じゃんけんで負けた奴が適当に買ってきたパンやらジュース。
クラスメイトとクラスメイトじゃない奴とそれから根岸と

最後に俺がいれば十分っしょ。


策 士 策 に 溺 れ た り   2


「中西が女子棟で見付かったって」

「去年のミスコン1位と付き合ってる」

「先生とだろ」

「朝帰り新記録」

「あれだろ、音楽室で」

「1年の男子強姦とか」

エトセトラ エトセトラ ・・・

 

「ロクでもないねェ」
「全部お前のことだけどな」

クラスメイトは鼻で笑って空の紙パックを弄ぶ。
べこべこと鳴らしてるのに顔をしかめ、中西はその紙パックを握り潰してやる。勢いよく入ってきた空気に彼はむせた。

「んで、どの辺がホントなの」
「うーん大体全部?」
「えっ」
「全部デマ」
「・・・・・・」
「俺はネギっちゃん一筋ー」

ねー、とばかりに中西は根岸にくっついてみせる。
食べるのが遅い根岸はまだパンを抱えたまま、特に抵抗する様子はない。

「中西ー・・・何やってんだ」
「三上こそどうしたの」
「保健貸せ、保健」
「ないのー?」
「誰かに貸したまま帰ってこねぇんだよ」
「ふーん・・・大迫俺の机から保健とって」
「自分でやれよ・・・」

それでも彼は腰を上げて中西の席に向かう。
まもなくして戻ってきた彼は、呆れ顔で教科書を三上に渡す。

「返しに来る手間省けたな」
「・・・お前・・・」
「・・・あれ?」

三上亮ときちんと記名された教科書がそこにはあった。
因みに渋沢が記入しているのでかなりの達筆だ。渋と書きかけの文字が横線で消されていなければ尚良かった。

「返せよな・・・」
「あーうん今返す返す。 ・・・・・・あぁそっか、今までは辰巳に借りてたから」
「・・・何、お前らホントに切れたわけ?」
「つーか繋がってなかったしー」
「さいですかー。そのうちお前から抱いてvとか言うんじゃねーの?」
「バーカ、有り得るなら逆v」

三上を適当にあしらって中西はさっさと追い返す。
ふと視線に気が付いて、クラスメイトを睨み返してやった。

「何よ」
「いや・・・」
「いっとくけど辰巳は飽きただけだかんねー、元から何もないんだから」
「辰巳も可哀想になぁ、こんなのに遊ばれて・・・」
「何?遊んで欲しい?何なら今保健室開けるけど?」
「結構です。お前にどんな権力があるんだよ」
「企業秘密」

ねー、とまたまた根岸を抱きしめて中西は背中に貼り付いた。
話を聞いていなかった根岸はジュースを飲みながら適当に相槌を打つ。

「はー・・・んで最近お前また機嫌悪いんだ」
「・・・何よそれ」
「だって根岸が言ったんだよなぁ、辰巳が起こすから機嫌がいいって」
「あー、うん、辰巳の人が良いだけだと思うけどね」
「だってネギっちゃんえげつないんだよー、いきなり鳩尾とか息止めたりとか」
「・・・根岸・・・お前命知らずな・・・」
「えー、それは最終手段だよ。辰巳にやられても怒んないくせに」
「辰巳はそんな酷いコトしないもん。・・・いや・・・いっそ酷いけどさ・・・」
「は?」
「・・・・・・こんないい男がベッドで誘ってるのにその気にならないって酷い話じゃない?」
「お前がヒデェよ」

クラスメイト達は適当にゴミをまとめながらけらけら笑う。
根岸は何とも複雑そうな表情で、それでも中西の顔は真後ろにあるので表情が分からない。

 

 

