何となく、携帯も財布も置いて外へ出た。
三上先輩愛用(?)の、大浴場の窓から外へ。

あまりにも、夜になる前の空が綺麗だったから、少し散歩をしようと。
そう言えば今日は七夕だっけ。


そ の 夜 。


「アレ」
「え・・・あ、椎名さん」

女の子一人で危ないなぁと思ったら、椎名さんでした。失敬。
もう小さい子も居ない公園で、一人。

「椎名さんこんな所で何してるんですか?」
「翼で良いよ。待ち合わせ。笠井は?武蔵森って全寮制だろ?」
「さぁどうでしょうね」
「アハハ。時間大丈夫?一緒に花火やんない?」
「花火?」
「そう」

見れば手に、花火の突き出たビニール袋。
そう言えば買ったままやってないのがあった気がする・・・やらないとなぁ・・・。

「イイならやりたい。花火は好き」
「あ、少し遠くまで行くけど。何処の公園も花火とか禁止だからさ」
「ですねー。多分大丈夫ですよテスト前ってみんな大抵何処にいるのか判らなくなるから」
「成程」

翼さん(・・・でイイよねぇ?)がけらけら笑う。
やっぱりこの人の笑顔は素敵だと思った。

「待ち合わせって?佐藤?」
「・・・そう。また遅刻」
「ふーん・・・俺待ち合わせとかしたことないからなぁ・・・精々消灯後部屋、ぐらいかな。寧ろ俺が遅れる方だし」
「そうなんだ。意外。・・・そういや笠井は一人なの?三上は?」
「・・・・・・・・・知らない。あー・・・言ってないから怒ってるかも・・・」

寮中を駆け回る三上先輩の様子が目に浮かぶ。
・・・いや・・・それはそれで愉快だけどね・・・

「・・・ほっとく」
「うっわ酷!!」
「いいの。俺に惚れたのが悪い」
「・・・確かに、あいつに惚れた俺が悪いか」
「何や姫さんが嬉しいこと言いよるーvv」
「うわっイキナリ湧くな!」

暗い中に突如金髪。ちょっとビビった。怖くはないけど。

「アレ、おまけ付きやん」
「おまけの方が大きいけど?」
「笠井・・・」

あ、しまった思わず。
何か言いたげな視線を無視していると佐藤が笑った。

「言うなぁ。タマはこんなトコで何しとんの」
「た、タマ?」
「飼い主は?」
「・・・言っとくけど俺の方が飼い主だよ」
「そら飼い慣らすの大変やな」
「コツさえ掴めばね。うちのノラは万年発情期だけどね」
「姫さんもやんな?」
「それはお前だろ」

あ・・・あんま想像つかない・・・
・・・翼さんは無意識みたいだけど、仲良いよなこのふたり。

「笠井も一緒に花火やろうって言ってたんだ」
「エ?」
「・・・お邪魔なら帰るよ」
「イヤ良いけどな。姫さんと二人でしっぽり線香花火何ぞやりつつ明日のプランでも練ろうかと思っとってん」
「線香花火なんか湿っぽくてやってられんってお前買わなかっただろ」
「・・・・・・そうだったかいな」
「明日何かあるの?」
「俺の誕生日やねんv」
「悪魔記念日」

「「エ?」」





多分今頃、三上先輩は俺の部屋から聞こえた着メロに激怒している頃だろう。
何でアイツ携帯置いて消えてンの!?って。
んでもって、誠二やらネギ先輩や等に当たってるんだ。頑張れ(他人事)。

「7月8日は」
「うんうんv」

口を開いた翼さんに佐藤がご機嫌で相槌を打つ。

「こんな奴が生まれちゃってゴメンナサイって世界中に謝る日なんだよ」
「何でやねん!!」
「そっか、俺も1月22日は悪魔記念日にしとこう」

セットになってる花火のテープやら袋やらを取りながら翼さんが笑う。
・・・コレは、3人でやるにはちょっと多いぞ?
でも2人でやる予定だったんだよね・・・何時間粘る気だ・・・

