V . S . あ な た 。


「…あのー…笠井さん」
「も、も、もうちょっと、待って下さい…」
「俺あんま辛抱強い方じゃねぇんだけど…」
「……」

ベッドでふたり向かい合い、お互いの両手を握り締め…否、笠井が三上の手を左右それぞれ捕まえたまま、じっとしている。
笠井はかしこまって正座したままで、三上もつられて正座していた足を伸ばした。笠井がびくりとしたのが目に見えて、三上は少し呆れながらも自分の足を笠井の両側へ立てる。

「…あのな」
「わ、分かってます、俺だって覚悟決めました、」
「決められてねーじゃん」
「…」

こんなに焦らされるなら切り出さなければ良かった。
三上がこっそり溜息を吐いたのに気付いてか、笠井は焦ったように顔を上げたけれどまたすぐに俯いてしまった。

「あ…頭では分かってるんです、でも、あの…気持ちが追いつかないと言うか」
「気持ちなんか後からでもついてくる」
「…そんな、先輩に流されてしまうようなのは、嫌です」
「…意地っ張り」
「……」

そしてまた、笠井にぎゅっと手を握られたまま三上は途方に暮れた。握られた手から伝わってくる体温は段々自分のものと近くなる。

「…いいぞ、無理しなくて」
「む、り、なんかしてません!」
「…天の邪鬼が…」
「て言うか三上先輩なんでそんなに平然としてるんですか!」
「してねぇよ」
「え、」
「…お前の所為で余計じりじりしてきたし」
「……」
「だから、嫌だったらいいって」
「…嫌じゃないんです、お…俺だって、あんたと付き合うことになった時点で覚悟決めてたんですから」
「俺はそんなにアレか」

笠井の短い呼吸が聞こえる。それだけでこっちまでどきどきしてくると言うのに、笠井は三上の手を放す気配はない。
…振り払おうと思ったら出来るのだ。それをしないのは、誠意を見せるようなつもりで。

(でも、まじで、勘弁してくれ…)

御神が溜息を吐いたのを不安がったのか、笠井がちらりと顔を上げた。前髪の隙間から目が覗く。
あ、と思った瞬間には三上は笠井の腕を引っ張っていた。向こうが怯んだ隙に腕を払って、倒れてきたのをそのまま抱きしめる。

「あ、」
「じっとしてろ」
「……」
「何もしないから」
「いッ、いいえっ!ここまできたら引き下がれませんっ」
「馬鹿言うなッ我慢されたって嬉しくも何ともねーんだよ!」
「だってここで引いたらあんたに負けたみたいじゃないですか!」
「………」

馬鹿かお前は。
笠井が睨んでくるのを無視して口を塞いだ。一瞬の抵抗も溶かして深く口付ける。

誰がいつ笠井に勝ったことなどあると言うのか。
笠井が勝てないと思っているなら思わせておこう、一生勝てる気がしない三上はそのまま笠井を押し倒す。

 

 


なんか珍しいもん書いた…?

050606

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