「なぁ、待てって・・・」
「はーい痛くないですよーv」
「胃が痛いっての・・・」


l o v e s i c k ?


「キャプテン」

談話室に入るなり笠井は渋沢を探す。
勿論お目当ての人物は直ぐ見付かって、向こうもこっちに気がついた。

「どうした」
「三上先輩が風邪引きました」
「・・・やっぱりか。何か可笑しいとは思っていたが」
「自分じゃ言わないけど多分熱あります。体温計何処にあるか知りませんか?」
「・・・中西の部屋、か?この間辰巳騙そうとしてたから」
「あぁ、代わりに辰巳先輩が胃痛を訴えたんですよね」

渋沢が苦笑して笠井の頭を撫でてやる。

「俺は初江さんに伝えて三上の様子を見に行く。お前は中西・・・いや、辰巳の部屋かな。体温計見付けてこい」
「はーい」

三上先輩が風邪ッ!?と喜んだ声の藤代をたしなめて渋沢は談話室を出ていく。
笠井もそれに続いて部屋を出て、階段を上がっていった。まず向かうのは、一応、中西の部屋。
部屋のドアは開いていたので中をそっと覗き込む。居るのは彼のルームメイト・根岸だけだ。

「あ、笠井」
「根岸先輩、中西先輩いませんよね?」
「いないねー」
「体温計の場所知ってます?」
「うーん、一緒に持っていったんじゃないかなぁ」
「ありがとーございましたー」

歩き出して笠井はふと考える。
一緒に、って何だろう。
胃薬でもセットにして持っていったんだろうか。冷やかしのつもりでも冷やかしにならない。
辰巳の部屋は一人部屋の筈だった。 最近では中西の着替えから教科書までおいてあるとの噂。
今まで近寄りがたかったドアの前に立ち、ノック。返ってくるのは探し人の声だ。

「だれー?」
「笠井です。中西先輩いますよねー」
「いますねー」
「体温計持ってますか?」
「あー、体温計ねー。持ってるよ。今いるの?」
「出来れば」
「ち、ちょっとまて中西ッそのカッコで出て行くな!!」
「・・・?」

間に入った辰巳の声に笠井は顔をしかめる。
今日の朝出会った中西の格好は別に可笑しくなかった。センスのいい彼に限ってそれはあるまい。
ならば裸か、もしや取り込み中だっただろうか。

「いーじゃん別に、裸じゃあるまいし」
「いっそ裸の方がましだ」
「やーん大胆v脱ごうか?」
「やめろ」
「どっちよ」

どうも裸でもないようだ。取り込み中だったかどうかは分からない。
辰巳先輩ってこんな面白い人だったかな、少し考えていると、辰巳をあしらって中西が来たらしい。
ドアが開いたので少し体を引く。

・・・・・・白衣の天使。

思わず強引にドアを閉めた。
しばらく待って、再びノック。

「はーい」
「・・・中西先輩いますか?」
「ご指名ですかー?」
「・・・・・・体温計指名しまーす」
「笠井もつれないなぁ」

笑い声に続いてドアが開く。
そこに立っているのはやっぱり白衣の天使だ。もっとも、天使と言うにはほど遠いかもしれないが。

「・・・何てカッコしてるんですか中西先輩・・・」
「何って、看護婦さん」
「・・・何でそんなカッコしてるんですか?」
「イヤ、今日って看護の日だから。辰巳を看護してあげようかなぁなんて」
「余計なお世話だ病原体」

ドアが大きく開いて辰巳が中西を部屋に引き込んだ。
代わりに差し出されるのは体温計。

「・・・・・・」
「・・・いや、俺がやれっていったんじゃないぞ」
「あぁ、ごめんなさい、そう言う意味じゃなくて」
「・・・どういう?」
「『服着てて良かったな』」
「・・・・・・・・・」

辰巳が顔をしかめた。胃が痛そうだ。
その後ろで中西が脱ぎはじめ、すかさず振り返って頭を叩く。

「(・・・コント・・・・・・) ・・・じゃあ体温計借りていきますね」
「ああ、出来れば二度と中西に渡すな」
「(何されたんだろう・・・)」
「あ、笠井、誰か風邪でも引いたの?」
「・・・・・・三上先輩が」
「あぁ、昨日遅くまで風呂で遊んでたみたいだからね」
「・・・・・・」
「笠井は責めてないよ」
「俺が責められたら割に合いませんよ!」
「よしよし。でもまぁ折角なので看護婦さんごっこしない?」
「しません」
「だって看護の日だよ〜?」
「関係ないです」
「ピンクがあるんだ」
「遠慮し・・・」

 ・ ・ ・ 

「キャプテン、今の叫び声ってタクですよね」
「・・・人選間違ったか・・・」

 

 

 

 

「帰れ」
「辰巳と同じこと言わないでよねー」

体温計片手に中西がにやりと笑う。
三上のベッドに腰掛けて、惜しげもなく出した足をゆっくり組んだ。

「・・・下何穿いてんの?」
「ヒミツーv」
「見たくて言ってんじゃねェよ」
「はーいお熱計りまーすv」
「俺よりでかい看護婦さんなんかイヤだ」
「文句言わなーい。こんだけ美人なんだから十分でしょ、病院に行ったらミニなんて見れないよ〜?」
「だからって何でお前の足を拝まなきゃなんねーんだよ。悪夢見そう」