「・・・何だかんだ言って覚えてるんだよね、癪だけど」
「うん・・・従兄弟の誕生日は忘れてもあの人の誕生日は忘れません・・・・・・・・・・・・・・・死ぬかと思ったし」
「アハハッ何があったよ」

翼さんが笑いながらろうそくを佐藤に渡して、佐藤がライターでそれに火を点ける。
・・・異様にライター似合ってるけどイイコトにしよう。
数滴ろうを垂らして、ろうそくを立てた。微かな炎がちらちらと燃えている。

「・・・・・・って言うかイイの?」
「何が?」

「お寺で花火やって」

「あー、一応和尚には許可貰ったで。騒ぐなゆわれたけどまァ先ず無理やろな」
「ふーん・・・知り合い?」
「ちゃうちゃう、俺ココ住んでんねん。あ、間違っても息子とか孫とかとちゃうで」
「そうなんだ。大変だね」
「もー、朝早いのだけは勘弁して欲しいわー」
「いいんじゃねーの?朝練出れて」

1本目に火を点けながら翼さんが茶化す。
先端の紙を燃やして、火花が弾けた。

「あ、じゃなくて」
「じゃなくて?」
「結構居るからさ」
「・・・・・・・・・・・・何が」
「あ・・・何でもない」
「「・・・・・・・・・・・・」」

・・・あーあ・・・口滑った・・・・・・。





「笠井ッ!!」
「・・・うわ。エスパー?」

何だこの人。凄すぎて怖い。
何やってんの、三上先輩。

「・・・っ・・・だぁー・・・ったく、何処まで来てンだよ・・・しかも携帯持ってってねーし!」

その場に崩れるようにしゃがみ込んで、三上先輩が息を整えた。よかったぁと微かに聞こえて、何だか妙に照れくさい。
走ってきた三上先輩を見て、佐藤はさっきから腹を抱えて笑い続けている。

「来たら怖いなぁゆうとったトコやで・・・!?タイミング良すぎやんっ!!お前おもろすぎ!ホントはつけとったんとちゃうんッ!?」
「たまたま中西が椎名と笠井が一緒に居るの見てたのッ!!佐藤も居たっつーから取り敢えずここに来て見りゃビンゴだよ・・・」
「しまった。違う場所なら見付からなかったのにな」
「笠井ッ!・・・何やってンだよこんな妙なメンバーで」
「火遊び。三上もやる?」

翼さんが数本の花火を三上先輩に渡す。

「・・・導火線付いてるんですけど椎名さん」
「うん、ロケット花火だからね」
「・・・・・・・・・イジメだ・・・」

・・・すげぇ・・・佐藤が誠二並に笑ってるよ・・・本気で笑ってるよ・・・。
もう声も出ないぐらいウケてる。既にキャラ違うよ。三上先輩いつからお笑い芸人になったんだろう。

「っ・・・てそうだ、笠井、お前今週見回りだろ」
「・・・あらま」
「あー。寮ってそういうのあるんだ?ヤダねー、自分の生活リズム作られるの」
「まぁねー。いいや、誠二に頑張って貰おう」

花火再開。
赤い光や青い光をまき散らして、パチパチと歌う。

「ってーかロケットどうすンの」
「だから、先輩がやるの。手に持って」
「ふざけンな。商売道具に傷付いたらどうしてくれる」
「・・・顔?」
「・・・俺の取り柄はそこだけか?」
「だって天然ホストだもんね。日下さんは?」
「不可抗力。手出してきたのはあっち」
「ほらね、天然ホスト」
「・・・お前ゲイバー売り飛ばすッ」

