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「笠井はさぁ」
「はい?」
「本気で三上に怒ったときどうする?」
「・・・えーっ・・・と・・・」

これは、恋愛相談をされてるんだろうか。
空のいちごオレを弄び、中西は視線を外に溜息を吐く。ふたりで昼食、と朝から予約を入れられ何事かと思ったら。
屋上は気持ちいい風が通りすぎるが、ここには不穏な空気が溜まりそうだ。

(・・・かわいい・・・)
「聞いてる?」
「あ、はい聞いてます」
「俺って短気なのかな?」
「・・・・」

最近は丸くなったので何とも言えないが、短気だったのは確かだろう。
奢られたレモンティーを嚥下して考える。

「た、例えばどういう時に?」
「んー?・・・最中に、他の女の話されたり」
(辰巳先輩・・・!?)

中西の手の中でぐしゃりと潰れた紙パックに怯える。
しかしそれ以上に辰巳が読めない。それを言ってくるということは恐らくそれが事実だったんだろう、道理で中西が怒っているわけだが。
・・・しかし、今朝は辰巳も不機嫌だったように思う。中西が一方的に怒っているだけなら辰巳は中西を起こしに行くが、今日はそれもなく中西は根岸に叩き起こされていた。

「・・・怒るよね?つーか、悪いのあっちだよね?」
「ハ・・・まぁ、細かい状況わかりませんけど」
「でもね、確かに俺も少しは悪いと思うのよ、咄嗟とは言え」
「・・・・・・何したんですか?」

 

 

「俺が悪いのか?」
「・・・いや・・・悪いんじゃねェの?しらねぇけど」

確かにその頬は痛そうだが。
辰巳から中西のグチはよく聞くが、この手のグチは珍しい。
昼食を取る辰巳が一瞬止まって口を押さえる。

「・・・どうした?」
「・・・噛んだ・・・」
「・・・・・・」

何だかからかう気にもなれない。
うどんの汁に残ったふやけた天かすを何となく箸で捕らえる。
早く帰りたい。が、誘われて一緒なのだから相手が食べ終わるのを待つのが礼儀だろう。奢られなければよかったと後悔しても遅いこと。
・・・さっきからこの調子では、昼休みが終わってしまう。

「・・・血の味がする」
「・・・あそこでご飯作ってるおばちゃんに謝ってこい」

もしくは切り身となった魚及び米野菜諸々定食分。

「口の中の傷腫れると噛むんだよなー。殴られたわけ?」
「蹴られた」
「・・・・」

中西・・・!
お前辰巳が舌噛み切ってたらどうする気だ。というか中西をそこまで怒らせる辰巳が凄いというか、何というか。

「・・・ちゅーか、お前は、俺に何を聞きたいわけ?」
「・・・・してる時って、」
「!!?」

食堂ですよッッ!?
三上は思わず身を乗り出して辰巳に顔を寄せる。極力でも彼の声を小さく抑えたい。
何だ!?怒りに我を忘れてるのか!?
泣きたい。何故チョイスが俺なんだ。寮内で辰巳が知る限りのタチが俺だから?
三上の内部葛藤を辰巳は知らずに焼き魚をつつく。

「・・・何の話する?」
「────すんな!」
「っ、」
「何?それ自慢?」
「何、」
「どうせ俺はいっぱいいっぱいです、女となんて小学校で手をつないだことしかありません、辰巳のよーにでかくもなけりゃ一緒にベッド入ってさぁやるぜってなったら拙者喋る余裕なんてありませんから!」

切腹しろってか!?
マニアックなネタにつっこまず辰巳は慌てて立ち上がった三上を座らせた。
全身の毛を逆立てた猫のように三上が睨んでくる。悪いことを言ったらしい、辰巳は自分の怒りの方を忘れてしまう。

「・・・・・・因みにお前何の話して蹴られたわけ、」
「いや、何も話す前で・・・何の話しようとしてたか忘れたし」
「ふーん・・・」

 

 

「・・・じゃあ話は聞いてないんですか」
「でも話し始めの主語が女だった」
「・・・そこから話が発展するんじゃ」
「どういう話でも俺以外のこと考えるとか却下!」
(・・・かわいい・・・)

隣に座る中西にそう言う感情を抱くのは笠井ぐらいなものだが。その凶悪なしかめっ面を見ても笠井の目にはそう映るらしい。

「・・・それで、蹴っちゃったわけですか」
「・・・何か予想外に血ィ出たから流石に焦ったから」
「・・・舌噛み切ってたら死にますよ・・・」

どうしよう、それって腹上死?
意識が移りかけ、笠井は慌てて中西に視線を戻す。
・・・・・・。
笠井はやはり視線を外に戻した。辰巳が、中西を。

(って変態か俺・・・)
「何?」
「・・・いえ・・・何でも」
「何でもない顔じゃないけど」
「・・・・・・個人的に、相手が誰だろうと先輩が組み敷かれてるなんてヤダなーと」
「組み・・・俺時々笠井には驚かされるよ」
「中西先輩には毎日のように驚かされてます」
「愛されてるみたいだから言っておくと昨日上にいたの俺ね」
「・・・・・・」

そこから蹴りを・・・
右?左?部活の時にでも辰巳を観察させて貰おう。じゃなくて。
笠井は混乱する頭を整理する。

「えーと・・・先輩はどうしたいんですか?」
「・・・・」

やばい、投げ遣りのような口調だったか?黙ったままの中西をそっと見る。
中西は三角座りの膝に額を当てて顔を隠した。

「・・・・・・・・・どうやって謝ろう」
「・・・・・・」

この人大好き!!
不謹慎にも大喜びの笠井に中西は気付かない。
抱っこしたいとか頭撫でたいとか言う感情と必死で張り合い、笠井の手は宙で止まっている。

(ていうか・・・中西先輩こんなにしてる辰巳先輩って・・・)

ちょっと憎い。

 

 

「・・・っっ・・・」
「・・・オイ」
「噛んだ・・・」
「・・・・・・」

流石に気の毒だ。くしゃみをした友人に大丈夫か、と声を掛ける。
口を押さえた辰巳は心なしか涙目だ、大丈夫ではないらしい。

「・・・まぁテキトーに中西丸め込んで謝っときゃいいじゃん」
「・・・・・・」

辰巳は真剣な表情で魚をつつく。
つーか、いい加減食い終われ。魚じゃなければ手伝うところだ。

「・・・・・・あんな、辰巳」
「何だ」
「あいつの、どこがいーの?」
「・・・・・・」

厚顔無恥というか唯我独尊というかそう言う生き物、と三上は認識している。お釈迦様の言葉を使っては罰が当たるかもしれない。

「・・・・・・結構、可愛いと思うんだが」

分かった。
三上はやっと理解する。
俺 今までグチじゃなくてノロケ聞かされてたんだ。

 

 

 

(・・・蹴り・・・)
(・・・何の話するって・・・?)

対峙する笠井と三上の思いは通じないほうがいいのかもしれない。

 

 


中笠?
辰巳は何の話をしようとしたのか辰巳氏か知りません。わたしも何か思いついてた筈ですが忘れました。
蹴られたら絶対痛いよなーと出したネタでしたが三笠じゃ書けなかったんですよ、三上はともかく笠井ちゃんはそんな無茶をしません、しようと企んでますが。
そういや三上のマニアックなネタはエンタでしか見たことありません。ピン芸人。別に好きなワケじゃないですが。暴走してきたら三上が勝手に喋ったのでネタにするつもりは全く・・・

 

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