ドンッ

「てっ・・・」
「・・・・・・」

何が起きたんだ。

「・・・・・・・・・」

そいつは黙って見下ろしている。
俺は体が痛い。全体的に痛くて何処が痛いのかいまいち把握できない。

「・・・・・・・・・ご・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

取り敢えず何が起きたのか説明しろ。
廊下で後輩に押し倒された、この情けない構図のワケを。


L e t ' s   m a k e   l o v e !   1


「か、カサイ何やってんだよっ行くぞ!!」
「え、あっごめんなさいッ!!」

カサイと呼ばれたその後輩は慌てて跳ね起きた。

「大丈夫ですか!?」
「ああ・・・」
「本当にすみませんでした」

礼儀正しくお辞儀して(まぁ入学当時なんてこんなモンか)、カサイとやらは友達の方へ走っていく。
・・・何かどっかで見たことあるな・・・。

「こらこら色男、いつまで座ってる気?ケツ冷えるよ」
「・・・なぁ中西、アイツ知ってる?」

いかにも演技掛かって手が差し出されたので、無視してひとりで立ち上がる。
てーか中西さっき避けたな?

「・・・誰かさんが春休み中に入院したりするから」
「不可抗力だよ!」
「何処の骨にヒビ入れたって?」
「左足の親指」
「何したの」
「・・・・・・階段から落ちた」
「・・・・」
「落とされたの!」

くそ、ハタチ過ぎて義務教育中の弟とマジで喧嘩すんなよなあのバカ兄貴は!
たかがゲーム如きで刑務所入る気かよ。

「んで、アイツ誰?」
「サッカー部よ。今日顔見るんじゃない? まぁ向こうも天下の三上亮にぶつかったとは気付いてないみたいだけどねぇ」
「天下って・・・それお前の為の言葉じゃないか?」
「成程。 どうした?気になる?」
「いや・・・気になるってか・・・・・・丁度イイ重さだなって」
「・・・騎乗位好きね・・・」

何かちょっと熱かったのは気のせいか。

カサイ

葛西 笠居 火災・・・あ、違う。
あー、そういやカサイって居たなぁ。
笠井、だ。

「ち・な・み・にぃ」

・・・中西のこの声は、そっち方面。

「俺のだからちょっかい出さないでねv」
「・・・ハイハイ」




カサイタクミ、DF。
自分と同じポジションの後輩は取り敢えず復帰前に挨拶してくれた。
しかし他のポジションしかも1年となると寮内ですら顔を合わせない奴等もいる。
・・・下手すっと、ずっと知らないまま卒業した先輩もいるのかもしれない。

それだけ大所帯のサッカー部だが、よく見れば笠井は何処か目立っていた。
・・・・・・そりゃ1年レギュラー藤代と一緒に居りゃ、それだけで目立つけどな。

だけど
そのまま忘れてた。




次に気になった時はもう夏になりかけていた。
新学期に廊下で押し倒されてから(職員室前だったので後で散々担任にバカにされた)数ヶ月。
練習で見かけて巧いなと思った。だけどポジション違うしそれほど深く気にしたわけじゃない。

ただ時々聞こえる笑い声には気になったりしたけど。



「・・・オイ、誰か藤代殺してこい」
「三上・・・落ち着け・・・」
「自分で行っといでよぉ」
「俺もう犯罪引っ掛かるから。誰か13のヤツ」
「後輩じゃん」

これ見よがしに掲示板に貼られた、体育祭終わった後のクラス写真。
と言うより写真屋が取ってる傍で個人のカメラで取ったヤツだろう。新聞部かもしれない。
どっちにしろ写真屋は未だ来てないから、写真屋のではないはずだ。

縦割りで決めた色別の組の、ピンクの。
毎年ピンクになったトコは絶対勝てないと言うジンクスを見事覆したのは、異様にサッカー部員を主に運動部系が多く集まってた所為だろう。
ソレはともかく、この写真の犯人は間違いなく藤代だ。
3年は部長の居るクラス、2年は中西の居るクラス、1年は藤代の居るクラス。
要らないアイドルもいる所為で志気が上がったのも勝因のひとつだろう。

アイツが勝ったのを散々自慢していたが。
・・・最下位だった俺としては腹が立つ以外の何ものでもない。
特にこのバカみたいな笑いが!!

渋沢が苦笑しながらその写真を剥がす。写真を画鋲で留めるな。
夏休みについての掲示物を貼りに来た渋沢はソレを俺に渡して、中西から掲示物を受け取る。

「藤代頑張ってたもんな」
「誰かと賭けてたからでしょ」
「つーかお前らんトコは応援合戦狙い過ぎなんだよ・・・」
「美人だったでしょー俺」
「・・・・・・」

ピンクにあやかって女装乙女とナマ乙女(ピンクによる表現だ)が共演して応援合戦したのだ。
チアガールは反則。ホントもう。色んな意味で。

「俺は笠井も誘ったんだけどねー」
「笠井はそう言うの苦手だろうな」
「・・・笠井も同じだったのか?」
「そうv藤代と同じクラスだよ」

そう言われて手元の写真に目を落とした。
40人だからそう探すのが大変ではないのだろうが、何せ藤代が一番目立つ上このクラスはそのノリについて行く奴が多いらしい。
少し隅の方で、だけど周りをみんなに囲まれて、

笑ってた。

何故だか目を離せなくなってそのままで居たら、掲示物を張り終えたらしい中西が手から写真を引き抜いた。
それでハッとして我に返る。

「あ、笠井かわいーじゃん。俺もらっちゃおv」
「中西・・・藤代に返しておけ」
「えー、だって勿体ないじゃん。俺笠井のこんな顔初めて見たよ」
「笠井か・・・確かに少し距離を置くときはあるな」
「ちょっと油断したのを撮られた、って感じかな」

・・・中西も見たことない顔。
藤代なら見たことあるんだろうか、アイツが多分一番長い時間一緒にいるから。

って 俺が気にしてどうかなるコトじゃないけど。




だけどあれから気にしてた。
笑い声がしたら反射的に振り向いて。
写真みたいな笑顔は見たことがなかった。

もう声はすっかり覚えた。
いつだったか歌声も聞いた。確かテストか何かの練習を藤代としてて。
本気で怒ってたこともあった。
怒鳴ってる途中に声枯れて一瞬まぬけな間が出来た。

だけどもちっと
別の声が
聴きたくなったり


バカみたいに欲求不満。


そんで
しょっちゅう見てる所為か目が合って

まぁその度に目ェ逸らされたり。

 

2 >


やっとこさ書けた出会い編。
ヘタレ三上上等。

どうでも良いんですが笠井が何とも言えません。
殆ど出てないしな。

021216

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