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火　が　つ　い　た　の　は　、

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「あ、キレイ」

笠井が優しく笑ったのを三上は横目に見た。
きみのほうがきれいだよ、なんて歯が抜け落ちそうなセリフは言えないし、そもそも三上は花火の方がキレイだと思う。

（そりゃ、まぁ、相手だって男だし）

キレイとか言う言葉にはやっぱりほど遠いだろう。
線香花火を真剣な目で笠井が見つめていたので、パシンとその手を叩いてやった。
勿論その衝撃で火の玉がコンクリートの上に落ちてしまい、あっと言う間に火は消える。

「あっ・・・なんでそーゆーことするんですか！」
「そーやって可愛い反応するから」
「・・・・・・」

笠井は反論する気も失せて、次の花火に火を点けた。
屋上はそう広くないが、中学生男子がふざけて遊ぶにはこれぐらいが丁度良いかもしれない。
花火は大人の人とやりましょう、なんて小学校で言われたけれど、その点は年齢詐欺師が何人か居るので大丈夫だろう。

次笠井の邪魔をすると本気で怒られそうなので、三上はぼんやりと近藤と高田が花火を振り回すのを見ている。弧を描く光。
やるやると張り切っていた中西は飽きてしまったようで、傍観しているだけの辰巳の傍にしゃがみ込んでいた。その傍で間宮もペットを連れて傍観者になっている。

やっぱり暇なので、三上は線香花火を１本貰って火を点ける。
じりじりと火の玉が出来て、くるくるオレンジ色が回る。やがてふつふつとしてきて、小さく弾けながら火花を飛ばし始めた。
邪魔されなくても火の玉を落としてしまった笠井が、悔しそうに三上の手元を見る。
細い火花に三上の手が触った。

「あ、あつっ」
「触ってみ？」
「やだ、あつい」
「熱くねーよ、温度低いから」
「・・・変態？」
「ホントだって、ちょっと温かいぐらい」

でも笠井は手を伸ばさなかった。
真剣な三上の様子をじっと見る。線香花火の小さな明かりに照らされた顔は本当に真剣で、一瞬グランドを思わせた。
それは何だか可笑しい気がしてくるほどに、何をそんなに魅力があるんだろう。
そんなことを思った自分が恥ずかしくなって、笠井はまた花火を手に取った。
カラフルなこよりのような線香花火。昔、持ち手に火を点けたと言ったら三上が笑う。

「・・・あっ」
「え？」
「お前の所為で落ちた」
「・・・先輩が勝手に笑ったんじゃん」

生き物のように動く火の玉をじっと見た。
パチパチと火花が散り始める。細いけれど木の枝のようにしっかりとした。
多分今は最盛期。
笠井は隣を盗み見た。
藤代からネズミ花火の奇襲を受けた根岸を見て笑っている。
渋沢が藤代は当然、三上にも注意を促した。
・・・その、理不尽だと言わんばかりの顔が。
笠井が視線を戻すと、そこに火は点いていない。落ちたのか、終わったのか分からなかった。

「・・・恋愛みたい？」
「え？」
「花火」
「・・・・」

また恥ずかしいこと言い始めたぞ。
何故か笠井の方が照れながら茶化してやると三上に小突かれる。

「人んちに放火しといて笠井ちゃんはこれからどうしてくれるつもりなんだろうな？」
「・・・それはこっちのセリフです、放火犯」
「飛び火じゃん？」
「違うもん。逆じゃない？」
「あ、そーいうこと言う」

だけど素直じゃない笠井も可愛くて仕方がない。いい加減自分は頭が可笑しくなったんだろうか。
横目に大森がフェンスの隙間から外に向かって花火をしているのが見える。

「・・・でも花火は消えちゃうし、例えるのに向かない」
「消えないだろ？」
「なんで？」
「笠井さんが絶えず火薬を足してくれれば」
「・・・・・・それ花火に例える意味ない」

三上が笑いながら立ち上がって、残った線香花火とライターを辰巳に押しつけに行った。
しゃがんで中西に何か耳打ちし、意味深に笑いつつ帰ってきて笠井を立たせる。

「・・・何ですか」
「火薬足したげる」
「・・・へんたい」

ぬるい温度の手が笠井を室内に引き入れた。
騒がしい声がドアの向こうに行ってしまう。

「でもヤじゃないだろ？」
「・・・ヤだもん」
「意地っ張り」
「花火ー」
「今度今度。ふたりでやろ」
「つまんない」
「・・・・・・」

いつからこんなにも　俺の中に火がついたのか

多分

この火は

絶えることは　、　　ない

抱き合った互いの体からは煙の匂いがした。
後に後に残るという点だけならば、恋愛に例えるのもあうけれど。

でもできれば、火が消えない方が

　

　

　

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花火・・・ギリギリっぽい・・・
９月に入ってから花火ネタって何かムードないじゃん・・・
そしてこのお題は絶対花火でやりたかった。
森全員居ますか・・・？（危うい）

最後の方の「いつから〜からない」まで
メールから引用させて貰っちゃいました。
あのすいませんダメだったら言って下さい。
巧いこと考えるなと思ったので思わず、うふふ。

０３０８２１