「三上君のアドレス教えてくんない?」

誰が教えるかこの子悪魔!
いっそのこと言ってしまえればいいのに。三上は可愛い可愛い後輩の男と付き合ってるから女にはキョーミねぇってよ。


隣 は 何 を す る 人 ぞ


「えっ、三上くんと友達なのっ!?」

────だから、そのパターンはもういいって! 思わず顔に出そうになったのを必死でこらえる。この子はまだましだ、俺がサッカー部だと知っていただけだから。こないだなんか俺が三上と仲いいの知ってて近づいてきてたもんな、繊細な俺はブロークンハート、大ダメージから復活したばかり。
神様、世の中は不公平に出来てるって彼女たちに教えてあげて下さい。君たちが好きな男には、どうしても譲れない大切な人がいる。それは

「────三上、あー見えてマザコンだぜ」
「えー?」
「マジマジ、しょっちゅう家に電話してる」

ああ俺ってなんて親切。
近藤先輩〜?あんまり悪口言ってるとチクりますよ?爽やかに寄ってきた後輩は、人を魅了する笑顔を向ける。バカ野郎、人の思いも知らないで。

「後輩?」
「どうも、笠井です。近藤先輩のお友達ですか?」
「あ、うん…少し話してただけ」

先制攻撃!近藤は瀕死に陥った!

「じゃあ三上先輩狙いで?」
「……」
「そっか…顔だけじゃわかりませんもんね。…近藤先輩言いました?」
「えっ…何を?」
「……あのね、三上先輩ホモなんですよ」

愛の隔壁は障害となり得るか?近藤は今日初めてフェンスの存在が有り難く思った。三上のためにも。
ガチャン、とフェンスを鳴らして手を突いて、可愛くない後輩は可愛いふりをしたまま、脅した。

「俺に勝つ自信があるなら受けて立つよ」

宣誓!俺は生涯、三上の趣味を疑うことを誓います!

 

 

「……お前…なんだか哀れだな」
「顔見るなり人を憐れむな」

思わず溜息まで吐くと叩かれた。どいつもこいつも、人の気苦労がわかってない。 いいからさっさと終わらそうぜ、三上は教科書を繰りながらプリントと見比べる。苦手な国語を誰かとやるつもりで談話室来たのに誰もいなかったらしく、わざわざ近藤を呼び出したのだ。面倒くさい男。近藤から見れば三上は至って普通で、言われてみればかっこいい方かな、そんな程度。どうしてこんな奴がもてるのかわからない。聞く話によれば部内にも思いを寄せる奴がいるとかいないとかで、男女問わずって、なんで俺こんな奴と仲良くなったんだっけなんて考えてしまう。

「……お前がホモだって笠井が言い触らしてっぜ」
「はぁっ!?」
「一応相手は選んでるらしいけど」
「げぇ…あいつ余計なことは言ってねぇよな?」
「……多分…」

きつくきつく、口を閉じるように睨まれた。笠井の気持ちはわからない。何となく、近藤を敵視していることはわかる。

「なぁお前ちゃんと笠井しつけてる?すぐ俺に噛みついてくるんだけど」
「俺だって噛み跡だらけだ」
「そういうのは聞いてねぇ!」

しかも笠井が噛むのかよ。本当に本当に嫌になる。どーしてこんなのと。

「いや…まぁ俺も聞いてみたことあんだけどよ」
「何て?」
「なんかなぁ、一番かなわねぇのは近藤なんだと」
「は?」
「だから……『一番』のポジションならどんな手使ってももぎ取れるけど、近藤のポジションにはどうあがいてもなれねえからって…」
「あ、ハイ羞恥プレイをさせてすいません」

照れながら語る三上は正直言って気持ち悪い。ついでにちょっと嬉しい自分も。

「…三上きゅんv笠井くんとワタシ、どっちがしゅき?v」
「あ、俺お前のそーいうキャラ好き」
「嬉しくねぇよ」
「どっちが好き?」
「「……」」

ズン、と三上の背中に体重。近藤が少し顔を上げれば、笑っていない笠井と目が合う。

「……笠井最近機嫌悪いな」
「ええちょっとばかりありまして。ねっ、先輩v」
「……」

ちらりと三上はこっちを見て、近藤は談話室を見回した。3人以外誰もいないのは、根岸が辰巳を捕まえてホラー映画大会をしているからだろう。意外にもホラー大好きな根岸は、夏になると生き生きする。因みに辰巳を捕まえるのはあまり好きではない癖に平気なふりをするからで、中西・辰巳・根岸の力関係の頂点は根岸であることが最近判明してきた。

「…俺ちょっとトイレ」
「おぅ」

談話室を出るなりイテッ、なんて聞こえてきた。あれか、噛みついてんのか。
できるだけのんびり本当に用を済ませて、ゆっくり談話室に戻る。笠井の姿はなかったが、三上が机に突っ伏していた。リアルホラーだ。

「……近藤」
「…何」
「俺って、何がそんなにいいの?」
「……お前は…」

────俺が説明すんのかよ。今更改まって言うのも嫌で、そのまま口をつぐむ。どう言えばいいのかもよくわからない。

「…笠井に何したんだよ」
「…お前と映画見に行ったじゃん?」
「席なくて別の観たときの?」
「そう。…俺そっち笠井と見に行くって言ってたの、忘れてたんだよね」
「…………巻き込むなッ!」
「ゴメ〜ン」
「ざけんなっ!」

畜生ッ────…神様仏様中西様っ、俺に3次元の彼女をっ!
廊下から悲鳴が聞こえてきた。ホラー映画大会は大成功のようだ。

 

 


友情話を書くはずがどう考えても笠三に。いえ一応三笠なんですけどぉ。

060611

 

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