r u n   a b o u t


「中西先生っ」
「・・・あんたに付き合ってる暇はない!」

中西は声の主を睨み付け、白衣を翻し颯爽と通り過ぎていく。
窓から見ていた声の主、辰巳は睨まれたことも気にせずに急いで教室を飛び出した。そのまま外に出ていって中西の白衣の裾を捕まえる。

「邪魔」
「何処行くんですか?」
「俺はあんたみたいな優等生に捕まってる間ァないの」

理科教師は辰巳の手を振り払い、向かう先はクラブハウス。
迷わずサッカー部部室のドアを開ける。

「三上ッ!こりないねお前も、この間謹慎食らったばっかりでしょっ」
「げっ中西!何でッ」
「中西先生様!笠井が授業に出てなかったらお前しかいないでしょ、一緒に職員室までいらっしゃい」
「誰が行くかッ」

傍のブレザーを掴み、三上は窓を開けて飛び出していく。
中西は白衣を脱いで辰巳に押しつけ、すぐに三上の後を追った。

「辰巳、笠井宜しく!」
「はい」

白衣を簡単にたたんで机に起き、辰巳は部室の奥へ行ってしゃがみ込む。

「・・・今度はまた、強引だな」
「・・・コメントいいからこれ外して・・・」

はだけた衣類を掻き集め、笠井は辰巳に両手を差し出した。腕を縛るネクタイは多分三上のものだろう。
辰巳はそれに手を掛けてゆっくり外し始める。
・・・観察、されているような。笠井は顔をしかめて辰巳の顔を覗き込む。

「辰巳?」
「案外しっかりと固定できるものだと思って」
「・・・・」
「こうか、わかった」
「折角頭良いんだから他のことに使いなよ・・・アリガト」

外れたネクタイを取り敢えず受け取り、笠井は手首をさする。少し赤くなっているのを気にしながら制服を着直した。
時計を見てうんざりと溜息を吐く。

「あーもう・・・俺4時間目出ないと行けなかったのに・・・化学落とした・・・」
「中西先生だろ?笠井のせいじゃないんだし」
「三上先輩の所為だろうと中西先生は欠点つけるよ」
「また教えてやるから」
「もう辰巳の力借りても無理・・・進級できなかったらどうしよう」
「笠井より三上先輩の方が危ないけどな」
「・・・同じ学年になったらどうしよう・・・」
「・・・先輩大喜びだな」
「俺も進級できなかったらいいんだな、うん」
「・・・・・・さて、俺は先生の加勢に行ってくるか」
「・・・辰巳さぁ、先生のこと本気?」
「勿論」
「ふーん・・・M」
「・・・縛り直すぞ」
「ごめんなさい・・・」

 

 

 

「・・・こーらー。辰巳くーん」

ちゃんと耳 聞こえてる?
腕を叩くとその力が強くなる。抱きしめられたまま中西は溜息を吐いた。三上との格闘で疲れているというのに。
誰も居ない準備室、とは言えカーテンは開いているしドアも施錠されてない。
油断していた自分にも非はあるが、この大型犬をどうしてくれよう。持て余すこの体は理系の自分より力は強い。

「辰巳」
「せんせい」
「・・・・」

耳元で喋らないで欲しい。軽く目を閉じてやり過ごす。
頭ひとつ分大きい生徒。頬に触れた鼻先が冷たいのに反して耳にかかる声は熱かった。
しばらくそれきり何もなく、一呼吸おいて辰巳がゆっくり体を引く。

「・・・先生ネクタイは?」
「ん?・・・あー・・・走ってる間に外して、落としたのかな」
「ふうん」

服を捕まれ、それを引っ張るように首筋にキスが落ちてくる。しまったと思ってももう遅い。
ひくんと反応した中西を知ってか知らずか辰巳はきつく跡を残す。

「辰巳、聞けコラ。指導するよ」
「して下さいよ、先生と居る時間が増えるなら」
「・・・ネクタイ探して来て」
「後で」

着けたばかりの後を舐めtまた別の場所に触れる。
良平、しびれを切らせたように中西が押し返した。

「良平」
「・・・はい」
「10分以内に見つけてきたらウチに泊めたげる」
「・・・・」
「ハイ スタートー」
「・・・・」
「お、何、疑うの。俺はいいけど?」
「・・・10分ですねっ」
「あと9分半ー」

辰巳が準備室を飛び出していく。勢いよく開いたドアは派手な音を立てて棚のガラスを震わせた。
ドアは静かに!後ろから叫んだが聞こえたかどうか。
急に広くなったような気がして、中西は笑いながら窓へ近付く。
あの全国上位の頭は三上の逃走ルート及び中西の走行ルートなど把握しているだろう、きっとこの下を通る。
段々可笑しくなってきた。シャツのボタンを留め直す。

「若いねー」

ポケットからネクタイを出して首に回した。慣れた手付きでそれを締める。
頭は良くても恋愛には適用されない?
落とされてやる気はあるけど簡単に落ちてやる気は全くない。
しかし飼い慣らせるのもいつまでだろう、中西はうんざりして、笑いながら溜息を吐いた。

 

 


中西は化学教師かつ生徒指導部の先生なんですよ。ゆわないけどちゃんと辰巳のこと好きなんですよ。
ほんで辰巳がすっげー頭のいい優等生なんですよ。恋愛は初心者なんですよ。
ついでの三上と笠井は欠点だ再試験だと騒いでる子だといい。三上は指導部常連さんなの。

 

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