「・・・入っても大丈夫か?」
「ホントは部外者立入禁止みてぇだけど、いいんじゃねェ?まぁお母さんに見付からなきゃオッケーよ」
「お母さんって」
「この場合は渋沢じゃなくて寮母さん」

やっぱり渋沢って母親ポジションなんだ。
違うところに突っ込んで、真田は笑う三上に手を引かれて寮に足を踏み入れた。
サッカー部寮、なんてサッカーをするために集まったような生徒の集合体のこの建物は真田が思っていたほど(と言うより親友ふたりに刷り込まれたほど)汚くはない。案外に清潔で、確かに男の生活らしいものも多少は感じるが、それは若菜の部屋もいい勝負だと思う。

「もっと汚いとか思ってただろ」
「あ、いや」
「まぁお母さんが居ますから」
「・・・渋沢?」
「どっちも」

階段を上りかけ、上から誰かが降りてきたのを見て真田は任せていた腕を慌てて引き寄せる。
一瞬三上が目を細めて真田を振り返ったが、降りてきた多分後輩に挨拶をされて習慣のようにそれを返した。真田にも挨拶され、慌てて会釈だけ返す。

「・・・何で俺も挨拶??」
「うちの学校先輩見かけたら知ってても知らなくても挨拶だから。俺と一緒だから先輩だと思われたんじゃねェの?同じ部活でも大所帯だから全員把握できねェし」
「何それ、知らない奴にも挨拶すんの?うちの学校部活の先輩だけだぞ、俺居ないけど」
「あぁ、お前部活やってねーもんな。普通そうだよなぁ。渋沢が1年の時とかちょっとキモかったぞー明らかに自分より年下っぽいのに挨拶してるからな」
「・・・・・・」
「めんどくせーんだよなぁ、更衣室とかシャワーとか先輩優先だしよ」
「ふーん・・・」

階段を上って廊下の一番奥、そこが三上の部屋らしい。遠いけど便利なときには便利、と言われ真田は首を傾げる。
ドアの前まで来て三上がドアを開けた。ネームプレートには渋沢と三上の名前。
そういえば渋沢と同じだと言ってたことを思い出し、何となく緊張する。ふたりの関係を知ってはいるらしいのだが、選抜で会うとは言え話はしないので真田は何となく緊張した。
カランという音に視線を落とせば、ドアノブに何か白いプレートが掛かっている。
めくってみれば、「使用中」の文字。100円均一辺りで売っていそうだ。

「あ、それ表にしといて」
「え?」
「丁度渋沢いねぇや」

入って入ってと腕を引かれ、真田はまたされるがままに中へ入った。
パタンとドアが閉じた途端に緊張。一瞬にしてふたりきりになる。
今までの廊下なども人は何故か少なかったのでふたりきりのようなものだったが、部屋という個人の空間とはまた空気が違う。

「何する?」
「・・・・・・何、って」
「因みに俺のベッドそっち」

三上が指差した方向と真っ直ぐ180度逆方向を真田は見た。
別にボケたわけではなく露骨に誘われたのが分かって見れない。三上もそれが分かって、無理矢理頭を向かせてやる。

「イタイイタイッ」
「渋沢のとこなんか見ても面白くねーよF1雑誌のレースクイーンぐらいしか色気ねぇんだからッ」

押し切られてベッドの方を向く。朝起きたままの乱れたベッド。
パジャマ代わりらしいTシャツが布団の上に引っかかっている。せめてそれぐらいは片付けて欲しい、女ではないとは言え好きと言ってくれるのだから、好きな人にそう言うだらしない面は見せたくないものじゃないんだろうか。
油断していると後ろから巻き付くように抱かれた。耳元に息がかかって身をよじる。

「どうする?」
「・・・どうする、」
「だってふたりでゲームっつってもキモイだろ」
「・・・ていうか三上がゲームって何か変」
「格ゲーぐらいするけど、付き合いで」
「(おっさん・・・?) 強いの?」
「まぁそこそこ。でもゲームの話は終わってから」
「え? うわッ」

三上が真田の体を真っ直ぐ押して、思わず足を動かした真田はそのまま止められずベッドまで押してこられる。
ギリギリで足を止めれば、三上は迷わず力を入れて真田をベッドへ突き放した。
ぽんぽんとポケットを叩いて何かを確認、それからどっこいせとわざとらしく掛け声をかけて体勢を直した真田を跨ぐ。

「・・・三上」
「上がいい?」
「そう言う問題じゃッ」

なだめるように頭を撫でられ、そうかと思えばその手が下がって顎を持ち上げる。
両手で真田の顔を挟み込んで顔を落とした。
うわ、来た。もう習慣で真田が目を閉じれば、予想したものは来なくて額と額がぶつかる。

「・・・三上?」
「忘れてた」

三上の手が真田を放し、片手が壁をノックする。
1234567、8回。

「ちょっと上あがって、布団抜くから」
「あ、うん」

今の行動の真意が読めず、思わず三上に従って体をずらす。
下に敷いてしまった布団を引き抜いて足元にやり、三上は真田の手を引いた。もっかいこっち、と三上の前を叩かれる。

「・・・今の、何?」
「何でしょう」

またさっきのやり直しのように、三上が真田の頬を挟んで顔を寄せた。
今度こそと思うが三上の唇が触れたのは鼻先。それすら焦らすか。真田は三上の手を振り払う。
三上が笑って、今度こそ真田のそれにキスを落とした。一瞬触れ、押し返そうとする真田の手をベッドに押しつけてもう一度。唇を舐めて、軽く噛むと抗議しようとしたのか真田の口が開いた。その隙をついて深く。

「みか、」
「ヒントは8」
「・・・・」

しばらく考えて、さっきの自分の問のことだと気付いた。
もう今はそれはどうでも良い真田は考えない、と言うより考えられない。三上の手はその間にも真田の服を脱がしていくのだ、考える余裕が何処にあるというのだろう。

「何?」
「アルファベット」
「?」

真田の目の前で三上が指折り数える。
ABCDEFG、

「〜〜〜〜〜〜ッ・・・」
「だってホラ、隣に人居たら楽しめねェだろ?」
「だ、だからって」
「これも礼儀ってモンだろ」
「絶対違う・・・」

 

 

 

「・・・・・・」
「何か飲み物買ってくんな」
「・・・うん・・・」

力尽きた真田はベッドに伏せて、顔を上げないまま適当に手を振った。
三上が笑いながらその指先に噛み付いて、真田が硬直したのも気にせずにドアを開けた。
カラン、プレートに気付いた三上がそれを裏返そうとした。

「・・・あれ、真田これ表向けろって言ったのに」
「え?」
「危なかったなー、このままだと渋沢入ってくるとこだったぞ」
「・・・・・・」

顔を上げた真田は再度硬直。
三上が指先に「使用中」のプレートをぶら下げて笑っている。

「・・・鍵とかないのかよッ」
「あるけど渋沢も持ってんだから無意味だろうがよ」
「・・・・・・」
「ま、鍵掛けてるときは大抵入ってこねェけどな」
「・・・・・・」

もう2度とここ来ない。
密かに誓う真田だった。

 

 


何ですかね。
なんか無性に三真が書きたくなって。三笠だとこういう話は書けないので書いてみました。
一馬はきっと寮生活なんて出来ない。ていうか一馬は将棋部とか入ってそうだなぁ。人数確保だけで行ってないけど。

040430

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