依然として笑いながら、中西は三上の着ていたシャツを少し引く。
三上がその手を振り払って自分で体温計を脇に挟み込んだ。

「つーかお前のサイズのそれが何処にあったんだよ」
「昔ちょっと」
「・・・・」
「儲かるよー?」
「聞かない。笠井どうした?」
「・・・あー・・・ちょっと、ね。やっちゃった」
「はぁ?」
「いや、思いの外あっさりと」
「何が」
「うん、今辰巳がなだめてる」
「何やったんだよお前!!」
「はーい病人は落ち着きなさーい。ガタガタ抜かすと座薬にするよ?」
「・・・・」
「美人看護婦さんが座薬いれたげようか〜?」
「脱がすなっ!!」

布団をめくられて捕まれた服を三上は必死で握りしめる。
中西は叩かれた手を握りしめて痛い、と呟いた。

「看護婦さんに怪我させてどうするの」
「怪我したかよ」
「心が傷ついた」
「俺が傷心だっつの」
「・・・あーあ、辰巳も三上もつまんなぁい。藤代ででも遊んでこよっかなー」
「そんなこと考えるのお前ぐらいだな・・・」
「何で?良くない?俺と笠井で藤代にせまるの!」
「何で笠井がまじってんだよ!」
「よし、それがいい、そうしよう。あ、でも渋沢の方が面白いかな?」
「もうどうでもいい・・・」

電子音に反応して三上は体温計を取り出す。8度5分、呟いて溜息を吐いた。

「・・・風呂で長い間遊びすぎよ」
「若気の至りです」
「まぁ寝てなさい、そのうち笠井も立ち直るでしょ」
「だから何したんだよ!」
「あーもー煩いなー、笠井が三上には言うなって泣いて頼んだんだから言えるワケないでしょう。良いから寝てな?」

しゃきーん。
自分の口で効果音をつけて中西が取り出したのは、注射器。中身は毒々しい色の水飴じゃない、透明な液体だ。
ちょっと力を入れるとドラマなんかでありがちに、針の先の方から少しだけ液体が飛び出した。

「え・・・な・・・中西さん・・・あの・・・」
「うん大丈夫、人体に悪影響がないのは実験済みだから」
「お前が悪影響及ぼしてんだよッ」
「だから煩いって」
「や、やめっ・・・・」

 ・ ・ ・

「・・・キャプテン、今度は三上先輩っスね」
「俺はちょっと出掛けてくるが藤代は断じてそこを動くんじゃないぞ、絶対に動くな。いいか、中西に何をされても動くなよ」
「そんな、キャプテンーー!」

 

 

 

 

「・・・・」

頭痛で目が覚めた、何て絶対に可笑しい。
寝たままなのに立ちくらみのようにぐらぐらする視界がやっとおさまって、部屋の天井の角が平方に見えるようになった。
恐る恐る腕を見てみるとプーさんの絆創膏。どこから出してきたのか知らないがその愛情に泣きたくなる。
事実を認めそうで一生めくりたくないが、直ぐ様にでも剥がしたい。

怪しげな薬が功を成したのか、熟睡していたらしいお陰で熱があるようなだるさはない。
体温計を探すが枕元にはなく、この部屋にあるだろうかとベッドから体を起こす。 ・・・と。
視界に飛び込んできたもの。

床に転がされた看護婦。

おまけに手と足は縛られている。ご丁寧なことに後ろで縛られた手の下、スカートはギリギリ中を見せない。
まさか中西、本物さらって来ちゃいないだろうな。
恐ろしい考えが脳裏をよぎり、三上は緊張して傍へ寄った。少し見下ろして、それから顔を見に向こう側へ回る。

「ッ・・・・・・」

もう中西の所持品に突っ込むのはやめておこう。
笠井、なんてネームプレートまで胸に付いている。特注の匂いがした。
三上はそっとしゃがみ込んで顔を覗き込む。
笠井だ。

「・・・・・・笠井?」

読んでみるが返事はない。メインディッシュは規則正しい寝息を立てて夢を見ている。
ふと見れば、笠井の腕にはキティちゃんの絆創膏。きっとある意味でお揃いだ、理由なんかが特に。

「・・・笠井」
「ん・・・」

頬を叩いてやると少しだけ反応が返ってくる。
寝返りをうとうとしたが縛られた手がつっかえてそれが出来ず、ごく自然に同じ位置に戻ってきた。

ご め ん  なさい 。

合掌。

「いただきますッ」

 

 

 

「藤代大変だ!笠井が服だけ残して消えちゃったよ!」
「えぇっ!?な、中西先輩それホントですか!?」
「ホントだよっ、ほらっ、さっきまで笠井が来てた筈の服がこんなトコに!」
「うわーっ!!タクー!!」

「中西・・・」
「遊べるところで全部遊ばないとねェv」
「・・・・・・」

最近で一番胃が痛い日だった。

 

 


ご め ん な さ い !
うっふふ、5/12は看護の日らしいです。だった気がする。違ったかもしれない。
一番下の妹の誕生日です。
中西が好きだー

030512

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