不 滅 の ラ イ バ ル - B


「あ、中西クーン。サボり?」
「…なんだ、松本か。焦った」
「なんで?やましいことでもあんの?」
「ちょっとネ」

彼女は笑って手招きをする。フェンスの向こうの秘密の花園、もとい女子棟側にいるのは友人だ。何かと試合に来てくれたりと気安い友達だが、彼女の気持ちには何となく気付いている。中西は告白のチャンスを与えないようにしていた。応えられないのだから思わせぶりなことはしない。

「手貸して」
「あ、いけないんだ〜」
「内緒ね」

フェンスに沿わせた手に、彼女が飴を幾つか落とした。ひとつ勢いがついて落ちたのを中西が笑って拾い、他のと一緒にポケットに入れる。

「ありがと」
「ね、こんなとこで何してんの?」
「松本こそ。珍しいねひとり」
「綾が風邪引いてさ、昨日早退して今日もダウン」
「あらら。松本もうつらないようにね〜。あ、バカは風邪ひかない…」
「中西に言われたくないな!」
「俺こないだの英語はちょっと頑張ったもんね!」
「えっ裏切り!?」
「いやー俺もサッカーばっかじゃ駄目だと思いまして?」
「今更真面目ぶったって無駄だっつの!」
「えー」

まぁ別にいいんだけどね、他の視線は。中西は思いながら笑う。勉強するのだって、誰かと一緒にいたかっただけという不純な動機。

(誉めてくれるという思わぬラッキーあったしね〜)

 

 

 

中西の姿を見て思わず追った。立ちすくんでしまってから辰巳は動揺する。フェンス越しに女の子と楽しそうに会話を交わす中西を見ながら、自分がわからなくなった。

(…追いかけて、どうするつもりだったんだ…)

ふたりの会話は弾んでいるようだ。話の得意ではない自分とに比べればそれもそうだろう。女の子は見たことがある。何度か中西を応援しに試合へきていた子だろう。

「辰巳先輩?」
「! …笠井」
「こんにちは、何してんですか?」

笠井がひょいと向こうを見た。弁当を抱えているのを見るとこれから昼食のようだ。
中西を見つけた笠井はしばらく辰巳と見比べる。

「…辰巳先輩って、もっと恋愛うまそうな気がしますけど」
「…あいつ相手に適応するかよ」
「ふうん」
「……」
「それはどういう意味なんですか?」
「…」
「言ってあげれば喜ぶのに」
「うるさい…」

じゃあ、と笠井が行きかけるのを、辰巳がとっさに捕まえる。笠井に逃げる間を与えずに辰巳は振り返った。

「中西!」

声に反応して中西が振り返り、辰巳を見て立ち上がる。フェンスの向こうから敵意が飛んできた。

「何〜?」
「笠井が呼んでる!」
「うぉっ、ちょ、辰巳先輩!?」
「笠井〜?何〜?」
「ちょっと!来ちゃいましたよ!」

辰巳はぱっと笠井を離し、その腕を叩いて反抗する。しかし中西は寄ってきて、何?と純粋なまでの目を向けてきた。辰巳を見てもフォローする気配も見せない。

「あっ…あ…いや、えっと…お昼!食べました!?」
「まだー。一緒に食べる?」
「は、はい!」
「辰巳は?」
「どっちでも」
「どっちか!じゃあ一緒ね。 松本ー、じゃあまた今度ね!」

バイバーイと手を振る中西に女の子は振り返すが、笠井に向かって敵意はしっかり飛んできた。とんだとばっちりだ。もう一度辰巳の腕を叩くが気が済まない。

「辰巳先輩…」
「どうも」
「…」

この猫かぶりめ。本来一緒に食べるはずの三上への言い訳をどうしようかと笠井は辰巳を恨みながら考えた。

 

 


素直じゃない辰巳。

 

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