プ リ ン


「・・・せんぱい」
「何」
「物凄い光景ですね」
「ほっとけ」

小さく舌打ちした三上を笠井は珍しそうに眺めた。
話には聞いていたが直接目撃するのは初めてだ。プリンを食べる三上亮。
少し骨張った手が市販のプリンの容器を掴み、透明のプラスチックのスプーンで口に運ぶ。
(甘い物だが)普段するような苦そうな表情もせず、淡々と、寧ろ機械的に三上はプリンを摂取していく。必要な物と言わんばかりだ。

「・・・変なの〜」
「うっせーよ」
「何で甘い物キライなのにプリンは平気なんですか?」

しかも三上の手の中にあるのは大きめの物。
笠井は以前それを完食出来なかったことがある。

「さーて、何でだろうな」
「ひとくち」
「あーん」
「あー」

流石の三上も口移し、とふざけたことはやらないらしい。プリンでやると親鳥のエサやりのようだ。
プリンが食べれるからと言って特に好きな食べ物、と言うわけではないらしい。
知られていたらイベントの旅にプリンづくしの刑だ。

「・・・プリン好き?」

口の中のプリンがなくなってから笠井は聞いてみる。
三上はプリンを口に運んで、

「どっちかっつーと」
「何で?」
「さて何故でしょう」
「それからかってんの、それとも本気で?」
「前者でーす」
「・・・・・・」

落ち着け、大人になれ。
笠井は自分に言い聞かせながらも三上にそれを言いたくなる。
いや、プリン好きなお子様相手、俺が大人にならないと。
そのお子様はカップの底に少し残ったカラメルを集めて、かと思えば笠井の口にそれを突っ込む。
プリンとのギャップの激しい苦みが口の中に広がった。せめてプリンと一緒にしてほしい。

「まぁ、ゆっちゃうと、そんなモンかって感じよ?聞きたい?」
「聞きたい」
「・・・・・・初恋の人がプリン作るの好きだったってだけ」
「・・・はつこい、」
「うん」
「・・・それ、いくつ」
「さぁ、いつからだろ。結構長かったんだけどなー、片思い」

似合わないと思ったのは秘密だ。

「つっても初恋にカウントしてねーけどな。初めての初恋って感じ?」
「何度初恋があったんですか」
「何度もファーストキスがあったワケよ」
「・・・・・・」

本当かどうか考えあぐねいていると三上が勝手に話を始める。

「プリン作るのは良いんだけど毎回失敗でさぁ、俺は毎回味見係と称した処理班だったわけよ」
「はぁ・・・プリンは作るの難しいらしいですからね」

何気なく姉に聞いたとき、過去の失敗を思い出した彼女に逆切れされてしまったことがある。
そういえば焼きすぎプリンを食べさせられた。蒸したはずなのに。

「・・・その人は、今、どうしてるんですか」
「えー?あぁ、おっさん掴まえていちゃついてる。俺んがぜってーイイ男なのになー」
「・・・・・・」
「あーあ、多実子元気かなー」

わざとらしい。
笠井が三上を睨んでやるが、途中で気付く。聞き覚えのある名前だ。
油断している隙にがしりと足を掴まえられてビクリとする。
その間に三上が近付いてきて、自分の上に影がかかった。

「切なくなってきた。慰めてv」
「あっ・・・あほですか!あほでしたねごめんなさい!」
「てめ・・・」
「てーか、多実子って、・・・パソコン、ですよね?」
「ああ、言っとくけどン前つけたの俺じゃねーぞ。アレ元は親父のだから」
「・・・え?でも多実子さんって先輩の初恋の人なんですよね?」
「おう、今頃親父とランデブーだ」
「ランデブーって・・・じゃない」

つっこみ所を間違えた。

「・・・浮気?」
「ブッブー。残念ながらうちの兄弟みんな性格はじいちゃんに似てんだ」
「・・・・・・あ」

わかった、と言う前に口を塞がれた。
甘い甘い、それはいつでも何処か懐かしさを感じる。

「・・・・・・マザコン?」
「マザコンゆーな」






「てゆーか俺が居るの忘れないで下さいよー」

即追い出されるのを知っていてもささやかな抵抗を試みた藤代だった。

 

 


プッリーン。
期末中に書いてたんだわ。
勉強で一杯一杯の間に書いてるので可笑しいな・・・

030715

 

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