予 感 的 中


「手伝おうか」
「怪我しない程度に見学してなさい」

ぜったい好きになると思った。



「ラストッ!」

脚を振り切って相手が落ちる前に自分で拍手。
中西が振り返って相手を見れば、結局巻き込まれた即席の仲間の方も終わっている。

「お疲れー、私立っていっても物騒ね」

結構騒いだと思ったのだが途中で誰も止めに来なかった。確かに校舎の裏庭はちょっとした隔離空間だが、学校の傍を通った人もいたはずだ。無視か。

「・・・怪我してる」
「ん?あぁ、こんなもん」

初めて袖を通したブレザーは途中で脱ぎ捨てていた。捲くったワイシャツから出た腕に軽いかすり傷。ブレザーを拾って払いながら制服は無事でよかったと笑うが彼の方はいい顔をしない。
身長は中西と同じぐらい、温厚そうな表情だがで、今まで喧嘩に混ざっていたのを中西は知っているので柔道部かもという感じ。

「保健室」
「いいよこんなの。あんた無傷だね。あ、ちょっと拳擦ってるか」
「・・・人殴ったの久しぶりだ」
「お?慣れてんな??」
「受験勉強で半年・・・いや年末に絡まれたからブランクは3ヶ月か」
「・・・あんた1年?」
「・・・そう」
「見えねー!」
「・・・・」

確かに背は高い方だが、雰囲気が同年代のそれと違う。言われてみれば若干制服が大きいような。
中西が笑っていると無言でチョップを繰り出してくる。

「イテ、俺は悪くないよ。お前をそうさせた全ての原因を恨め。入学式行く?」
「・・・始まってるな」
「ね」

腕時計を見て彼は溜息。
ますます中1には見えなくて中西は再び笑い出した。



「途中で親の車が故障して」
「裏庭で入学式さぼったれと思ってたら怖い先輩方に喧嘩吹っかけられました」
「・・・・」

あっけらかんと言い切る中西に担任も絶句する。いかにも生徒指導部体育会系(ただし社会科教師)の迫力も形無しだ。

「・・・中西・・・ってひょっとしなくても姉貴がいるだろ」
「あら姉さんご存知ー?」
「アレのお陰ではげたからな!」
「お気の毒様ーv姉さんは悪気無いから」
「お前はあるんだな」
「えー?やだな先生ったらv」
「お前の卒業までに坊主になりそうだ」
「せんせーよろしく!」



「・・・なんでアイツは先に開放かな、同罪っつってんのに信じないしー」

そういえば名前も聞いてない。教室へ向かいながら中西はふと思う。
無表情で喧嘩に混ざってきて平然と教師に嘘ついて。同じ年には見えなくて喧嘩なんてしなさそうな。
無意識に歩いていると明らかにHR教室のある棟ではないことに気づき、面倒なので保健室を探すことにする。保健室は大概1階だ、すぐに見つかるだろう。これから何かとお世話になる予定だから視察も兼ねて進路変更。
何を考えてたんだっけ、と思い返し。

「・・・まぁいっか」

縁があるなら知り合うだろう。
少し話をした程度の人間のことなんてすぐに忘れてしまうと思う。実際既に声も顔を分からない。
でも予感がする。
絶対好きになる。






「ただいま」
「おー辰巳お帰り・・・ってどうしたソレ、怪我したのか?」

談話室に入ってきた辰巳を見て三上は少し焦る。頼まれていた本を三上に差し出していた辰巳はあぁ、とシャツについた血に気がついた。

「大丈夫だ」
「何だよソレ」
「返り血」
「!?」
「喧嘩押し売られたんだ。久しぶりだときついな」

図書館へ行ったはずだが。
三上が青くなる横で中西が辰巳は目つき悪いからねぇと笑う。

「怪我ないの?」
「腹見るか?」
「あー腹?夜にでもで見せてもらうわ、後の方が面白いことになってるから」
「・・・俺は暴力反対〜〜」
「三上は田舎者だからねぇ」
「田舎言うな!」
「俺だって好きでやってるわけじゃないぞ」
「じゃあ構うなよ!」
「咄嗟に手が」
「なんだよその反射行動は!」
「・・・癖」
「慣れるほどこなすな!ばれたらどーすんだよ!」
「大丈夫でしょー辰巳中学生に見えないもん。だから相手だって喧嘩ふってんだろうしさ」
「あぁ、」
「お前ら・・・」

三上の勢いが止まったのはいいがどうしてそういう転化を。辰巳の溜息に中西は笑うだけだ。

「久しぶりって最後はいつ?」
「・・・入学式、か」
「入学式って喧嘩したの中西だろ?」
「そうだっけ?・・・あぁ、誰かと組んで・・・・・・アレ?」

中西が辰巳を見ると、目が合う前に顔をそらされる。迂回して辰巳の視界に入り、じっと見て。

「・・・あの下手なナンパ辰巳か!」
「誰がいつナンパした!」
「えーあれナンパじゃん」
「・・・辰巳何したんだよ」
「・・・喧嘩に加勢」
「喧嘩は加勢したけど処分は逃げやがったけどね。結局アレ相手の名前もわかんないしで俺だけよ?処分」
「自業自得だ!」
「田舎帰りたくなった?高校はもっと物騒みたいよ」
「田舎言うな!」

また話を戻した。
もう関係ないと判断し辰巳が談話室を出ようとするのを中西が捕まえる。

「ねぇ辰巳」
「・・・何、」
「なんで手ェかしたの?」
「・・・別に?」
「ふうん? まぁなんにせよ、俺の予感は的中ってことだ」
「予感?」
「絶対あいつを好きになると思った」
「・・・今まで忘れといて、よく言う」
「俺は忘れるところまで予想済みだったのよ」
「はいはい」

適当に返して辰巳は部屋を出て行った。
三上が顔をしかめて中西を見る。

「・・・お前それタチ悪〜・・・一目惚れとかじゃねぇんだろ、しかも一緒に喧嘩しといて忘れるか」
「だって興味ない情報をいつまでも頭の中に入れてられるほど俺は暇じゃないのよ。やっぱり辰巳の腹見せてもらってこよーv」
「・・・・」

それも愛の形なんですか。
問う三上に中西は上機嫌で応えてやる。

「運命ぽくてこれも愛でしょう」
「ぜってー違う・・・」

 

 


喧嘩のシーンは勿論かけないから省いたんですよ(逃)。
背中合わせでこっからそっちがお前こっち側が俺ね!はいスタート!みたいな感じで中西担当が少なかったらいいなーとか思うんです。

 

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