10 番 ジ ャ ッ ク


「せんせー・・・ちょい気分悪いんで保健室行ってきてイイっスか」

取り敢えず眠かった。





「みかみせんぱい」
「ん・・・?」

ベッドの上で三上は目を開ける。
隣にベッドが見えて、少し考えてココが保健室だと分かった。自室の部屋より保健室のベッドの方が寝心地がいいが、居心地は悪い。
そっと肩に手が置かれたので、寝返りをうってそれに反応する。
後輩である可愛い恋人?が心配そうに三上を見下ろしていた。

「笠井・・・?」
「先輩、体調悪いって大丈夫ですか?」
「え?え・・・ああ。誰に聞いた?」
「中西先輩」

やけに心配そうな表情にこっちが不安になってくる。
あまりにも真剣なその表情に、仮病です何て言い出しにくい。実際はぐっすり眠って体調も気分もすこぶる快調だった。

「熱とかなかったんですか?」
「え、多分・・・」
「計ってないんですか?」
「ん、まぁ・・・」

笠井が少し考えて、カーテンを引いてその向こうに出ていった。
直ぐに体温計を手に戻ってくる。

「はい」
「・・・どーも」

差し出された体温計を受け取って、どうしようか考えながらも一応計ろうとボタンを外す。
笠井の手が伸びてきて、前髪を避けて額に触れた。少し冷たい指先が気持ちいい。

「・・・熱はないかなぁ」
「あー、そんな感じはしねぇな」

しかし笠井の視線を気にして三上は体温計を脇に挟み込んだ。

「俺の風邪がうつったのかな・・・」

そこでやっと笠井の動揺の理由が分かる。
風邪をひいていた笠井はつい最近完治したばかりだった。

「・・・人にうつせば治るってゆーし?」
「うわー、ごめんなさい・・・」
「冗談だって、気にすんなよ。うつってたとしても俺が忠告聞かないでお前にちょっかい出してた所為だし・・・ホラ熱ねぇよ」

数値の定まった体温計を見せて、な?と笠井の顔を見上げる。
平熱を示す数字に笠井がほっと息を吐いた。

「よかった」
「・・・・・・・」

・・・後戻りが出来なくなった。
心底心配していた笠井の様子にチクンと良心が痛む。

「・・・あ、でも気分悪いって・・・」
「教室の空気悪かっただけだろ」
「そうですか?・・・でも寝てて下さい」
「起こしたの、お前じゃん」
「あ・・・ごめんなさい」
「いーって」

苦笑しながらうなだれる笠井の頭を撫でてやった。
下げ掛けた手を笠井が捕まえて、自分の口元に持っていく。手の甲に唇が触れた。

「・・・笠井」
「・・・俺・・・行かないと・・・」
「・・・ああ」

でも手を離さないのは笠井だった。
心の中で一生であるかないかぐらい謝り倒す。

一瞬だけ唇が降ってきて、名残惜しげに三上の手から微かな体温は去って行った。

熱の残らない腕がベッドに残る。
手の甲を片手でさすって、両手を布団の中に突っ込んだ。

「寝よう」







「おかえり」
「・・・誠二廊下で待ってたわけ?悪趣味」
「悪趣味はどっちだよ。どうせ仮病だってわかってんだろー?」
「あったり前じゃん。飴と鞭ってのはこう使うの」
「三上先輩かわいそ〜・・・」

 

 


配った「憂鬱エゴイスト」見て貰うと似たもの夫婦っぷりが現れてる・・・
・・・といいなぁ・・・(希望)

030420

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