溶 け た ア イ ス


「あのさー、何で煙草吸うの?」

そう言うから、やめた。
今まで何人かに聞かれたことはあったけどむかついただけで、やめるなんて思いつきもしなかった。
彼はやめろとは言わなかったけど。

「・・・じゃあ根岸は何で転けるの?」
「し、知らないよ!」
「それとおんなし」
「・・・同じ?」
「そう」
「・・・違うと思う」

煙草を吸うときは窓の下。
いつもは机の下においてある灰皿代わりの空き缶片手に煙を吐き出す。

「それ聞いてどうするの?」
「あぁ、別に?カッコつけてるのかなぁって思ったから」
「・・・・・・」

長所かつ短所。
日本人らしい考え持ってる癖に、日本人らしくなく本音を吐く。
核心突くからタチ悪い。

「・・・カッコつけてるわけじゃないよ、意味ないもん」
「だよねー」
「て言うかカッコつけなくてもカッコいいので」
「自分で言うなよ!」

それは少なくとも認めると言うことか。

このルームメイトは多分頭が悪いのだ。
最近そう思うことにした。

「・・・根岸は何食ってんの?」
「アイスー」
「最近ずっとそれ食べてるね?」
「点数集めてMD当てる!」

頭だけじゃなくて運も悪い彼には無理だろう。アイス買うよりMD買った方が安上がりかもしれない。

「中西もいる?」
「・・・一口ぐらいなら手伝ったげてもいいよ」

フローリングの上をぺたぺたと足音を立てて歩きながら、アイスが歩いてくる。
自分の前にしゃがんだルームメイトの手を見た。アイスのカップに浮いた露で少し濡れてる。

「はいあーん」
「あーん」

アイスで冷たくなったスプーンが歯に当たって一瞬不愉快。
運の悪いこいつはコンビニでアイスを買ってもスプーンを入れ忘れられることが多い。
前に弁当買ったときにストロー入れられてたし。

「・・・これおいしいの?」
「えー、うまいじゃん」
「微妙」
「中西絶対味音痴だよー」
「・・・そんなこと言われたの初めてだよ。ネギが味音痴何じゃないの?」
「ああ、言われたことある」
「・・・じゃあネギが味音痴だよ」
「うまいのになー」

またスプーンでアイスをすくってアイスを口に運ぶ。
不味いとは言わない、おいしくない。俺なら商品化しない。

「・・・根岸って溶けたアイスみたい」
「えー?何それ」
「流れに身を任せてって感じ」
「あはは、それ中西っしょ」

・・・・

・・・・

火を点けたばっかりの煙草をアイスに押しつけてやった。
馬鹿なルームメイトの悲鳴も聞かず、火を点けてない煙草も突き刺してやる。

「煙草やーめよ」

俺は溶けたんじゃなくて溶かされたんだ。

 

 


ずっと前に書いてて忘れてたのでもうよく分からない。
何考えてたんだ自分よ。

030724

 

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