勝 手 気 ま ま


「・・・・」

あれは中西か。朝連を途中で抜けた割には元気そうだ。
2階から見ている俺には気づかず、ポケットに手を入れて辺りをぐるりと見回した。もう1時間目は始まる、誰の姿も残っていない。上のほうは見ない。
中西は体育館の傍のプールへ続く渡り廊下の下に来る。屋根で姿が隠れたがすぐに反対側から現れた。見やすくなる。
ポケットから手を出して、光る何かを軽く投げて宙で捕まえる。チャリンとここまで音が聞こえた。
少しだけこっちを見た。目は合わない、窓が反射して俺が見えないのかもしれない。そうかと思えば振りかぶってそれを投げた。
ガァン!
派手な音を立ててそれは屋根にぶつかる。よく見ようとしても反射して見えなかった。屋根には他にも各種のボールの類やシューズなんかも乗っている。
投げたものが落ちてこないことを確認して中西は校舎に入っていった。

「辰巳、悪いな待たせて。どうかした?」
「・・・いや」
「今日もあっちーなー」
「水泳あるだろ」
「あれはむしろ暑くなるっつーか・・・」



「今日プール中止だってよ」
「中止?スモッグの警報でも出たのか」

雨が降ろうが気温が多少低かろうがお構いなしにプールの授業はあるのだ。先日の寒さを思ってうんざりする。

「いや、何か更衣室の鍵なくなったらしくて」
「・・・・」

クラスメイトの向こう側、中西の机を見る。
目が合った。ふっと少し笑ったような気がする。





カツン!
ちょっとこいよと誘われて、なぜか二人で卓球を。球を返すと隅の方に当たって外側に飛んでいった。

「あれ、予想外にうまいなー」
「・・・・」
「行くよー」

カツン、軽い音。
授業をさぼって何してるんだろう、しかも中西と。

「もしかしてさー、サッカー部?」
「・・・そうだけど」
「あぁそう、見たことあると思ったん、だッ」
「・・・・」

クラスメイトでもあるんだが。
チャイムが鳴った。カツン、打ち返した球はネットにかかって戻ってくる。
中西が向こうでガクリとする。12対10、ゲームセット。

「クソ〜〜・・・悪かったね授業さぼらせて」
「思ってないだろ」
「まぁねー、今何の授業だったの?」
「音楽」
「あれはさぼってもばれないから大丈夫・・・同じクラス?」
「・・・そう」
「マジで?ごめんねー俺興味ない人のこと覚えないから」
「知ってる」
「ハハ」

ピン球を手にして中西はそれを軽く打ち上げる。落ちてきたのもまた受けて打ち返し。

「もっかいやる?」
「いや、職員室行くから」

授業用の使い物にならない古いラケットをテーブルにおいてそこを離れた。
まだ球を打つ音がする。壁打ちでもしてるんだろうか、似合わない。

「・・・・」

別に復讐のつもりは無いけど。ささやかに嫌がらせという程度。
これから先あいつは俺の名前を覚えることはないかもしれない。どうせならチームメイトとして顔ぐらいは覚えさせてやりたいけど。
やっぱりもう少し、あいつのレベルを追い越すぐらいに練習して。
だけどそれはそれ。職員室へ向かう。


「先生、更衣室の鍵とったの中西です」

 

 


辰→中っぽくね。でもチクる辰巳。
中西は興味がないことにはとことん興味がないと思う。水泳の授業とかも絶対嫌いそうな感じで。

 

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