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「誕生日…おめでとう…ござい、ます……」

どうしよう、がまず思ったこと。向こうも不安そうなのは自信がないからだろう。事実、1日間違っている。どう告げればいいのか迷っていると、笠井も察したらしい。明るくなければわからない程度にわずかに頬を染めて、やっぱり違いましたか、と謝った。照れたような困ったような、羞恥を隠すその苦笑いがどうしようもなく愛しくなる。言葉にすれば好きと言う意味の感情が、こんなにもぴったりなのは今だけじゃないかと思われた。さっきからどうも落ち着かない様子だと思えば、ずっと言うか言うまいか考えていたのだろう、後悔しているのが見てとれる。一足早く親から届いたプレゼントと称した日用品よりも、明日になれば渡されるはずの女子棟の勇気ある住人からの贈り物よりも、このたった一言がこんなに嬉しい。自分はいつの間にこんなに好きになったのか戸惑うほどに、だけどそれを必死で押し隠す。

「あの…いつ、でしたか?」
「…明日」
「惜しかったな…すいません。…あ、それにプレゼントも準備できなくて」
「いや」

にやけてくるので顔をそらす。笠井も照れて三上を見ようとしてこない。しばらく様子を伺って顔を寄せると、慌ててこっちを見た。

「嫌?」
「……」

笠井が目を閉じる。そのままキスをした。軽く唇を重ね、つたない行為だが舌を絡める。途中で恥ずかしくなったらしい笠井が手を伸ばして引き剥がした。その手を三上が捕まえて、笠井は体をかたくする。

「触っていい?」
「……どこを、」
「お前を」
「……」

ゆっくり三上の手を離し、両手を引き寄せる。悩む様子を見せていた笠井は、脱ぎましょうか、と小さく呟いた。

 

*

 

短い呼吸を繰り返し、息を整えようとするのを邪魔してまた口付けた。汚れた手を握りしめて笠井はそれに応える。離れてから拭いてやり、一緒に布団に潜り込んだ。何も言葉が見つからない。

「……笠井」
「はい」
「お前誕生日いつ?」

返事がない。布団をめくって顔を探すと、両手で覆って隠している。真ん中よりずれたつむじが見えた。

「笠井?……やっぱり嫌だったか?」
「違うんです、────嬉しい」
「……」

どうしてこんなに。どんなに言葉を探しても、自分の気持ちを表現できる言葉がない。

(…俺、なんか気持ち悪い…)

笠井を抱きしめる。裸にかかる毛布がくすぐったい。今の時間シャワーは使えるんだろうか、余計なことを考えていると笠井の呟きを聞き逃してしまう。聞き返すと小さく、11月3日、と聞こえた。抱きしめる手を強くする。

「……服着るか」
「ですね…」

顔を上げた笠井と目が合うと笑い出した。いつもと違う雰囲気を作り出してしまったせいか、崩れた今がおかしい。笑い声を殺してふたりで体を震わせる。笑いを遮ったのは軽快なメロディーで、笠井が悲鳴を上げた。慌てて音源を探した三上が掴んだのは携帯電話。

「あ…」
「…どうしました?」
「日付変わった」
「……おめでとうございます」
「キスしていい?」
「……はい」

改めて返事されるとやりにくい。祝いの言葉が送られてきた携帯を手放し、照れながらも笠井の頬に手を添えた。

「────11月な」
「…はい」

 

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