「それでいいのか?」
「なにそれ、そんな天国に一番近いみたいなセリフ」
「懐かしいな・・・」

のろのろと着替えながら根岸は呆れて溜息を吐いた。既に更衣室には誰も居ない。
既に部活の準備の整った中西はパイプ椅子に座って、ぼんやりと予定表を見ている。

「だからさー、辰巳なんかどーでもいいんだよー。卒業までの暇つぶしってゆーか。そりゃまぁ好きか嫌いかで言えば好きだけど」
「・・・別に中西が良いなら良いけどさ」
「良くないって顔で言わないでくれない?」
「俺はお前みたいに顔作れないもん」
「そっちのが良いよ、ネギは。俺が一緒にいたげるもん」
「卒業まで、ね。一緒にいたげるよ」
「・・・ネギっちゃん最近反抗期?」
「そうらしい」

ふーん、と適当に流して中西は予定表をさかのぼる。
辰巳から離れてから1週間も経たない。

「・・・・・・女々しい」

違う、そうじゃない。
離れてからではなく離れるまでを数えるべきだ、そうしてきたんだから。
しかし中西の手元の予定表では全然足りなかった。先月の予定表がそこにあったって足りない。
一方的に付き合いを突きつけてから。

「・・・ホラ根岸、シャツ出てる」
「入れたー!」
「出てるんだってば。桐原煩いよ」
「ナカに言われたくねーよ」
「ほっといて頂戴な」

根岸の準備が出来たのを見て、中西は笑いながら立ち上がる。
そう俺は根岸に生きる。卒業までのあと僅か。
根岸が先に更衣室を出た。
出たところで立ち止まったので、不審に思うとそこには辰巳が立っている。

「・・・根岸、中西借りる」
「え、うん」
「ちょっと」
「じゃあ俺先行ってるー」

うんじゃねーよ、
心の中で悪態を付く中西をきっと予想していながらもふたりはそれを無視し、根岸は更衣室の外へ、辰巳は中西を連れて中へと別れた。
辰巳はロッカーに自分の荷物を置きに行き、中西なんていないようだ。

それが、その動作が。
腹が立つってゆってるの、分かんないかな。
それとも分かってやってるのか。

「・・・何か用?」
「あのな、俺は本はひとりで読みたいし、邪魔されるのだって嫌いだ」
「・・・・・・」
「借りたものを返さない奴も嫌いだしふらふらして安定感のない奴も嫌いだ」
「つまり俺のことが嫌いだって言ってるわけだ」

着替えながら辰巳は話し出す。
中西はこの際だから聞いてやろうと、さっきまで座っていた椅子に腰を下ろした。
根岸は側面が見えていたけど、辰巳は背中が見える。

「適当だし人の話は聞かないし寝起きも悪いし」
「ハイハイそれで?」

自覚症状。
中西はそれを無視する。自分が苛ついているという事実。
だから何、と言いたい、言えない。
辰巳は根岸と違って着替えるのが早い。それは予定表何枚分か、毎日のように見てきたから知っている。
そしてさっさと着替え終え、辰巳はもう外に出るだけになった。

「・・・・・・」
「何?」

尋問口調。
辰巳相手に使ったことはない気がする。
答えてくれるからだ。こちらが欲しい情報は、大抵に。一つだけ譲らずに喋ることはなかったけど。
今それが聞けるはずだ。

「・・・・・・後にするか」
「は?」
「だって、集中できなくなりそうだし」
「言われない方が集中力欠けるっての!」
「俺は平気」
「・・・・・・」

こういうキャラだっけ、
辰巳を睨むと、お前の所為だと言わんばかりに笑われた。

 

「好きだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何つった」
「2度と言わない」

そりゃ
集中できやしない。

「・・・嫌い」
「はいはい」
「辰巳なんか嫌い」
「それは先週聞いた」

辰巳はそのまま更衣室を出ていく。
ドアが閉まり、しばらく経ってから中西はそこを飛び出した。

「怪我したら保健室運んでね」
「舐めときゃ治る」
「辰巳が舐めるんだよ」
「・・・前言撤回」
「させません」

 

 


溺れたりのたりは何しちゃったりして、という「たり」。
辰巳のセリフが難産でした。
取り敢えず辰巳も中西のことが好きだと言うことが分かってお母さんも一安心です。

根岸が好きだー!!
「卒業まで」はどっかの話から受けてます。どれだっけ・・・(おい)
文百の「鬼ごっこ」かな。

030908

 

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