イ ン タ ー ネ ッ ト
三上:台風直撃だったってな、大丈夫か?
「な・・・なして」
キーボードを打つ手が止まる。
昨日までの暴風は綺麗におさまり、雨の気配も全くなくなった。庭の木が少し傾いたぐらいで、家に被害は何もない。久しぶりの台風直撃だった。「・・・・・・」
功刀:何で知っとる
三上:世の中には天気予報というモノがあるんです、ニュースでもやってたし
功刀:昭栄んちは浸水しかけたって
三上:功刀んちは?大丈夫だった?
功刀:大丈夫や、家離れとるけん
三上:そっか、ならいい「・・・・・・」
何で、すぐ。
「何でそうゆうこと言う・・・」
三上:東京とか明日頃台風直撃するらしいぜ
功刀:大変やな。でも部活とかなくなるやろ
三上:つかそれ以前に東京帰れねェかも「・・・・・・・・・」
三上:明日空いてる?
「何 してん です か ッッ!!」
「修学旅行でーす」制服姿の三上がけたけた笑う。
見たことのない姿に戸惑いつつも、功刀は精一杯三上を睨み付けてやった。「久しぶり、ってのも変か、昨日話はしてたわけだし」
「あれ、何で」
「携帯でもチャットルーム入れるの知ってるか?」
「あ」相変わらずにやにやと笑うだけの三上に足を踏みならす。
来たことのないホテルの近くで見たことのある人を見ているのは違和感しか感じなかった。「何で黙ってた」
「えー、てか言ったしー。忘れてたの?寂しいなー」
「気色悪い喋り方すなッ」
「ちゃんと九州行くって言っただろ、日付も言った」
「大昔に聞いたッ」むかつく、
功刀が呟くのを聞いても三上は笑うだけだ。「・・・時間大丈夫なんか」
「今自由行動。功刀に会うため抜けてきました」
「キモイ!」
「何でー、つまんねー」自分の機嫌と三上の機嫌は反比例している。
・・・と自分に言い聞かせた。「とか何とか言って、嬉しくない?」
「だ れ が !」有り得ない。
インターネットだけで繋がる関係でそこまで執着しているはずがなかった。「・・・ところで」
三上が功刀の手を捕まえる。
咄嗟に振り払いかけるが、痛さに顔をしかめてそれが出来ない。「包帯、何?」
「・・・・・・そりゃ、怪我、したから」肘から手首にかけて巻かれた包帯は大袈裟なものだった。
実際は絆創膏で済むような傷だが、広範囲でそれが出来なかったと言うだけ。「何で」
「・・・昨日、台風で」
「ふーん、何で?家無事だったって言ったよな」
「・・・学校で、・・・教室に折れた枝が突っ込んできて」
「あぁ、窓側だっけ」何で覚えてるんだ。
自分だってそんなことを言った覚えはない。
悔しい。「何で教えてくんないの?」
「そんな大したことじゃないけん、俺も忘れとったぐらいや」
「寂しいの」何で夏なんだ。冬なら腕を隠して来れた。
寧ろ包帯を外してくると言うことを思いつかないほど動揺していた自分も許せない。「キーパーなのに」
「・・・・」外していい?
聞きながらもう三上の手は包帯をほどき始めた。自然と体が硬直する。以前1度会っただけだ。 東京駅で渋沢と一緒にいたのを見かけた。
少しだけ話をして、それだけで意見が近いことが多いと分かった。
だからそのままサヨナラがしたくなくて、連絡を取ろうとしたのはこっちが先。
もしかして、負けだろうか。「みっ・・・三上は・・・」
包帯の先が引力に吸い寄せられ、落ちかけたガーゼを包帯と一緒に捕まえる。
「こんなことしてて、時間大丈夫なんか」
「別に。誰かに土産買ってやるとか面倒だし、つーか、俺、お前に会いに来たし」
「・・・・・・だからっ・・・」三上の手が少し放れた隙に功刀は腕を引き寄せる。
暑い。
少し俯くとトレードマークのキャップが顔に影を作った。首がじりじり焼ける。「だから、何?」
「・・・そう言うこと言っても、何も出んからな」
「ん、いらない」
「・・・・・・」
「怪我大したことないみたいだな」
「だから、そう言ったやろ」
「強がりかと思った」
「あほ」
「でも、キーパーなのにな」
「・・・・・・」確かに数日は無理が出来ないだろう。
だけどそんなこと思い悩んでたのを三上の所為ですっかり忘れていた。「・・・もう、お前、二度と会わない」
「あ、何それ、ひでェ」
「お前はネット上の人間だったんじゃ、急に現れたって、整理つかん」
「何、妄想癖でもあるみたい」暑い。
九州の暑さじゃなかった。「・・・じゃあ、最後に生身で言う」
「・・・・・・」
「 好 き だ 」
またチャットでな。
本当の最後はそれだった。
「カズさーんっ、腕大丈夫ッスか?」
「あー?もう全然平気っちゃ。・・・つか、誰あの女」
「俺の彼女!」
「頭可笑しいっちゃあの女」
「違いますー!!」あ、
一瞬来た目眩に功刀は眉間にしわを寄せてこらえる。
やはり昨日の睡眠不足が祟ったらしい。腕を言い訳にして適当に下がらせて貰おう。
そんなことを考えながら包帯を外す。これから炎天下に出ていくのだ、妙な日焼けがつくのには流石に抵抗があった。「あ、そういやカズさん」
それに包帯は暑かった。
ただ、それは太陽の暑さだけではないかもしれない。「カズさんたち修学旅行東京らしいっすね」
「はっ!?」もしや
もしや、好きだ、の返事をしろと言うことか。
絶対、黙っててやる。
東京行きなんて流れてしまえ。
行くこと何て教えてやるもんか。そうして今夜の話題に困るんだろう。
微妙ですが三カズ。
よく考えたら台風ネタは昭カズでやる予定だった(・・・・)030623
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