「中西って変わったよな」
「・・・そうだな」

バスケットコートで走り回る中西を見てしみじみ思う。1年の頃は嫌われてこそなかったものの、何かと嫌煙されがちだったが最近はクラスも楽しいらしい。それは中西が変わったからだろう。親のような気持ちで安堵する。
ボールを手に中西がコートをかけあがった。

「何でも出来る男だな」
「ホントになー、誰かさんドリブルの途中でボール蹴るし。いくらサッカー部ったってさー」
「あれはたまたま足に当たって・・・」
「中西足はえー」

ゴール下に構えた中西に誰かが庶民シュート!と野次を飛ばす。
シュートしようとして止まり、不意に後ろに回った味方にパス。相手も戸惑って慌ててボールを受け取り、どうにかゴールを決める。
すぐに試合は開始されたが中西はやる気なく審判に近づく。

「あと何分?」
「まだ始まったばっかだろ、あと3分」
「さん・・・俺もう疲れた」
「おいっ中西頑張れよー!」
「ええいうっとおしい」

味方の手を振り払い、中西はお前が頑張れと背中を押す。

「やる気何処いったんだよー」
「うっせーな腰イテーんだよ」
「ジジィか!」
「ごめんねー若いからー!!」
「ぐああっお前走れ!若さを他で消費しろ!」
「若さ有り余ってんの俺じゃなくてあっちだからー」

「・・・あーいうのは相変わらずだけどな」
「・・・・」

声がでかい。そして嘘をつくな。
辰巳は胃痛を覚えて溜息を吐く。

「あ、でも中西って今本命一本なんだろ?」
「・・・らしいな」
「誰なんだろうなー、男だっちゅー噂だけど」
「・・・なんだそれ」
「えー、お前聞かん?天野の推理だけどさー。寮抜け出してる様子はないし根岸が自分の部屋で寝てるんだろ?だから寮内の誰かのところ、かつ中西がネコに甘んじねぇだろってことで相手が年下ってのが有力。第一候補は笠井君」
「・・・ちょっと惜しいな」
「え、お前知ってんの!?」
「年下じゃない」
「だ、誰ッ!?」
「いやそれは・・・」
「辰巳ッ!」
「・・・・・・・・・渋」

なかにしッ・・・
制止の声も間に合わず、側面からボールが直撃。辰巳は頭を抑えてステージに寄りかかる。頭というより耳が痛い、容赦の無い攻撃だ。

「あーらごめん、虫が飛んでた」
「・・・・」

振り返れば跳ね返ったボールをキャッチした中西の姿。
地獄耳、辰巳がつぶやいたのが彼に火をつけたのか、すっかりバスケなどやる気をなくしたらしい中西はボールをコートに捨てて辰巳に詰め寄る。

「何 人のプライバシーについて話してるのかな?」
「お前に言われたくないな・・・」
「ふざけんな。俺と誰が付き合ってるって?自分のキャラ知ってて嘘吐くのは卑怯。どうせならもっとましな嘘吐いてくんない?」
「・・・・」
「・・・そこの!」
「ハイッ!」

クラスメイトはびしっと気を付けをする。情けないとは思うが辰巳も他に方法がないことを知っていた。

「俺の付き合ってる人なんか聞いてどーするの」
「え・・・」
「まぁいいけど、誰にも言わないなら教えたげるよ」
「まじでッ」
「中西っ」
「耳貸して」
「やめっ」

辰巳を無視して中西は彼に顔を寄せる。

「--------イタッ」
「誰が教えるかっつーの」

ひらひらと手を振って中西はコートに戻っていった。しかし試合に混ざる気はないらしく、パスされてもすぐにボールを戻す。バックパス、悶えながらクラスメイトが指摘した。

「いたー」
「・・・どうした」
「噛まれた」
「・・・・」
「でもやっぱあいつってカオ綺麗な、ちょっとどきどきしたー」
「・・・・」






「・・・俺そんな変わったぁ?」
「ああ・・・」
「ふうん」

中西は顔をしかめて辞書を開閉した。パタパタと所在無く繰り返しているがそれは三上のじゃないだろうか。
気を取り直したように中西はシャーペンを持ち直してノートに向かう。狭い机の向こう側、ようやく口を閉じた中西はまた顔を上げる。

「・・・俺さぁ、人に影響するのはスキなんだけど、人から影響されるのキライなんだ」
「・・・・」
「だから突き詰めるとあんたもキライなんだよね」
「・・・俺?」
「あんた以外の誰が俺を変えたの?」
「・・・・」
「キライなんだけどー」

手を止めた中西がじっと辰巳を見てきた。
折角始めたと思ったのに。さっきから進まない予習に、写させてやらないことを先に言っておく。

「ちゅーしていい?」
「予習しろ」
「んじゃ終わったらね」
「・・・・」
「予習してくるって言ったら三上すげーびっくりしてんの、失礼じゃない?」
「・・・俺だってお前が予習なんて最近はじめて見た」
「うん最近始めたからね」
「・・・なんでまた、急に」
「・・・やっぱり今」
「っ」

机から身を乗り出して唇を重ねる。
一瞬触れただけで中西を押し返した。不機嫌そうな中西の顔。

「俺さぁ、色んな人に勘違いされてるけどそんなに頭よくないのよ」
「・・・こないだの順位は?」
「どうにか2桁」
「・・・しないから、だろ」
「うん、だから少しぐらい勉強しようかなって」
「急に」
「だって辰巳理系じゃん?」
「・・・・」
「高等部だと2年からクラス別れるでしょ、そっち行けたらいいなーって」
「・・・・」
「言っとくけど俺気持ち悪いぐらい辰巳の事スキだからね」

ふん、と自身ありげに笑って、また軽く唇を乗せる。
今度は体も戻して押し返しシャーペンを握らせた。子供の躾のようだと経験したこのない事を思う。

「適当に頑張れ」
「やる気ないねー、けなげで可愛いじゃない。ところで早速わかんねー」
「・・・関係代名詞thatで後ろからかかるから」
「thatないじゃん」
「省略」
「勝手に略してんじゃねーよ・・・これがバック攻めだからー」
「・・・・」





「昨日中西変わったって話したじゃん、」
「・・・ああ」
「俺思ったんだけど、辰巳も変わったよな」
「・・・そうか?」
「うん。人間やわらかくなった気ィする」
「・・・・・・そりゃ、子守すればな」

自覚が無い変化ということはやはり影響を受けたということなんだろか。
昨日の予習のノートを見ながら中西の台詞を思い出す。

「・・・確かに影響受けるのってやだな・・・」
「ん?」
「何でも」

 

 


長かった・・・(同時進行でチャットしてました)
関係代名詞バック攻め前にも一回使ったネタだよ・・・。
英語のノートとる時用語略してかいてたらある日不受という並びが。ふわうけ・・・

 

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