ジ ョ ー カ ー


不適に笑うあんたは、ポケットの中に切り札を隠し持っているに違いない。
笠井は相手の手に残ったカードをじっと見る。2枚、そのどちらかが自分の手元のカードと一致する。

「オーイ、早くしろ」
「うう…だって先輩が変なもん賭けるから…」
「ほら」
「…」

突き出された2枚のカード。選ぶ指先は迷い続ける。三上の顔色を伺ってみるが変わるはずもなく。
…そう、もうずっと変わらない。出会った頃から幾度季節を過ぎていても。

「…賭けナシにしません?」
「ここまできて言うな」
「〜〜〜だってやだ!」
「何だよ、別に脱げとか言ってねぇだろ」
「脱いで済むなら脱ぎます」
「じゃあ賭け内容変更すっか、笠井が負けたらすンごいことしてもらう」
「…凄いって、どんな」
「お楽しみv」
「それもヤダッ」
「往生際が悪い!バシッと1枚引け!」
「う〜〜〜〜じゃあこっちッ………」
「抜けよ」
「…」

出した指が止まる。カードの上でふらふらと左右に迷っている。

「…何でこんなことに…」
「ホラ早く」
「…」

その笑顔の奥に、どんな最強のカードを隠してる?巧みに隠され端も見えない。
きっと自分は勝てないのだろう、笠井は悟って溜息を吐く。
そして引き抜いた1枚を見ると、ピエロが笠井に向かって微笑んでいた。

「…やっぱりこっちだった…!」
「じゃあ引くなよ。ほら引かせろ」
「…負ける気なんかないんですよね?」
「勿論」
「……」

手元に数を増やした2枚のカード。じっとそれを睨みつけ、笠井は散々繰ってから三上に向ける。
頼むから、あっちに行ってよジョーカー。
三上の手がそっちに触れた。が、次の瞬間に隣のカードが引かれていく。一瞬の出来事に笠井の頭はついていかない。
1枚残されたジョーカー、三上が2枚合わせて机に落とす。

「俺の勝ち」
「…え?」
「顔に出てた」
「!! なっ、ナシ!今のナシ!」
「ブッブー。さぁ頼むぜ笠井」
「………」

負けてはいけなかったのに。
笠井は血の気が引くのを感じながら、おそるおそる三上を見る。

「…因みに賭け内容に変更は…?」
「ナシ。約束通りご両親に紹介してもらう」
「…会ってどうするの…?」
「カミングアウト」
「げっ!」
「一緒に住むって言い出したのお前だろ、だったらちゃんとしてぇじゃん」
「…いいじゃん、今までと大差ないよ」
「ある」
「…」
「大丈夫」
「…ンなわけあるか」

畜生め。
魔法を使うピエロは笑って笠井を引き寄せた。

 

 


わんわん。土山のせいか笠井がわんこにも見えてきたよ。

050417

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