死 ん で い る 間


普段中西を起こすときにしかくることのない部屋を前に辰巳は立ち止まる。
やましいことは、もう十二分にあるので辺りを気にするが人の姿はない。誰かいたら帰るのにと往生際の悪いことを思う。
諦めてドアをノックしようとしたときドアが開いた。伸ばした手が引っ込まず辰巳は困って引き寄せる。
辰巳を意外そうに見て、中西は笑ってドアを大きく開けた。

「迎えに行こうと思ってさ、部屋にひとりなんて久しぶりだから時間余っちゃって」
「・・・根岸は何処泊まってるんだ?」
「受験会場の近くに親戚の家があるんだって、そっち」

辰巳が中に入り、中西はドアを閉めて一呼吸おいて鍵を閉める。
左と右にベッドがあるのは辰巳の部屋も同様だがこの部屋はどっち使う人がいる。ひとり部屋といってもルームメイトがやめてしまったため、ひとり部屋という扱いの辰巳には少し久しぶりの雰囲気だ。

「大変よね受験組は」

辰巳の後ろで中西が笑った。





「────ン、」
「・・・・」
「・・・ごめん、待って」

辰巳は大人しく手を引いた。待て、で待ってみるが中西はごめんと笑う。

「うん、まぁたまには俺の部屋でって思ったんだけどね」
「虚しくなるからもう言うな・・・」
「・・・ごめんね?」

辰巳は体を起こして後ろを向いた。耳を塞いでささやかな抵抗のつもり。
苦笑して中西は背中に寄りかかる。続ける気がないならせめて服を着てほしい、極力体温を意識しないように辰巳は壁を睨んだ。

「やっぱネギっちゃん気になってさ」
「・・・・」
「あ〜〜・・・やだな・・・」
「・・・何が?」
「応援したくない俺。頑張れって言いながら落ちろってどっかで思ってる」
「・・・多分根岸は知ってる」
「うん・・・ヤなルームメイトだよね」
「・・・話するなら服着ないか」
「・・・辰巳のえっちv」
「・・・・」
「嘘、大分助かってる」

笑った気配。辰巳は溜息を吐いて俯いた。だから、その気がないなら触るなといってるのに。
3年間中西と過ごしたルームメイトは高等部へ進学せずに外部を受験、明日がその受験日だ。辰巳よりも遥かに中西に影響した根岸と離れるのはほんとに辛いのだろう、そこは素直に分かる。

「・・・俺さぁ、ネギの勉強付き合ってたけど」
「うん」
「英語にさ、彼は10年間死んでいたって表現あるじゃない」
「あぁ・・・」
「それって生き返るみたいだよねって話してたんだ」
「・・・・」
「何か気持ち悪い」

背中に当たる髪がくすぐったい。様子を伺って振り返ると中西は動きに合わせて顔を上げるが辰巳を見て俯いた。

「・・・ヤダなぁそれ」
「・・・・」
「俺が生き返った頃にはみんな死んでるじゃない」
「・・・真っ先に死ぬつもりか」
「・・・あー・・・そう、ね。だって誰かが死ぬの見たくないから」

中西は手を伸ばして辰巳の手をとる。部屋が少し寒い所為かやたらと白かった。中西の手は冷たい。

「・・・根岸受かったらどうしよう」
「・・・・」
「淋しくなるね」
「・・・・」
「・・・俺がいるとか言ってくんないの」
「代わりなんかいらないだろう」
「・・・うん・・・つーか代わりになんない」
「・・・・」

きっと中西と付き合っていく限り溜息は尽きないのだろう。また出そうになる溜息を抑え、それでもやっぱり溜息が出る。

「中西、こっち向け」
「・・・・」

顔を上げて辰巳を見る。辰巳と目が合ってじっと見ていると向こうが先に目をそらし、中西は思わず吹き出す。

「何で辰巳の方が先に目ェそらすの!」
「・・・・」
「何?」
「・・・もういい」

完全に中西から目をそらした辰巳を覗き込むと体ごと向こうを向いてしまった。中西は笑って、再び背中に寄りかかる。

「・・・嫉妬?」
「違う」
「照れんなよ」

バシッと辰巳の背中を叩いて中西は笑う。予想外のヒットに思わず呻くとまた中西の笑い声がした。人騒がせな。どうしても溜息は尽きない。
今更セリフの続きを吐く気にもならないので嚥下する。生き返るまで生きててやるなんて今言えば笑われるのがオチだろう。

「寝ますか!」
「・・・・」

テンションも戻ったようだしあわよくばと思ったが。
横目で中西を見ればいつの間にか服を着て寝る体制。溜息を吐けば幸せが逃げるというがきっと自分には幸せが残ってないのだろう、元から絶対量が少ないというのに。

「辰巳?」
「・・・・」
「おっなんだその目、ご不満?」
「いや・・・もういい・・・」

安心しなさいぎゅっとしててあげるから、
更に追い討ちをかける言葉。涙ながらに服を手にし、ふたりで毛布にもぐりこむ。

「おやすみー」
「・・・おやすみ」





「・・・・・・辰巳、寝ちゃった?」

もぞりと辰巳を見上げてみる。小さな光源は辰巳の顔に影を作って表情はまったく読み取れない。

「・・・やっぱやりたくなってきた」
「・・・もう待てとか言うなよ」
「合点」

 

 


シリアスなのか何なのか分からないことに・・・
あんまり書いたことない辰巳を書いたつもり。
ネギ依存症な中西って書きやすいのあたしだけじゃないと思うのですが。辰中でやるのもどうかと思うがな。
辰中はショーカズと違う感じで犬猫ってつもりです。いかがかな。

 

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