n u r s i n g ?


「触診の最中失礼しますがもうすぐ診察時間ですよ」
「あら上手いこと言うね」
「どうも。辰巳先生準備お願いします」
「だってさ」
「・・・・・・」

 

 

「お大事に」

にこり、とナースは優しく笑顔を投げかける。真っ白な制服にカーディガン、病院には沢山居る普通のナースだが。
カルテに記入していた医者も顔を上げてお大事にと続けたが、患者の方はそんなことにも気付かない。どうもとかなんとかお礼らしき物を口ごもって診察室を出ていった。

「・・・なんだ今の患者」
「俺の魅力に当てられた?」
「・・・・」
「やっだーヤキモチ?安心してよ俺は辰巳先生のモノだからv」
「はいカルテ渡してきて」
「あとで」
「中西」
「中西さん休憩どうぞ」
「・・・・・・ハーイ・・・」

不機嫌な表情でナースは辰巳から離れた。渋々カルテを受け取り診察室を出る。
代わりに来た笠井は溜息を吐く医師の隣に立って肩を叩いた。

「お疲れ様です辰巳先生」
「・・・嫌味か?」
「ねぎらってるんですよ」
「・・・そうか」
「次の患者呼びますよー」
「あぁ・・・」

 

某病院には評判の先生が居る。
子どもにはやや不人気の内科医は広い年齢層の奥様方に人気がある。多少強面ながらも優しい表情を見せ、穏やかな口調が人気の秘密だとか。
その辰巳先生の助手を務めるナースも密かに話題沸騰中、らしい。主に男性中心に、時々笑い書けてくれる笑顔もさながらクールな対応もいいとか何とか。産婦人科の制服(ピンク)を着て欲しいとか何とか。因みに注射は下手だが何本でも打ってくれと言った人が居るとか何とか。
・・・そんなわけで三上先輩はただいま不機嫌を押し隠し診察中だ。

「指名できないの?」

ここはホストクラブじゃねぇんだよクソババァ!
いつか怒鳴るんじゃないかとハラハラしながら笠井は三上の傍に控える。

「じゃあ薬出しますのでなくなった頃またいらして下さい」

さっさと帰れもうくんな。
薬無駄にふっかけてやろうかとよからぬことを考えているのが目に見えるようで、笠井は静かに背中を叩いた。
患者が出ていった途端三上は顔をしかめて笠井を睨む。睨まれても。

「大人げない」
「そりゃあっちだ!俺が診たって辰巳が診たって風邪は風邪なんだよ!」
「ハイハイ病院だから静かに」
「くそ〜・・・んでさっききた男も笠井見てがっかりしやがった」
「それが」
「中西期待してたんだろ、ドコがいーんだあいつのドコが!」
「中西さんかわいーじゃないですか。俺は三上先生みたいに気にしてられませんけど」
「すいませんねガキでー」
「だって辰巳先生より三上先生の方が好きですし」
「・・・・・・いや、待て、俺今喜ぶところじゃねーよな?一応付き合ってんだよな?比べるもんじゃないよな?」
「顔が喜んでますよ」
「・・・・」
「次の方どうぞー」

 

「俺受付って落ち着くんですよ」
「そーお?」
「中西さんは辰巳先生が居ないと何処でも一緒でしょうけど」
「まぁね」
「頬杖つかない」

後輩に注意されて中西は溜息を吐いて体を起こす。
もうそろそろ診察時間も終了で、何人かは早々に帰り支度を始めている。

「・・・あれ?朝 辰巳先生が夜勤ってなってなかった?」
「え?あ、ホントだ三上先生になってる」
「え〜!あたし食事誘おうと思ったのにー」

「・・・中西さん」
「やぁねぇ三上先生が自分から進んで代わってくれるって言ったのv笠井にとっちゃ都合よかったんじゃないの」
「いやですよあの人の機嫌悪くなるだけなんだから。夜勤があろうがなかろうが他のナースについて行くわけでもなし」
「すっげー自信」
「田中さまー」

笠井が仕事を続けるので中西は殆ど反射的に顔を戻す。

「隣の薬局で薬を受け取って下さいね」
「お大事に」

あいさつだけはよくできる中西にうんざりしながら笠井は精算する。
また来て下さいねー、無駄に笑顔の中西にがっくり来た。病院に客が多くては困るのだ。
今のが最後の患者だろう。中西は受付を出て待合室を簡単に片付ける。

「笠井ー俺上がっていい?」
「・・・どうせ病院に残ってるなら夜勤にしてくれればいいのに」
「だって急患きても対応できないからv」
「・・・俺ここやめようかな・・・」
「行ってこよv」

