていた。「何匹?」
「・・・・」亮はとりあえず頷いて、それからまたバス停まで走った。まだときどきふらつく弟の背中を見ながら、はゆっくり歩く。
丈夫な段ボールしか守ってくれるものがないなかで、子猫。
かすれた声は鳴き続けているせいだろうか。細い足をタオルの上で必死で延ばし、子猫は待っている。「2ひき」
「・・・そうか」
「ガリガリやで」
「・・・・」追い付いたは、亮がベンチの下からひっぱりだした段ボールを見下ろした。
小さい体に、ガラス玉の目ばっかりが妙にでかい。「・・・多分、まだミルク飲みよる頃やろな」
子猫を親から離すのは乳離れしてからがいい。
親の愛情を感じながら育つ猫と比べると、成長したときの気性が荒くなる。人間だって同じだ。「可哀想やな」
「・・・・」ふたりとも言いたいことは言えなかった。
亮は少し手を伸ばして1匹に触れた。軟らかい体に宿る体温に少し驚く。「ガリガリ」
幼児のふっくらとした指よりも細い前足が、亮の手に弱く爪をたてる。
「・・・ごめんな」
頭上で兄が呟いて亮は顔を上げた。しゃがんでくるに合わせて顔を下ろす。
「ごめんな、・・・」
「・・・・」あ、と言い掛けて亮は口を閉じる。
が猫を撫でた。「・・・ごめん」
「・・・、」
「俺の所為で拾ってやれへん」
「、手痒くなんで、おかん怒るで」
「・・・秘密や」それからまた、ごめん。と。
「・・・なぁ、、うちでは飼われへんけど、おとんにゆうたら飼ってくれる人探されへんかな」
「・・・どうやろ、聞いてみな」
「聞いてみよう!ほなはよ帰らにゃ!」
「うん」がポケットに手を入れる。
手を繋ぎ直すつもりだった亮はハッとした。「・・・・」
「ほら、亮帰んで」
「・・・・」先に歩きだしたの後について歩く。
無言の亮を不審がってが振り返った。「亮?」
「・・・の薬どこやっけ」
「え・・・」
「おかんに言わへんのやろ、俺が薬とってくる」
「・・・・」
「・・・まぁどっかのバカは結局見つかってバレたんやけどなー」
「は?見つかったんはやろが」
「ちゃうって、」
「責任転嫁すんなや」そっくりの顔が睨み合う。
さっきからソファに並んで大人しくしている兄弟を見て、彼らの真ん中のが溜息を吐いた。「自分らさっきから何コソコソしよるん?べったりとくっついてからに」
「秘密ー」
「女には男同士の秘密はわからへんで、なー?」
「きっしょ!」
「「・・・」」
多分求められていたのはこんなのじゃない・・・
・・・いいんだ・・・(え)030426
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