目つきが時々可愛くない
腹立ったときは思いっ切り声が不満そうだったり
嫌いなモンは最後まで残しつつ結局食ったりとか

中西の前で表情が変わる


L e t ' s   m a k e   l o v e !   2


「かーさいっ」
「わっ」

・・・この暑いのに目の前にバカップルが。
絶対室内温度が2度は上がったと自信を持って言える。

ホントにDFかと言ってやりたくなるヤツが、中西に飛びつかれて一瞬よろける。
まぁあの身長差でよろけただけならそれなりに立派だろう。

「中西先輩暑いのに元気ですね」
「俺は冬駄目な人だから」
「あ、俺も寒いのホント駄目です。毎年冬になると冬眠しますよ」
「俺も冬眠するけど渋沢が怖いからねぇ」

口先ばっかりの癖によく言う。
去年お前を起こしに行った渋沢が怯えながら帰ってきたのを俺は忘れてねぇそ。

蝉の鳴き声を聞いた気がした。暑さが増す。
もうすぐ夏休みだ。
・・・と言ってもないに等しい。

「そこのバカップル熱いから離れろ。寧ろ消えろ。原子レベルに」
「あら三上いたのー?」
「いましたー」

一緒に談話室まで来てソレ言うか。
笠井と目が合って、向こうがバツが悪そうに会釈した。軽く返す。

「ねー笠井、夏休み中一緒にどっか遊びに行こうv」
「あ、そうですねー・・・」

・・・どかねぇ気か。

「どうせ休みなんか盆の間しかねぇじゃんか」
「だって笠井家帰らないでしょ?」
「えーっと・・・俺は帰らないて言ってるんですけど・・・どうだろう・・・」
「・・・帰らないのか?」
「・・・と言うか帰りたくないんですよ」

俺の問に笠井が少し眉間にしわを寄せた。様な気がした。
直ぐに中西が抱き締めてしまったのでよく見えない。

「だから俺も今年は帰らないのーv」
「お前安い男になったな・・・」
「あ、でも三上も帰らないって言ってたよね」
「・・・俺は実家リフォーム中。俺が帰っても場所ねぇの」
「じゃあ尚更俺は残らないとね!笠井の危機だから!」
「何の!」
「貞操!」
「言っとけ・・・」

中西の腕の中で笠井が笑う。
顔が見えない。
どんな顔してる?

俺も中西も何も聞かない。
確かに笠井はココに居たけど、ずっと遠い先に居る気がした。




それから何度か笑ってる顔は見かけた。
ぎゅうぎゅうと違う顔を押しつけてるみたいだ。

多分ホントに笑ってないんだろうなぁとか思った。




見事な見事な真っ暗闇。
夏休みに突入してバカみたいに走って走って走ってな記憶しかない夏休み前半。
やっと休み。
誰かが屋上に上がっていく気配で、何となく誰だか分かって外に出た。
煩い寮長も居ないから。

誰だったか何て判るはずもない。
ホントはソレは希望だった。
チャンスじゃん?
ガラでもねぇ。
死ねる死ねる。十分死ねる。
アホらし。

それでも進む足。

「笠井」
「・・・・・・何つータイミングで来るんですか」
「ナイスタイミングじゃん」

金網に片脚掛けて。

「何してんの?」
「・・・前転?」
「バカか」

月も出てない見事な夜。
星は所々にちらついてるが大した光源にもならず、互いを見せてるのはドアの窓から入ってくる寮内の明かり。

「夏の葬式はやめとこうぜ」
「別に死ぬつもりじゃないですよ」

そういえば1対1でまともに会話したのは初めてだと思った。

「ちょっと呼ばれたから、からかってやろうかと思って」
「・・・・・・何に」

笠井はまた空のを方を見て笑う。
黙ったままだ。

「ねぇ先輩」
「何」

夏の夜の空気は冷たくて気持ちが良いと思う。
中西は少し寒いよ、と言ったけど。
同じように寒がりらしい笠井はどう思ってるのか知らない。

「俺帰ってきてから部屋のエアコンの電源入れて、そのまま誠二送りに行ってたんですよ」
「行ってたな」
「そしたらですね」

ハァと溜息をついた。

「暖房になってたんです」
「・・・・・・・・・」
「室温30℃ですよ?死ぬかと思った」
「・・・・・・藤代?」
「多分」
「・・・・」
「んでエアコンにしたけどなかなか温度下がらないし」
「それで暑くて出てきたと」
「そう」

