新 発 見


最近分かったことがある。

井上は顔が広い。
勿論恋愛対象としてなんて見られてないんだろうけど、女友達と言う輩が多いんだ。

「おっ久保ええもん持っとるな!」
「いーでしょ、眼鏡に買わせたv」
「眼鏡って理科?あぁ、あいつ女バス顧問か」

バスケ部の久保さん、と井上は仲良かっただろうかと少し考える。
久保さんは可愛い。少しギャル系なのでアタシは苦手。そういえば1年のとき彼女とサルは同じクラスだった。
彼女の手にあるのはチューペット。駄菓子やさんなんかで売ってるやつだ。
よく冷えて凍っている。いいな、日陰とはいえ暑いんだここ。
部活中の筈のサル も日陰に逃げてきて久保さんに遭遇したんだし。
グランドの椎名氏が遂に休憩時間にする。

「井上も外で頑張るねー」
「体育館も暑いやろ」
「暑いよー、男子がハーフコート使ってるからむっさいしねー!」
「そらイヤやな」
「あ、井上だー。久保遅い!」
「あ、ミカごめん。サルが餌寄越せって煩くて」
「誰がサルやねん!」

わーミカちゃんだ。
同じクラスの委員長、そう言えば彼女も女バスだ。
時々ボケる可愛い子なんだなぁこれが。足細いし腕細いしウエスト細いし、でも痩せすぎってわけじゃなく。
羨ましいなんて気持ちも通り越す。

「わーサッカー部暑そうだねー。あたし日焼け したくないからバスケ部なんだ」
「わー適当やな」
「暑くなかったらサッカー部のマネージャーとかやったのになー」
「わー今からでも入りぃや、俺の雄姿が拝めるのも後少しやで!」
「ばっかじゃん?サッカー部っちゃ翼君狙いじゃん、誰がサルなんか気にすんだよ」
「久保キッツ・・・」

どき。
マネージャーでもないのにベンチに入り込み(しかも影に入るよう移動までしてくれた)椎名見てるふりしてサルを見てるアタシはどうすれば。
そうだよね、いっそマネージャーやろうかな。痩せるかなぁ。

「わー、久保そろそろ戻んなきゃ」
「わーもう戻るん?」
「・・・わーっもう口癖なんだからほっといて いてよ!」
「わー」
「わーーッ」

井上と久保さんが笑う傍でミカちゃんが真っ赤になった。
やめろ、それ可愛すぎ。劣等感バシバシ。可愛いとか言われたいわけじゃないけど。

「もーっ、ハイ1本だけ!」
「おおきに!」
「わー足りるかなー」
「わーすまんなぁ」
「井上ッ」

サルが二人と別れて戻ってくる。
手に握られたチューペットをパキンと割って片方をくわえた。クリーム色のアレはきっとりんご味。

「・・・お帰り」
「はい」
「・・・・」

差し出されたのは片割れ。
折って出来た出口から、溶けたアイスが少し盛り上がる。

「いらんの?」
「・・・いる」

貰えるとは思わなかった。
でもよく考えたらそうなんだ、こいつは戦利品を分ける。
野性じゃ生きていけまい。だから椎名氏が飼ってるのか。
昔はよく食べたアイスは冷たくて気持ち良かった。

「あ、井上休憩ー?」
「柿木さっきもうろついてなかったか?サボりやろ」
「ちゃんと部活やってますー」
「なぁ女テニ何で部活中ユニフォーム着ぃへんの?」
「エロッ!」

・・・今度は女テニか・・・女テニは怖いんだよなぁ。柿木さんのことはよく知らないけど。

「何かいいもん持ってるー、ちょーだい」
「いやや」
「ケチー。まぁいいか、サルと間接キス何かしたら病気移るし」
「持ってへんわ!」
「わかんないよー。飴いる?」
「いる」
「さっき岸本センセーに バレた子いてさ」
「己の保身かい」
「つーわけで全部あげる」

ハーフパンツのポケットからカラフルな飴が一握り出てきた。ゴミ含む。

「・・・・・・」

今まで井上のことなんか嫌いだったからよく分からない。
ここ最近で分かったんだ、井上は色んな人と話をする。

「あっやべっ、岸本!」
「あっ!じゃあね井上ッ」

柿木さんが急いでテニスコートに走った。
井上がこっちを見たかと思えば、受け取った飴をアタシに押しつける。

「ちょっ」
「隠せ!」

慌ててスカートのポケットに飴を突っ込む。
夏スカートには変えたばかり、実は冬服のスカートよりも少し短い。いや、別に何処ぞのバカを意識したわけ じゃない。暑いからだ。

「おう井上、部活頑張ってるか?」
「頑張ってますよー」

体育会系数学教師岸本。
ジャージにポロシャツはやめてください。

「お、何でがいるんだ?」
「・・・ひとりで帰るの怖いんで、帰るの椎名と同じ方向なので待ってようかと」
「そうか、夏になると不審者増えるしな。椎名はああ見えて強いらしいから」
「先生それはどういう意味ですか?」

あ、椎名・・・。
自分で話を吹っかけておいて椎名は岸本先生を無視する。さり気ない反抗だ。

「ナオキ、お前集合って何度言えば気が済むわけ!?女子の声聞く耳はあっても俺の指示を聞く耳はないんだ?しかも休憩の前から既に戦線離脱してたお前が真っ先に戻ってくるべきじゃないの?暑いのが嫌なら北極にでも南極にでも行っちゃえば?いっそ俺が飛行機代出してあげても良いよ、お前がサッカーしたくないならだけど」
「あーハイハイハイッごめんなさいっ」

椎名の勢いに井上がグランドに逃げていく。

あーあ、
何で女子とばっか話するかな。

こんなコト考えてるアホな自分も新発見。

 

 


大変キモイですが井上です。
わーきもいきもい。
ヒロインが何処で何してるのかよく分かりませんね。
彼女は体育館の傍のグランドの傍にいるのです(遅いよ)

030608

 

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