0 3 : 左 腕

「落書きしていい?」
「殺すぞ」
「・・・・・・」

中西が不機嫌絶頂だと言うことはよく分かった。
三上は観念して中西から一歩後退する。
今日の不機嫌の原因は左腕。彼の左腕は現在肩から布で吊ってある。

「うわー、中西先輩どうしたんですか」
「・・・・・・」
「あっごめんなさい、聞かなかったことにしていいですか!」

笠井が慌てて三上の後ろに逃げた。
相手が笠井でもこの反応。自分がこれ以上ちょっかい出せばどうなるのかと三上は少し怯える。

「・・・別にどうってことないんだけどさー・・・・・・屈辱だよねー・・・」
「・・・どうしたんですか?」
「俺に聞くなよ・・・折ったらしいぞ」
「折・・・!?え、さっきの試合の時の?」
「だとよ」
「・・・中西先輩って左利きですよね」
「ホントにどうしてくれるつもりだろうね・・・相手の技量も考えずに突っ込んでくるあのアホを・・・」
「落ち着け中西・・・事故だから・・・」

俺は全く落ち着いてます、
中西は三上を睨み付ける。落ち着いてはいるが平静ではない。

「もー・・・テストあるのにどうすんのよこれ」
「テストあったっけ?」
「再試」
「・・・・・・」
「テストの日休んだでしょうが」
「あぁ、だよな」
「えーと・・・テストのお手伝いは出来ないけどお風呂でお手伝いしましょうか!」
「あら笠井ナイスアイディア」
「ふざけんな」




「んで・・・本気で行きやがったんだけどどうすればいいと思いますか」
「俺に聞くな」

真剣な三上を前に辰巳は顔をしかめた。

「中西の好きにさせてやれ、効き手が使えないと結構不便だからな。飯食いながらキレてたし」
「あー、結局根岸が食わせてたぞ。中西のやつ結構堪能してんじゃねぇのか?」
「・・・・・・」
「・・・どうよ、辰巳としては」
「何が?」
「可愛い中西が負傷して」
「愉快」
「・・・・・・・・・」

俺がチクったらお前死ぬぞ、
それでも何となく強くなった辰巳を前に三上は笑ってやった。

「見てると結構面白いぞ、俺に近付いてこないから」
「ん?何で」
「俺が優しくするから」
「・・・・・・」

既に遊び済みだったらしい。
たくましい辰巳に三上は拍手を送った。


強気な辰巳が書きたかったんだけどね。
中西は案外繊細なので(肯定)不意にひとりになったときに己の不運を嘆きます。

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