「・・・お前等いつもそんな会話してんの?」
「まぁ主に」

翼さんに呆れられた。







花火やったとか言ったら誠二煩いだろうなぁ。花火云々って言うよりも、アイツ取り敢えず騒ぐの好きだから。
テストあって暫く大人しかったし、そのうち爆発するかも。

場所は変わって河原。
あの後和尚さんが出てきて、佐藤(・・・と、何故か三上先輩)にチョップかました。
やっぱり佐藤の笑い声が煩かったらしい。

「あれっシゲさん!?」
「・・・何やぁ、ポチ」

嫌いじゃないけど、ややこしいときに会った。
そんな微妙な表情で佐藤は笑う。
・・・風祭、か。コイツ苦手なんだとね。
成程、コイツがポチだから俺がタマ。そんで翼さんが姫さん?

「・・・何か凄いメンバーだね」

確かにね。

「・・・久し振り、風祭」
「あっ、うんっ久し振り!覚えててくれたんだ!」

・・・アレだけ掻き回されて忘れてたら俺武蔵森入れてないよ。

「・・・三上先輩も、お久し振りです」
「・・・おう」

例の水野嫁入り騒動(中西先輩命名)以来、何やら色々と心中複雑らしい。
あの時は三上先輩完璧悪役だったもんな・・・。
今となっちゃ笑い話だけど。イヤあの時既に俺としては面白かったんだけどね、客観的に見て。

「・・・あの・・・もう外出禁止時か」
「風祭はこんなトコで何してたの?」

真面目な奴。
面倒臭いから強制的に流せ。

「え?あ、・・・練習してたんだ」

風祭は手にしたボールを少し上げる。

「僕下手くそだから」
「・・・そんなことないと思うけど」
「まぁ下手は下手なりに頑張らないとねぇ?」
「翼さん・・・」

風祭は微妙に笑って見せた。

「・・・これってどういうメンバー?」

・・・・・・・・・どういうって。
4人みんなに視線を巡らせる。
・・・どういって。
直球で言うとホモ集団だよ・・・(禁句)



暫くしたら風祭は帰って行った。佐藤曰く、毎日練習してるらしい。
・・・武蔵森って結構誠二みたいなタイプの方が多いから、新鮮ではあるけどね。こういう奴。

「打ち上げやっちゃおーよ。置いててもしょうがないしさ」
「花火やるってわかてるなら持ってくれば良かった。買うだけ買ってやってないんだよね」
「花火なんかいつ買った?」
「・・・先輩と一緒に買いに行きませんでしたっけ?」
「行ったか?」
「・・・違う、中西先輩か」
「いつだよ」
「えー、いつだろうv」

そうだったそうだった。
未だ追求したそうな視線だったので逃げる。
・・・まぁ帰ってから中西先輩問い詰めるんだろうけどね。

「うっしゃ、三上コレ持っててな」

佐藤が先輩に筒状の花火を渡す。そのまま導火線に火を近づけた。
三上先輩は黙ってそれを佐藤に力一杯ぶつける。
いた・・・

「何してんだよ!」
「ココ平らやないから立たんかってん」
「向こうの方平らだろうが!」
「ほな任せた」
「・・・・・・・・・」

ライターと花火を持たされた先輩が佐藤を睨んで、仕方なくその場を離れた。
面白すぎだよあの人・・・。
何だかんだ言って、頼まれたら(頼まれてないか・・・)やるしね。

・・・ん?
ポケットに何か入ってる。
・・・・・・・・・・・・・・・あの人は成長しない。

「笠井どうかした?」
「・・・イエ・・・ポケットに不快感を感じて」
「はぁ?」
「そしてそれが何なのか判ってしまった上、何故で入ってるのか判った自分が今嫌で嫌でしょうがないです」
「は?」
「・・・あの人たまに人より早く起きると直ぐこういうコトするんですよ」
「何?」
「・・・要る?」