また溜息。
だけど小さく笑う声がした。

「誠二らしいですけどね」

そのセリフが何だか羨ましかった。

「笠井はどうして家帰んねーの?」
「・・・・」
「あ、言いたくなきゃいいけどな」
「・・・そうですね、戻って来れなくなるから」
「?」
「うちの父さん武蔵森入れるの反対だったんですよ、まぁそもそもサッカー自体がですけど。
 だから、ちょっと軟禁の可能性もあるし」
「軟禁って・・・」
「そう言うヒトなんです」

だけどまた笑った。
クスクス笑う背中を見てるとこっちが溜息をつきたくなる。

「先輩」
「お前よく喋るな」
「そうですか? ・・・先輩は男抱いたことある?」
「・・・・・・」

・・・驚くを通り越して呆れた。
よくもまぁここまで性格隠してたモンだ。

「何?遂に中西に食われちゃった?」
「まさか」

・・・まさかって、・・・中西が?
そりゃまた珍しい。

「・・・と言うか俺が暴れたんですけど」
「まーいんじゃねぇの?中西そーいうのあんま気にしねぇだろ」
「そうですかー?」



「ホント言うと」

小さい声がした。
・・・あ。蚊だ。
パチンとやってから先を促す。

「誰か止めてくれないかなと思って待ってたんですよ」
「ほー」
「て言うか昨日は死ぬ気で上がってきてやっぱりやめたんですよ」

「ソレは理由聞いてイイコト?」
「理由なんてないですよ」
「・・・・」
「理由なんかないから。敢えて言うならつまらないから、生きてる理由もないぐらいに」
「存在理由ねぇ」

手の平に付いた蚊を落とす。
肌に血が残った。どっちかが刺されてる。

「俺もないけど?」
「つまんなくないですか?昼間とか何かしてる間は何でもないんですけど、夜とかポッと何もすることなくなってから思うんです」
「・・・あ、お前だ」
「え、何がですか?」
「腕」
「・・・あ、刺された」

意識すると急に痒くなったらしい。
掻くまいとするのか、パチンと手の平で腕を叩いた。

「じゃあ中西に構ってもらえばいいじゃんか、夜」
「・・・親父発言」
「うっせーよ」

自分がここまでしゃべりが上手いとは思わなかった。
さっきから1番言いたいことを言わないように必死で別のこと話してる。

「でも無理」
「じゃあどうしようもねぇな」
「て言うかそんな中西先輩見たくない」

偶像崇拝、
自分で言って笠井が笑った。

「だからお前笑わねぇのな」
「え」
「笑ってねんじゃん、普段」
「・・・・・・ここの人達はみんなエスパーですか?」
「お前が演技下手くそなんじゃねーの?」
「・・・そうかなぁ」

中西先輩も誠二も、根岸先輩も気付いたんだよ
そう言って溜息をついた。
渋沢先輩にも心配されたし、他の人達にもさ

アイツ等は基本的に人がいい。
人の変化に敏感だ。



「・・・・・・あのさぁ」
「何ですか?」
「あんだけ惚気られた後に言うのも何だけど」
「別に惚気てませんけど」
「じゃあ言うけどな」
「何でしょう」



一生の中で一番格好悪いと自信持って言ってやろう。





「多分好き」





「・・・暇潰しぐらいにはなると思うぜ?社会勉強とか」

「・・・部屋、暑いからさ」

小さく付け足すみたいに。

「先輩の部屋で寝かせてよ」
「・・・部屋より暑くなっても知んねぇよ?」

 

3 >


夏・・・!
何て話を書いてるんでしょうかアタシ。

夏からの持ち越しネタだからな!(死んでこい)

大丈夫。
次回は冬です。

021216

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