タ ッ チ


「大丈夫か?」
「死ぬ・・・俺 もう死んだ、出せるもんはもう全部出した・・・」

喋る元気はあるらしい。ぐったりとベッドに沈み込んだ中西は涙目で、辰巳に渡された濡れタオルを額ではなく目に当てる。

「つかいっそ死にたい」
「これぐらいじゃ人は死なない」
「だって俺体温が40度越えたのなんか生まれて初めてだよ、熱出して戻したとかも初めてよ、更に昨日の夜は鼻血出たし!熱引かないし!」
「興奮するとまた出るぞ、粘膜弱ってるんだ。薬効かないのか?」
「あんなもん飲みすぎてて効かない。粉末は飲めない」
「・・・・」
「水ちょーだい」
「起きれるか?」
「口移しで」
「・・・ストローもらってくる」

こっちがぐったりしてきた。
根岸が買い出しに行っている間看病を任された辰巳だが、看病疲れでこっちがダウンしそうだ。
立ち上がりかけた辰巳を中西は慌てて引き止める。手を伸ばしたが少し届かず、気づいた辰巳は椅子に戻った。
伸びてきた中西の手が触れた。気持ち悪いほどの熱さ。

「あーごめんね手の平汗かいてるけど」
「いや」
「お願いここいて?」
「・・・・」

普段冷たい中西の手が信じられない。
握る力もそう強くなく、辰巳の方が握り返した。

「・・・水・・・」
「・・・ない」
「うー・・・じゃあいい、・・・あ、いや三上に持ってきてもらおう」

反対の手でメールを打つが携帯が重い、と文句を言う。送った頃には疲れたらしく、ベッドに落として小さく息を吐いた。

「小さいときも熱出して寝込んだことがあるんだけどそのときも誰かがいてさ、・・・あれ?誰だったんだろう」
「おい・・・」
「まぁいいか・・・その人の手は冷たかったんだけどさ、辰巳の手は熱いね」
「カイロ代わりに使うくせに」
「なんで拗ねてんのー。でも俺の方が熱くて触ってる気がしないな」
「・・・・」
「俺寝るけどここいてね、誰かいないと俺ほんと悪夢見るんだ」

中西が目を瞑って寝る体勢に入る。
元気そうに喋りはするが40度を越す高熱だ、苦しそうな荒い呼吸に合わせて胸が上下する。
辰巳は何となしにその顔を見て思いついたように上体を倒す。

「・・・何?」

中西が目を開けたときには辰巳は戻っていて、口を開けかけるとドアが開いてグラス片手に三上が入ってくる。

「お前病人だからって人巻き込むんじゃねーよ!しかも辰巳いるんじゃねぇかッ!」
「三上あと任せた」

パッと中西の手を離し、辰巳はそのまま部屋を出て行く。
聞き損ねた中西は舌打ちするが関係の無い三上はそれ以上に不機嫌そうに顔をしかめる。

「何でお前の世話なんか」
「俺誰か傍にいないとダメー」
「ガキか!」
「じゃあ笠井呼んでよー」
「うつったらどうすんだよ!」

本当に片方は病人なのか。
廊下まで聞こえてくる中西の声に辰巳は溜息。汗ばんだ手をもてあまし、とりあえず手を洗いに行こうと歩き出す。

(うがい要るかな・・・)

うつったらうつし返そう。
あれだけ熱を出しては中西のように喋り続けることは出来ないと思うが、キスの1回や2回なら体力も消耗しないだろう。

(・・・いつから風邪ひいてないんだろう・・・)

別に風邪を引きたいわけじゃないが。
手を洗ってうがいして、と頭の中でスケジュールを組む。

(・・・粉薬買いに行こう)

 

 


かぜっぴき中西。辰巳に看病されたい。

 

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