生 徒 手 帳


「3年・・・」

あぁ、嫌なものを拾ってしまった。誰かさんの生徒手帳。
同学年さえ把握してないと言うのに3年の、しかも異性の生徒手帳。
再び地面に落として見なかったフリと言う芸当が出来ればいいが、自分の性格がそれを許さなかった。
3年2組、辰巳良平。

「どうした?」
「あ!先生丁度良かった!先生コレ落とし物!」
「あぁ、じゃあ届けてやれよ」
「ええっ!で、でもアタシ3年の教室なんて」
「別に教室って言ってないだろ」
「え?」
「辰巳ならサッカー部だから、出待ちに混ざれば?」
「そんな、せんせ〜!」
「ええいっ、俺は辰巳には関わりたくない!」
「・・・そ、そんなに恐い人なんですか」
「・・・というか俺はサッカー部に関わりたくないんだ。頑張れ」

先生教師失格だ。人間不審に陥りそうな春。




父親似の自分の性格を恨みたい。
まんまと来てしまったサッカー部グランド前、・・・お、女って恐い・・・!
この中に何割がサッカーのルールを知ってるのか知らないけど、女子の山がそこに出来ていた。
動物番組の実験みたい。ケースに入れた餌をどうやって取ろうかと動物が群がっている、そんな画。
わーん、まさか辰巳って人はその餌サイドの人間じゃないだろうな!
離れたところでポケットから生徒手帳を取り出して、失礼ながら証明写真を拝見させてもらう。 証明写真というのは大抵の場合人には見せたくないものだ。
アタシも貰った瞬間に写真の前に時間割りを差し込んだよ。
さてはて、辰巳先輩とは。 さっきは動揺も手伝って性別を確認しただけだったから顔が出てこない。
いいよね見ても、落とすのが悪いんだし。手帳を開く。

「・・・びみょ・・・」

・・・はっ、アタシは何げに暴言を吐いたかしら。
いや、いいよね。アタシの素直な感想よ。

「ん・・・?」

他に写真が挟まってる。
故意的に半分を切り取ったその写真に写っているのは、・・・男にしか、アタシの目には見えない。
えーと、生徒手帳に入れるのは好きな人の写真、ってのがお約束よね。男っ、てどうなの。
いや別に人それぞれだとは思うけどさ、クラスにアニメトレカ入れてる女子いたし。
・・・はっ、いや、アタシは何も見てない見てない見てない!
アタシの仕事はコレを返すのみ!

女の子達の嬌声が少し高くなる。休憩だか終了だかの時間なんだろう。
よし、頑張れアタシ!アタックあるのみ!言ってて虚しい!
サッカー部員が何人か秘密の花園から出てくる。
先頭は・・・あっ・・・写真の人・・・!うぬぬ、チームメイトに忍ぶ恋・・・じゃっねぇ!
辰巳先輩はとしばらく待つが、それらしい人は出てこない。
・・・ならばここはひとつ、アタシが恋のキューピッドになってやろう。
少し離れたところで写真の人を捕まえた。 ・・・視線が物凄く痛い。喜んで替わってあげるわよ、てか替わってよ。

「何?」
「あっ・・・」

実物だと更に迫力。
これホントに中学生かなぁ、漫画のキャラみたい。

「あ・・・あのこれっ、落ちてました!」

手帳を押しつけてアタシは一気に駆け出した。
視線が痛かったのとこの人のアップに耐えられなさそう(いい意味で見てられない)なのと、それから少しだけ見てしまった罪悪感。

 

 

「中西どうした?」
「落とし物だって」
「生徒手帳?」

三上が何気なく中西の手からそれを抜き取る。
手帳を開くと何かが零れ、後ろを歩いていた大森がそれを捕まえた。

「・・・何で中西先輩自分の写真生徒手帳に入れてるんですか」
「えー?何それ」

中西が振り返って写真を受け取る。
その瞬間ににやりと笑ったのを大森は見た。

「三上ィ、それ誰の手帳?」
「・・・あ、これ辰巳のじゃん」
「彼女俺に渡したってコトは俺の写真見たってコトよねえ?」
「・・・・・・・・・」
「・・・辰巳先輩可哀想に」




「はいv」
「・・・何だこれは」
「生徒手帳」
「・・・・・・」

部活中だぞとばかりに視線を送ってくる辰巳に中西は只笑う。
溜息を吐いて、胃を抑えたい衝動にかられた。

「誰の」
「辰巳の」
「はぁ?」

差し出された生徒手帳は窓の部分に中西の写真がはまっていた。
自分の生徒手帳にそんなことをした覚えはない。

「さっき1年の女子が届けてくれたんだけど」
「・・・は?」
「絶対勘違いしたよねぇ」
「お前っ・・・」
「はーいっ部活しよう部活ーッ」
「ちょっと待てー!!」

 

 


かなり昔に書いたので何ともですが。
ホントはこの先に辰巳が彼女に口止めするシーンがあったはず。
普通に夢書くつもりだったんだ、うん・・・

031230

 

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