0 1 : 君 に あ げ た

「そんなのもう忘れた」

ふてくされて顔で笠井はそう一言。
そりゃ、お前は女じゃねェし結婚できるわけでもねェから、あれがそう重要なものでもないと思うけど。

「あっそうですか」

そんで、そのまま。




「バカー?」
「うるせェ・・・」

中西は三上の頭を叩いてけらけら笑う。
ずるずると机に崩れていく三上を最後に強く叩いて、空になったグラスに酒を注いだ。

「どうしたの今回は」
「・・・・・・」
「んー?」
「今回は悪いの俺じゃねェよ・・・」
「ふーん、じゃあ笠井が何したの」
「・・・・・・あげたの、知らないとか言われた」
「何を?」
「・・・・・・」

ゆびわ、
小さな声で三上が言うのを、中西は辛うじて聞き取る。

「・・・指輪なんかあげたんですか」
「大分前な・・・」
「ふうん。そんで笠井がなくしたの」
「むかつく〜〜〜〜〜」

あっはっは、
ふざけた態度で中西が笑った。
思い切り顔をしかめた三上はじっと中西を睨む。

「何だよ、」
「うふふごめんねぇ〜」

カツン、と机に置かれたのは飾り気のないシンプルな指輪。
三上が殆ど反射的にそれを手に取る。

「ごめんv」
「・・・中西さん?」
「ごめんってば。つーか一目見て分かるの?」
「話の流れ的に笠井のなんですが」
「笠井のよ」
「・・・・・・」
「そんなに見つめないでくれる?穴開いちゃう」
「何でお前が持ってるんですか」
「丁寧なのか喧嘩腰なのか分かんないわね。これ笠井の指に合わなかった訳よ」
「・・・は?」
「ちょっと小さかったのね。はいんないのよ」
「・・・・・・」
「それで俺が直したと。素晴らしいね俺」
「どの辺まで本当だ」
「全部嘘かな」
「・・・・・・」

三上に睨まれることも答えない中西は相変わらず笑いながら、三上の手の中の指輪を差す。

「笠井がうちに来たときに忘れていったの。笠井は気付かなかったのかな。なくしたって言うの嫌だったんじゃない?」
「・・・何で笠井がお前のうちに行くんだよ」
「企業秘密v」
「・・・・・・」

どうせ聞いても教えてくれないのだろう。
笠井に聞いても同様であるなら三上にとって良いことではない。

「ごめんって。笠井に連絡しなかった俺も悪かった。お詫びにここは奢ってやろう」
「何で偉そうなんだよ。吐くまで飲んだる」
「どうぞー?」
「潰れたら笠井んトコまで送って」
「酔った勢いとは男らしくないな」
「うるせー」

それでデジャブ感じるぐらい演技がかって、これをまた君にあげよう。


うちの笠井はきっと指輪なんて貰っても嬉しくないんですがでも何かを貰ったと言うことが嬉しいと思う。

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