ああしかしこんなモノ人にあげるのもどうだろう。
ポケットから出したそれを渡してやると翼さんは見事に硬直した。

「あーあ・・・こんなもんポケット入れたまま過ごしてたのか・・・」
「・・・イヤ・・・・・・っていうか・・・・・要らない」
「あ、やっぱり?普通に考えてこんなもん要らないよね?返してくる」

それを返して貰って、三上先輩の方へ行く。
佐藤が何かしきりにちょっかい出して、その度に先輩が声を荒げていた。

「先輩」
「あ?」
「次やったら本気で別れるよ?」
「・・・・・・あぁ、やっと気付いたか」

殆ど反射的に体が動いて、手にしたそれを投げつけてやった。
それが何だか判ったらしい佐藤が、傍観者を決め込んで面白そうに先輩を見る。

「て言うか今ココで別れる?」
「七夕の日に不穏なこと言うな」
「そんなロマンチストじゃないでしょう貴方」
「ハイハイ。もうズボンのポケットには入れません」
「何処にも入れちゃ駄目」

この間学校で見付けたときとかマジで焦ったんだけど。

「・・・・・・丁度良い、佐藤誕生日プレゼントだ。1日早いけどやる」
「・・・俺誕生日にコンドーム貰うんなんか一生のうちに一度もないと思ってたわ」
「1つじゃ足りねぇならあるぞ」
「何で」

更にポケットから出してきて、強制的に佐藤に押しつけた先輩に思わず突っ込む。
何で持ってるんだよあの人は。

「何?使って欲しかったか?」
「嫌です」
「中西に貰ったんだけどよ、使ったらお前切れそうだから」
「・・・何で」
「味付きらしいぞ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死んじゃえ。
「うわっ酷!!」
「何騒いでんの」

翼さんがこっちに来て、佐藤が咄嗟に「プレゼント」をポケットに押し込んだ。
・・・使う気だ・・・。

「・・・ちょっと待って。何で三上先輩が佐藤の誕生日知ってんの?」
「あ」
「そう言えばさっきも佐藤住んでる場所知ってたし」
「う」
「・・・そんなに仲良かったっけ?」

翼さんの加勢で、2人で2人を見る。

「・・・・・・・・・こ・・・細かいこと気にすると禿げるぞ」
「禿げたら先輩の所為だからね」
「別に言いたくないなら言わなくても良いんだけどさー、シゲ妙に隠してること多いんだよねー」
「い・・・嫌やわ、俺がいつ姫さんに隠し事なんか」
「ホラ笠井も、気にするな! そッ・・・そろそろ帰るかっ!?いい加減渋沢が煩いぞ」
「───言えないんだ」
「そっ・・・そう言う訳じゃ・・・」

いつもはハキハキと言い過ぎるぐらいなのに、今日は口の滑りが悪いらしい。
あーもう、何なんだよあの人は。

「・・・な?だからゆうたやろ。隠し事してても痛いのは後やって」
「じゃあ言っていいのか?言うぞ?」
「イヤ・・・あっそうや!お前が話すンやったら俺もばれてまうやんか!」