笠井の苦悩も知らず中西はご機嫌で診察室の方へ向かっていった。
中では机の整理をしていた辰巳が中西に気付いて顔を上げる。

「たっつみ先生v」
「もう終わりか?」
「ううん、最後の患者v」

 

 

「あ、三上先生お疲れ様です」
「・・・おう・・・笠井か」

自動販売機の前のソファで新聞を見ている医師に近付いた。どこからどう見ても不機嫌なので距離を置く。

「お前は俺のために病院に残ってやろうとか思わねーの?」
「思いませんね」
「かっわいくねぇ・・・」
「こんなところで何してるんです?」
「・・・・・・辰巳センセーが最後の患者診てんだよ」
「・・・・・・」

重病ですからね。
とりあえず帰る気満々の笠井に三上は涙を呑んだ。

「・・・いっぺんぐらいナースでやらしてくんない?」
「金払います?」
「・・・・・・」

俺ここやめようかな。
互いは知らないながらも珍しく意見が一致したふたりだった。

 

 

「おはようございます」
「おはよう笠井ー。昨日の夜さぁ、すごかったんだよ」
「・・・・・・そうですか」
「あ、いや辰巳も凄かったんだけどね!そっちじゃなくて!」
「ハァ」
「友達に呼びだされてさー、何かと思ったら急に来てくれっつーの。辰巳起こしたくなかったから三上連れていったんだけどさー、久しぶりに膣痙攣の患者見ちゃったv大人しく救急車呼んどけって話よね」
「・・・・・・」

それで三上は疲れていたのか。
朝から電話がかかってくるから何かと思えば向こうでぐったりしているし。

「・・・・」

しょうがないな。

 

「三上先生、」
「・・・・・・かさい?」
「勝手に上がらせて貰いました。いつまで寝てるんですか、もう昼ですよ」

目が覚めたらしい三上に溜息を吐き、戻ろうとする笠井を捕まえて三上はベッドに押しつける。
・・・一気に、目が覚めた。

「ふっ・・・」
「・・・俺誘われてんの?」
「・・・そんなにナースとやりたかったらどっかで3万ほどで買って下さい、友達紹介しますから」
「(友達・・・?) ・・・笠井は」
「制服じゃ絶対やりませんよ」
「・・・・」

見上げられてすごまれる。
三上は諦めて笠井を押さえる手を離してベッドに座り込んだ。思わず溜息が出る。

「溜息はこっちですよ」
「何でそんなに冷たいの?」
「こんなに優しくされてるのによく言いますね、昼休みの短時間に来てもらっといて」
「・・・いっそその格好でくるな」
「着替えてる時間なんてないですよ」

目の前しかもベッドの下にナースがいるのに。
冷たい態度に溜息も吐きたくなるだろう。

「元気そうですから戻りますね」
「・・・何しに来たんだよ」
「・・・・・・」

 

 

「あら笠井お帰り。帰ってこないかと思ってた」
「・・・帰ってきますよ、仕事中ですから」
「ふーん・・・拳どうしたの」
「・・・ちょっと痛かった」
「多分三上の方が痛いよ」

中西は笑いながら隣の椅子を引いてやる。笠井はそこに座って溜息を吐いた。少し赤くなった拳をこする。

「ちゃんと愛したげてるのに伝わらないのも辛いわねー。笠井のは分かりにくいのよ」
「・・・俺は中西さんとは違うんです」
「三上先生ナースの間では結構人気なのに。取られちゃうよ?」
「取られませんよあの人は俺がいいんですから」
「すげぇ自信」

まぁ俺たちの愛には敵わないけどねー!
辰巳先生が薬局へ通っているのを知ってる笠井は何も言わない。

 

 

「・・・まぁ、それだからあいつらも続いてるんだろうけどな」
「でも笠井ももうちょっとサービス精神旺盛になれないのかな」

ひょいと辰巳に手を伸ばし、後ろから中西は手元を覗き込む。担当している入院患者のレントゲンだ。

「手術かな」
「あぁ・・・また連絡入れないと」
「俺外科の先生嫌いなんだよねー、俺のことやらしい目つきで見てくるのーv」
(語尾が・・・)

ぎゅ、と回る腕に力が入り、それを緩めて辰巳は椅子を回して振り返る。

「・・・俺産婦人科の先生に勧誘されちゃったんだよねー、ピンクの制服がちょっと魅力」
「・・・・」
「どう思う?」

白の方が好み。
中西はご機嫌で辰巳を抱きしめた。

 

 


ついにナース。というか期待の割には申し訳ない。やまなしおちなしいみもなしというアレで。
なんだか三笠の方が楽しかったです。
つうか痙攣とかなんとかは普通に流して頂くのが宜しいかと思います。耳年増知識なので生きていく上では全く必要ないですがトリビアでも扱えないので。

 

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