数 学


「せーのッ」

どん。
同時に紙をめくって表を向ける。
三上は顔をしかめ、近藤はにやりと笑って三上のテストを引き寄せた。

「肉まん宜しく〜」
「またか!畜生、お前カンニングとかしてねェだろうな!」
「誰がするか!勝てないからってテキトーなことゆってんじゃねぇよ」
「俺 今回数学ばっかやってたんだぞ!?」
「知らねぇよ実力じゃね?」
「・・・!」

またやってるのか、
渋沢は溜息も通り越しふっと微笑んでしまった。
毎度お馴染みの微笑ましい光景に、齢15にしてお父さんの気持ちだ(貫禄もそこに伴っている)。

「まぁ三上落ち着け、次頑張ればいいだろう」
「テメーのそのセリフも聞き飽きた!」
「いやでもな、三上は頑張ったと思うぞ」
「そう言うお前も俺より点数上じゃねェかッふざけんなよ!?文系っぽい癖しやがって!」
「三上それじゃ完璧に僻みだ。でも渋沢割りとオールマイティだよな」
「そうかな」
「お前等しね!大体ッ」

スコンッ!

三上が後頭部を押さえてうずくまった。

「授業中に寝てる奴に点数取られて堪るかよ。ハイとっとと席つけー解答配ったから採点ミスあった奴今日中に持ってこいよーじゃあ今日は昨日の答え合わせからー」
「センセー」
「ハイ近藤君」
「三上君が起きません」
「本の角は大変危険な凶器となりうるので人を殴ったりしないようにしましょう」
「ハーイ」
「・・・お前らいつか殴る・・・」

 

 

「・・・でも三上先輩 数学以外は勝ってるじゃないですか」

個人の成績表を見比べて、笠井は呆れて溜息を吐く。
平均を越えるか越えないかを基準に毎回奮闘している笠井としては憎らしいまでもの可愛い数字の順位だ。

「他はどうでもいいんだ他は!俺が勝つって分かり切ってるから!」
「・・・さいですか」
「次はぜってー泣かす。・・・それはそうと笠井君のその点数は何ですか?」
「・・・・・・」
「俺のマンツーマン無下にしやがって」
「三上先輩のヤマはアテにならないんですけどー。じゃあいいですよー次から近藤先輩に聞きますから!俺に時間割いてないで自分の勉強して下さい!」
「い、いやそうとは言ってな」
「じゃあ次のテストまでサヨナラで!」
「嘘ッありえねぇ、ざけんな」
「俺は本気です」
「・・・・・・」

 

 

「と言うことなんですが」
「・・・笠井は大丈夫か?」
「・・・リベンジはちょっと怖いですけど三上先輩はどうせ俺のこと好きなので多分大丈夫です」
「・・・・・・」

このバカップルに関わらないように生きてきたのに。
卒業を目前に近藤の努力は無駄になりそうだ。
三上と(色んな意味で)繋がってさえなければ可愛い後輩なのに。

「あッ駄目だったらいいんです、先輩の迷惑になるなら。嫌ですよねこんなくだらないことに関わるの」
「別に良いけどさ、役に立つか分かんないけど。どうせ俺もテスト前大して勉強してねェし」
「・・・・・・(刺したい)」

「笠井今回のテスト見して」
「え」
「数学は大抵先生が順番にテスト作ってるからさー。先生分かるだけで結構出題分かるぞ」
「・・・・」
「あと先生違うクラスのノートと比べて共通してる部分とか、プリントと問題集で被るとことか」
「俺 近藤先輩のそう言うセコいとこ好きです」
「こういうのがテスト調べと言うんです。あくまで参考にしかなんねェから結局頑張るのは笠井だからな。あとはちゃんと授業聞く」
「ハァーイ」

ふたりの様子を見ていたお父さんは大丈夫かなと溜息を吐き、一番手の掛かる亮君の心配をするのだ。

 

 

「タク最近イキイキしてない?」
「んー?寝不足解消したせいかなー」
「聞こえてんだよ・・・」

三上が笠井の頭に拳を当てる。けしてそのまま攻撃に移らない精神攻撃。
しかしそれも笠井には効かないらしく、平気な顔で朝食を摂る(因みに根岸には効果大)。

「あ、近藤先輩おはようございますー」
「おー笠井オハヨー。寝れた?」
「寝ましたー」
「今日頑張れよー」
「はーい」
「・・・・」
「イッターッ! 三上先輩痛い!忘れるーッ」
「お前今日俺の部屋な!」
「声でかいッ」

・・・来るテスト最終日。
お父さんの心配をよそに予想外の我慢を見せた亮君だがもう(色々と)限界らしい。
朝から不機嫌なのはいつものことだが、今日はいつにも増してひどかった。それも最後だ、少しやつれた様子のお父さんは我慢する。
さて結果はどうなることか。

(・・・あとで辰巳に胃薬貰おう・・・)

お父さんは三上がどうだったと語ることはない。

 

 

「せーのッ」

放課後返された数学のテスト。
その場に立ち会うのは初めての笠井は一人でわくわくし、もう見飽きたクラスメイト達は付き合ってやっている渋沢に声を掛けて帰っていく。

「────・・・ッしゃ!」

三上が満面の笑みでガッツポーズ。
ほっとしたのは渋沢で、これで夜な夜な呪いの言葉を聞かなくても済むと早々に立ち去ることにした。
何事もなかったかのように三上は渋沢へ爽やかに別れの挨拶をする。これから部活で会うというのに。

「・・・まぁちょっとですけど確かに三上先輩の勝ちですね」
「どうだ近藤!」
「うん頑張った頑張ったオメデトー」
「・・・・・・」

やる気のなさそうに近藤はパチパチと手を叩いた。
三上が無言で笠井に抱きつく。笠井は鬱陶しそうにその背中をぽんぽんと叩いてやった。

「三上先輩のいじめるのやめてくれますか」
「だって三上面白いだろ。俺別に勝ち負けとかどうでもいいし」
「面白いですけど俺が迷惑被るんです」
「因みにお前のテストは?」
「あ、近藤先輩のヤマばっちり出ましたよー。まだ帰ってきてないですけど手応えはバッチリです!」
「そっかーそりゃよかった。んじゃテキトーに部活来いよー」
「はーい」

近藤に手を振って見送り、笠井はコレをどうしようかと考えた。
もう辺りに生徒の姿はすっかりない。笠井も早いところ部活へ行きたいのだが、コレはどうも動く気がないようだ。

「三上センパーイ、部活行きますよ」
「近藤むかつく・・・」
「はいはい勝ったんだからいいじゃないですか。部活行きますよー」
「保健室行かない?」
「一人でどうぞ」

みんなして俺をいじめる。
三上の言葉に笠井は溜息を吐いた。

 

 


三上が手の掛かる大きな子どもになってしまいました。いやそうだと思ってますが。
近藤君はサポブで特技は暗算とゆってしまうぐらいなのだからさぞや数学が得意なのでしょうと言うことで書いてみました(自己解釈)。
あと渋沢もちょっと書こうとしたけどなんだかなぁ。

040430

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