死 別


「中西?」
「ん・・・ッ」
「・・・・」

手を思いっきり振り払われ、どうしようかと辰巳は悩む。
片手には鳴り続ける中西の携帯。
非通知や登録されてない番号なら辰巳だってほっとくが、ディスプレイに表示されているのは『家』。それも2度目の着信だ。

「中西、いいのか」
「やだ、出ない」
「・・・・」

「・・・じゃあ、辰巳、出て。分かったからって言って、落ち着いたらかけ直すからって」

初めて聞いたその声は、多分鼻声だった。





「・・・・」
「どうもー」

受け取った缶ジュースを火照った目蓋に押しつけた。
物珍しげにこっちを見てくる辰巳に気付いてそれを投げようとする。
慌ててその手を押さえた辰巳をじっと見上げた。少し赤い目に辰巳が怯む。

「・・・・・・鬼の目にも涙」
「失礼な」

肩をすくめて、中西はまた缶を目に当てる。
ベッドの上の中西が妙に幼く見えた。普段大人びているかと思えばこの様子、年相応と言う言葉が使えない。

「ヤな予感はしたんだよね、何か言われた?」
「・・・帰る準備するようにと伝えてくれと言われただけだ」
「多分ひい婆ちゃんの葬式だと思うんだ。もう寝たきりだったしボケてたけど」
「・・・・」
「て言うか、まぁ生きすぎなんだけどね」

中身が炭酸じゃないのを確かめて、中西は軽く缶を振る。

「・・・何か、分かっちゃうんだよなぁ、」
「・・・・」
「家帰るのめんどくさいな、しかも葬式の為だけに帰るってヤな感じ」
「・・・霊感とか、そういうの?」
「いーや、そういうのは何も見たことない。金魚が死ぬの分かったことあるけど」

ジュースを口に含むと少し温くなっていた。頑張って飲んでみるが体が受け付けない。
どうしようかと少し考え、結果、中西はベッドの淵で手を離す。
当然缶は引力に従い、床にぶつかって体を倒した。残っていた中味が嚥下するような音をたてながら吐き出される。

「あっ、何やってるんだお前!」

辰巳が慌てて缶を立て、拭くための何かを探す。
洗濯したてのタオルを見付けた辰巳を中西は呼ぶ。

「辰巳」
「何だよ」



「死んでも別れないからね」

 

 


えーと・・・あの・・・
死んでも別れないと言うのは死別しないと言う意味であって
しつこいのではないですよ・・・?

よくわからない・・・

030724

 

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