「だからさぁ、英士は諦めちゃうからいけないんだって」
「別に諦めてないってば」

ふと耳に入った声、笠井は顔を上げる。
店内に入ってきた2人のうちふたりはレジへ、もうひとりが席を取りにこっちを向いた。


運 命 か ど う か


「あ…」

思わず声が出てしまい、向こうがふたりに気づいた。三上に睨まれて笠井は素直にごめんと謝る。

「よう。何?デート?」
「わかってて邪魔しにくんな」

近づいてきた若菜に三上は追い払う仕草を見せる。折角遠出してきたと言うのに、知り合いに会っては意味がない。
全国を占めるファーストフードのチェーン店で鉢合わせとは、運の悪さを呪ってしまう。

「なんだよいーじゃん」
「結人」

たしなめる口調で郭が呼んで、若菜はわずかに顔をしかめた。
しかし店内を見回し、ふたりのそばにしか空席がないのに気づいて笑う。食べかけの三上が立ち上がったのを笠井が慌てて止めた。

「もういいじゃないですか!…郭も、久しぶり。いいよ隣」
「そう?ごめん」

若菜の分も注文してきたらしい真田がきて、三上を見て足を止めた。

「なっ、なんでっ…」
「偶然。我慢して」
「まるで俺が悪人のような言い種だな」
「違ったっけ?」

ばちっと火花が飛んだのが見えた気がした。ふたりの間に笠井と若菜が入る。
世話の焼ける人達だ。呟いた笠井が原因だとは誰もつっこまなかった。

 

*

 

「トイレ行ってくる」
「あ、俺も」

笠井に続いて若菜が立ち上がった。真田がひとりうろたえたが、残念ながら誰も気づいてくれない。結人が戻って来る前に死ぬかもしれない。顔を青くしてシェイクをすする。三上と郭はにらみ合っていた。
トイレは塞がっていて、笠井と若菜は並んで待つ。女子トイレならともかく男子トイレ前の列はやや異様だが、戻って待つのも面倒だ。

「…若菜はさ」
「ん?」
「真田が好き?」
「! ななっ、何で!?」
「なんとなく」
「……」

濡れた瞳に遠慮がちに見つめられて、繕う言葉も出て来ない。三上や自分の親友の気持ちが少しわかった。

「…だ、だったらどうなんだよ…」
「別に?俺がとやかく言える立場じゃないし」
「…三上よりはましだろうが」
「あーそうかも?でも、あ、俺の個人的な意見だけど、真田みたいな将来性に不安を感じる人とは付き合いたくないな」
「は?それを言うなら三上より一馬だろ」
「あ、違うよ。将来性って言うか…ちゃんと、ふってくれるかどうか」
「は…?」
「だって、一生一緒になんて俺も三上先輩も思ってないよ。でも俺は自分からは何も言えないから、捨ててくれないと困る」
「…そんなこと、考えながらつき合ってんの?」
「んー、刷り込み?…ウチ男子校みたいなもんだし、『先輩』はそれなりにいるから」
「…」
「あ、空いた。先いいよ」
「いや…先」
「じゃあ」

笠井が中へ入り、若菜は混乱した頭を整理する。離れるときのこと?────考えたこともない。幼い頃から一度も。無条件にずっと一緒にいると思っていた。
あのふざけたような三上も真剣に考えているのだろうか。別れるときのことを?
出て来た笠井と代わって用を済ませ、席へ戻ると笠井は郭と笑い合っている。俺も、三上が席を立った。なんと なく居づらかったらしい。

「────笠井」
「何?」
「英士も?」

座りもしない若菜の問いは笠井にしかわからない。その笠井も少し考えて、笑った。

「わかんない。でも選んじゃっただけ」
「……」
「あ、この話先輩の前では秘密ね。怒られるんだ」
「俺…お前らただのバカップルだと思ってた」
「ちょっと、心外だなぁ。バカは先輩だけだよ」

何の話?郭が聞くのも笠井は笑ってかわす。もしかしたら最強かもしれない。

「…えーし、やっぱ諦めた方がいんじゃね?」
「余計なお世話」

 

 


どの辺りが真若なのか真若を見たことがないのでわかりません。どうしたらいいのかわかんなかったので受け子同士でトイレに並ばせてみました(何)
郭→笠でした…

050209

 

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