あと数日待てば外がある

我慢我慢我慢

ずっと我慢してきた

だからお願い呼ばないで


ぼ く の な つ や す み   3


本当の子じゃない
なんてベッタベタ。
証拠があるワケじゃない、推測。だけどきっとそう。
俺がサッカーをやっちゃいけなかったわけはそこだろう。
左利きを直されて 喋り方も 一人称はささやかな抵抗
ずっと布団にくるまってれば叩き起こされ 熱があっても学校に行かされる お陰で小学校は無遅刻無欠席

ガッシャン!

目の端に何かが飛び込んできたけど反射的に目を瞑る。
クーラーの効いた室内にに慣れた肌に外の熱気を感じた。ガラスが割れてる。
階段を上る足音にハッと我に返って、割れた窓の外を見た。

「どうしたっ」
「・・・分かりません」

部屋に入ってきた父親が足元の石を拾った。多分それが投げ込まれたんだろう。
あーびっくりした。 俺はそれで終わり。
父親が窓の外を見るけど、犯人なんて残ってるはずもなく。
あ・・・
ドアがフリーだ。

「非常識な・・・姿を見たか?」
「ううん。俺が外を見たときはもう誰も居なかった」
「全く・・・」
「ちりとり取ってくる」

ドア クリア
廊下 クリア
階段 クリア
廊下 ・・・お母さん

「何があったの?」
「石を投げられたんだ」
「そんな・・・大丈夫?怪我してない?」
「うん、大丈夫。 ・・・お母さん」
「何?」
「ごめんね」
「・・・・・・」

廊下 クリア
玄関 クリア

家を飛び出して一気に走り出す。俺の部屋から見えない方向。
暑い。誰かさんのセリフみたいだ。
勢い余って靴が片方脱げた。焼けたアスファルトが熱い。
慌てて片足で戻って、ちゃんと靴をはき直して背後確認。

家 クリア

久しぶりに走ってちょっと辛かったけど精一杯走る。
遠回り遠回りをして、さっき伝言を受けた方へ。
眩しいぐらい真っ白な大きな紙に書かれた伝言。
駅前マック
ここで待ってるってコトで良いんだよね?

後戻りが出来る筈もなく、したいわけもなく、俺は死ぬんじゃないかってぐらいに走った。
夏場の持久走は危ない。

俺が掴み損ねたものを 三上先輩はあっさりと捕まえてしまったみたいだ。

 

 

「三上先輩のバカッ」
「・・・・・・それお前が言うか・・・」
「も・・・バカとしか言いようがないじゃないですかッ・・・」

正面の席にどかりと腰を下ろして机に伏せる。
痛い。あちこち痛い。
やっぱり数日でも体動かさないと鈍る。
ほれ、と渡してくれたカップを貰って水分補給する。水滴の浮いたカップの中で氷が鳴った。
冷たいだけで味がしない。多分ウーロン茶。

「はっ・・・あ、もー・・・何してんですか」
「だからこっちのセリフだっつの」
「イテ」

携帯で殴られた。 俺の携帯。

「・・・・」
「もー藤代は役にたたねぇしよー、いい年した親父達は帰んなって駄々こねるしよー」
「あっ、そ、そうですよっ先輩実家帰ったんじゃ」
「帰りましたー。俺こっちどうやって帰って来たと思ってんだよ、トラックだぞ!?」
「と、トラック」
「おうよ、佐藤と一緒にデコトラの兄ちゃんに頼み込んで」
「佐藤?って上水?あ、あいつも関西人なんですよね」
「あー、たまたま会ったからな。結局親父から許可貰ってねェから半家出だぞ。小遣い減ったらお前の所為な」

久しぶりに見た三上先輩は何も変わらない。
そりゃ、久しぶりと言ったって数日しか経ってないけど。
俺は
・・・俺は?
またあの人の言いなりに戻ってなかったか?

「あ、お前怪我なかった?」
「・・・ないですけど・・・危なかったんですけど」
「まー怪我ないならいいじゃん!」
「よくないしー」

ああでもホントに怪我しなくてよかった、
怪我してたらこの楽しい一瞬を逃してたんだ。
もうあとのことは何も考えたくないのに 
俺の頭は言うこと聞かない。

「・・・ばか・・・」
「笠井?」
「折角我慢してたのに」

これから俺はどうすれば良いんだろう。
家に帰りたくないけど最終的には帰らなくちゃいけない。もしかしたら説明もいるかもしれない。
お父さんに怒られるのはもう、慣れたから、いいんだ。
あぁ、そう言えばお母さん怒られてないだろうか。

「すんな」
「え・・・」
「我慢すんな」
「・・・・・・」
「お前の我慢してる顔嫌い」
「・・・だって」
「お前は我慢する場所を間違えてる」

夏が終わる。

お願い終わらないで

 

 


続きません(無責任)。

030830

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