「・・・そう言う相談は声出さないでやれよ」

あ。
さり気なく、翼さんのお怒りが。
ドンッとぶつかるように翼さんが佐藤を捕まえる。そのままずるずる引っ張って、川の縁へ。

「言わないなら川に捨てる」
「あ、それナイス」

逃走体勢に入った三上先輩のTシャツを掴んだ。
ぐいぐい引っ張って翼さんの横に並ぶ。

「簡単だよ。2択でしょ?」
「か・・・笠井さん・・・」
「わっ・・・わかったっ判ったから姫さん離落ち着け」

翼さんが眉をひそめて力を緩める。

「・・・姫さん、これだけはゆっとくで。
 俺は姫さんが一番好きや」

「え」

不意にした第3者(・・・第5になるの?)の声に、佐藤が慌ててそっちを向いた。
風祭と目が合った。

「・・・ポチ・・・・・・」
「わ・・・忘れ物して・・・」
「・・・そうか・・・暗いしはよ帰りや・・・」
「うん・・・・・・」

風祭は数歩歩いて、それから一気に駆け出した。







「ヨシダ ミツノリ、」

はーん、と翼さんが不満げに笑う。

「お幸せに」
「イヤーッ姫さん待ってッッ!!」

「・・・ノリック・・・あぁ、吉田な。 そいつが、俺の知り合いで、・・・・・・んで、佐藤に惚れたらしい」
「・・・ふーん・・・その吉田さんって何処の人?」
「!」

・・・どうやらそこが、三上先輩の一番触れたくないところらしい。

・・・・・・関西・・・・・・・・・

「・・・待って。三上先輩家は埼玉だよね?」
「・・・兄貴のな・・・。実家は近畿圏」
「だから家に電話するときは傍に人寄せないんですか?」
「・・・・・・・・・・」

「初めて見たときまさか森の10番やなんて思わんかったで。普通に関西弁喋っとったしな」
「ふーん、三上先輩が関西弁・・・・・・」
「・・・お前まかり間違っても藤代とかには言うなよ」
「何でですか?(面白いのに)」
「喋らされるに決まってンだろうがッ!俺は佐藤みたく一人で関西弁喋れねぇ」
「酷いいわれようやな・・・」

諦めたかのように翼さんが花火を始めた。
花火なんか忘れてた・・・。まだ後少し残ってる。

「あーもうばれたついでだから言うけどな、住所ノリックに教えたから」
「はぁ?何で」
「誕生日プレゼント送るんだと」
「んなん三上に聞かんでもメールで聞けばええやん」
「椎名居るから一応遠慮してんだろ?健気だねぇ」
「いつでも別れるよー?」
「姫さんそんなこと笑顔で言わんといて・・・」

しかも満面の笑みでな。
三上先輩も変なトコで照れ屋なんだよな・・・別に良いじゃん言葉ぐらいどうだって。



ポジションか(サッカーだけじゃなくてね)。
立場か。
何か似てる所為なのか。

何となく、判るんだよ。


「翼さん」
「笠井・・・」

多分離れてる分、思いは強くなるんだと。
だから、こんな夜に出掛けないような人なのに、今日、ココに。

「俺三上先輩の誕生日に何をプレゼントしたと思う?」

佐藤が何処かから空き缶を探してきて、河原に向かってロケット花火をセットする。
導火線に火を点けて数歩引いた。
コレ、近所迷惑な音するんだよね。高い音が木霊して、花火が飛び上がる。

「・・・何?」

「まぁ、想いにも依るけど」




「センパーイ、そろそろ帰ろうー。いい加減誠二が煩いよー」
「待てッ今度はぜってー向こう岸落とすッ!!」
「・・・何やってんだか・・・」

さっきから角度を変え位置を変え、ロケット花火を向こう岸まで飛ばそうと佐藤と先輩が躍起になっている。
俺と翼さんでふたり、蚊と戦いながら残った花火を片付けていた。

「あーっもう、虫除け持ってくれば良かった」
「かなり刺されましたもんね翼さん。まァ女性には優しくって事で」
「僕が優しくされたいところだね」
「A型の血が一番美味しいらしいけど」
「B」
「あれ?」

思わず笑うと翼さんは渋い顔をした。
俺達の手元でパチパチ燃える花火の微かな灯りで照らされた翼さんは、綺麗だ。

「時々自分が女だったら良かったなって思わない?」
「・・・思わない」

そんな否定的なこと、翼さんは続けた。

「俺は1回だけ思ったことあるよ。道を歩いてたら前を歩いてたカップルがいきなりキスしたとき」
「うわ」
「何だろねー、あーいうバカなことはしたくないけど。自分でも最近気付いたんだけど、俺結構独占欲強いらしくて」

