妄想癖があると気付いたのは、そんなに前の事じゃない。

まぁ名前を付けるなら妄想癖、ってレベルだと思うんだけど。
妄想癖持った知り合い居ないからねー、あっても誰も言わないだろうし。
変態なら居るんだけどな、三上とか三上とか三上とか。


 想 癖


舞台は俺の脳裏。
目を瞑って、そこを見る。

大抵そこにはソファがある。
もしくは椅子。座布団の時もある。

そこには客人が現れる。
と言うのは俺がそう考えるだけで、本人もどきが現れる。
俺の考える「その人」と言う人物が、出てくる。

その客人にあわせて、王座が代わる。





例えば笠井。
丁度2人座れるぐらいの、白くて柔らかいソファだ。
笠井は初めどっちか寄りに座っているけど、俺が1歩近付くと動いたわけでもないのに中央にいる。
もっと近寄ると笑顔を向けてくれるので、嬉しくなって俺は笠井の頭を撫でる。
離れると又、ソファの片側が開いてる。



例えば三上。
1人掛けのソファだ。
社長室においてありそうな、格好ばかりの革張りのソファ。
普段三上はそれに座らずに、ソファの向こう側にもたれ掛かって、地面に直接座っている。
時々椅子にどかりと座って、嘘の笑顔を作る。




例えば今何か喋ってる国語の教師。
旅館とかにおいてあるような、木の座椅子に申し訳ない程度に座布団らしい部分がついている。
それに座って、居心地悪そうにきょろきょろしている。
本を読み始めると落ち着いてくる。

勉強は嫌いじゃない。
皆が嫌いというテストも授業も、そんなに嫌いじゃないよ。
go in one ear and out the other
右の耳から左の耳。そして外だ。




例えば渋沢。
電車の車内みたいな。事実つり革までぶら下がっている(天井はないんだけどね?)。
渋沢は大抵そのつり革に掴まっている。いつでも受け入れ準備は出来ていた。
どことなく淋しい雰囲気でもあるのに、何故かそこは人が沢山居る気分。



例えば藤代。
公園とかに良くある、ミシンの糸巻きみたいなカタチした木で出来たヤツ。
ペンキがもう大分剥げかけて、あちこち木の肌が見えていた。
藤代はその上に立ったり座ったり、時々何処かに行ってしまう。




と言うわけで、この妄想劇は大抵授業中か寝る前布団に入ってから。
休み時間になって教室がざわめき始めると、途端に椅子も人もかき消える。
魚の群が散るみたいに、あっと言う間。




例えば根岸。
コレは実際ルームメイトが使ってる、無地の座椅子。倒したり起こしたりしすぎて、いい加減バカになってきてる。
既存のモノがあるからと言うワケじゃなくて、ピッタリだ。
色は、そう、難しい。実際のモノは青なんだけど、俺の頭の中では違う。
・・・そうね、お風呂の湯気みたいな温かい色。
ちょっと俺のボキャブラリーの中じゃ、あの色を表現する術はない。
傍まで行ってやると、無邪気に笑ってるかぐずって涙目かのどっちか。喜怒哀楽が激しくて面白い。




「なかにしー」
「えぇ? 何ー」
「何ってお前・・・次体育だろ!女子着替えっぞ!」
「あぁそうか」

更衣室なんてものがないので、男子と女子とクラス別れてお着替えです。
私立なんだし、更衣室ぐらいつけろっての。

「別に中西君だったら居ても良いけどねーv」
「ホントー?」
「中西ッ!!」
「じゃあ折角だし俺もこっちで着替えようかなぁ」
「良いよ!!」
「全然良くねぇ!」



例えばクラスの女子。
深い赤の細身の椅子に、綺麗な脚を組んで座っている。
背もたれの部分が妙に長くて、それこそ王座のようだ。
俺が近付くと、隣に同じデザインの椅子を置いてくれる。



まぁ口先だけよ。
俺は隣のクラスに行きたいから。



隣には



辰巳、

例えば辰巳。
意味不明、全くもって訳が分からない。
毎回椅子が違う、行動は一貫して同じなのに。




「た・つ・みv」
「・・・着替えの途中でくっついてくるな・・・」
「じゃあ脱がせてあげるー」
「着てるとこだ」

何ともつれないこの男、辰巳良平。
なんと表現しましょうか。
問題ミスで、どう頑張っても解けないクロスワード。
うんピッタリだ。

「じゃあ俺が脱がせて貰おうかな」
「お前に付き合って遅刻する気はない」

心底つれない。
何が楽しくて人生生きてるのか分かんない、鉄仮面。





辰巳の椅子は、大きかったり小さかったり固かったり柔らかかったり。
それは
俺の気分で変わる。



バーとかにおいてありそうな、デザイン的なスリムな椅子。
もたれ掛かるように座って、文庫本片手に読書中。
俺が近付けばすっと立ち上がって椅子を譲る。

少し鉄の部分が錆びついたパイプ椅子。
奥まで深く座って、文庫本片手に読書中。
俺が近付けばすっと立ち上がって椅子を譲る。

家具屋でセット組んでありそうな、お揃いのクッション付きのソファ。
片方だけ自分の領域、みたいに座ってやっぱり読書。
隣に俺が座っても気にしない。

先回りして俺が座った、柔らかく沈む1人掛けのソファ。
俺を見つけて、ソファの肘掛けに腰掛けて本を読む。
俺がそこで歌おうが脱ごうが気にしない。

 

気に食わない。
何となく、気に食わない。

ニコリともしない
ウルサイとも言わない
ピクリともしない
ヤメロとも言わない

 

なので

惹かれてみた。

 

「中西」
「え?」
「・・・え、じゃない。急がないと鳴るぞ」
「・・・あぁ、体育だ」

あと5分。
着替えるには十分だけど、外まで行くとなると5分でどうだろう。

・・・ていうか。

「・・・待ってるの?」
「だから急げ」
「・・・・・・じゃあゆっくり着替えよう」
「あのな・・・」

待てと言えば待たない癖に。
小さく溜息を吐いた男を笑ってやる。

 

妄想癖。
そうだろう。

白昼夢か現実か。
どちらかの辰巳にキスをしてみた。

 

 


所要時間が異様に短いです・・・。こういう感じのヤツは妙に時間かからない。
何となく辰中。辰巳殆ど出てないけど。
何となく中西。中西好きだ。
設楽と中西の絡みがやりたい・・・(爆)

020926

 

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