三上先輩じゃないけど。

俺のモンだぞと言いたくなるときがある。

「・・・ふーん・・・・・・」
「んで全然関係ない話になるけどキスしていい?」
「はぁ?」
「ヤ、綺麗だったから」
「・・・ヤダ」
「あ、良いって言われてても困ったけどね」
「・・・変な奴」








・・・ホント変な奴だと思う。
でも多分、何処か似てるんだ。

多分、感情のカタチぐらいは同じ。

同じ様な不満と不安と気持ち抱えて。



「あらまー、えらい美脚になったなぁ」
「誰かさんがちんたらやってるからねー」

虫刺されの跡をわざと見えるように足を伸ばしてやる。
悪びれた様子もなく、シゲは笑った。

「何や複雑やー」
「何が?」
「キスマークみたいやん」
「アホか」
「ある意味キスマークやろ?」
「・・・ある意味でね」

すっと軽くキスをして、シゲの目が本気になる。
遊びの、本気。
冗談めかした笑みを浮かべて、不意に唇を落とされた膝がくすぐったい。

「・・・やっぱうちの方が良かったんじゃないの?」
「ええねん。姫さんが帰るの大変なだけやし」
「お前・・・」
「只隣に確実に声聞こえるけどな!」
「・・・絶対ヤダよ。大体未だ誕生日じゃないしね」
「もう後数時間やん」

後数時間。
数時間で、シゲの誕生日。
日が替わった時。

・・・笠井は何て言ってたっけ。


「・・・・・・誕生日プレゼント、要る?」
「えっ、な、何をいきなり」
「いやー、何となく」
「別にエエで。俺姫さんの誕生日何もやっとらんし」
「そう。なら良いけどね」
「・・・何くれる気やったん?」
「大したモノじゃない」
「何?」

肩を押されて、床に敷かれた布団の上に組み敷かれた。
何度もヤったけど、直前のこの空気がいつも落ち着かない。

・・・・・・ぼく
「え?」


「僕の未来」




笠井が言った

俺は結構忠誠誓ってるんだ
結構なんでも出来ちゃうんだよ
だから未来をあげてしまった

だけどそれは同時に、三上先輩の未来も貰ったことになるんだよ




多分僕は、そこまでシゲのことは想えてない。

「・・・7月8日だけな」
「姫さん・・・」
「7月8日だけ、お前にやるよ」


だからお前の「7月8日」俺にちょうだい。


「・・・エエで、貰ったるわ」
「今日は未だあげないけどな」
「エッ・・・ココまで来てお預けなん?」
「だってどうせ明日やるんだろ?」
「今日も明日も一緒やん。折角三上にプレゼント貰ったしなーv」
「・・・・・・・・・」

何貰ったんだよ。


忠誠誓う、何て。
んな大袈裟な。

どんな恋愛も形や色は違えど、そこに存在する意味は同じだ。
存在している理由は同じ。
ヒトはひとりじゃ生きていけないってヤツだ。

最低ふたり居れば、生きてけます。


「シゲ」
「んー?」
「今度『ノリック』紹介してよ」
「!! ッ・・・そ・・・それはな・・・」
「何で?いいじゃん。
 シゲは僕のだってちゃんと言ってやるよ」
「っっ・・・・・姫さん好きやっっ」
「うわっ」

飛びつくように抱きつかれた。
柔らかく伸びた金髪が首筋をくすぐる。

「っ・・・ってせめてがっつくなっ!!」
「それは無理な話やなぁ、姫さん普段ガード高過ぎんねん」
「別にっ・・・・・・・・・」


「姫さんが思っとるより、俺はちゃんと好きやから」


「・・・・・・うん」






どっちがプレゼント貰ったのか分かんなかった。

 

 


シゲちゃん御免。
取り敢えず謝ってみます。遅れた上に隠してみた。駄目じゃん。
っていうかシゲ翼で笠井一人称は問題ありすぎ。
もう言うことはありません・・・ていうか何も言えません・・・取り敢えず御免・・・・・・。
無駄に長すぎ・・・

020711

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