「好きか嫌いか聞かれたから嫌いって言っただけなんだけどねーぇ」
「はは、そりゃお前が悪いだろ」
「俺女の子のしゃべり方嫌い・・・」

痛い頬をさすりながら中西は溜息を吐く。
俺は悪くないよ、と三上に返して煙草をくわえた。

「火ィ返してー」
「ほい」

上から落ちてきたライターを片手で受ける。
しゃがみ込んでいる中西を見下ろして、三上は笑いながらフェンスを軽く蹴って揺らす。背中を伝う振動が嫌で中西はフェンスから少し体を引いた。

「だって、好きか嫌いで聞かれて好きじゃなかったら嫌いって答えるしかないじゃない。好きじゃないって言う答えは答えとして成立しないでしょ」
「まぁその言葉だけ考えたらなぁ」
「あーイッター・・・しかも爪伸びてやんの、ひっぱたくついでに引っ掻きやがった」
「そら災難でした」
「全く」

ライターになかなか火がつかない。何度か試してやっと火が点く。
三上がフェンスに寄りかかり、フェンスは大きく揺れた。

「でもそれ可笑しいだろ、付き合ってたんじゃねーの？」
「だって告られたとき好きじゃなくてもいいってゆったもん。何それって感じ」
「あーそりゃ確かにおかしいけどよ」
「何で女って本音をしゃべんないんだろ。ややこしくてやんなっちゃう」
「適当にあしらっときゃいいのによ」

くわえた煙草から上る煙を見て、中西はやっぱり溜息を吐いた。

「まぁ可愛かったんだけどねェ」
「可愛かったなぁ」
「でもねー、俺煙草吸う女の人って苦手なんだよねー」
「あ、なに？彼女煙草やんの？」
「しかも歩き煙草。最悪」
「あーあ」
「何考えてんのかなー。女の子の歩き煙草って可愛くないよね」
「つーか中西煙草吸う割には嫌いだよな」
「嫌いだねェ。匂い消すのに吸うから」

煙を深く吐き出して。
三上は何故か隣で煙草の空き箱を慎重に分解している。
そう言う三上は煙草は吸わない。

「贅沢」
「俺匂い駄目なんだよねー、香水とか化粧とか」
「煙草は平気なんだ？」
「比較的。親吸ってたから慣れかな」

あー・・・痛い。
中西は頬をさする。

「ねぇ三上」
「ん？」
「俺と付き合わない？」
「・・・は？」
「俺三上のことは大好きなんだけどな」
「あー・・・」

んじゃ、お前が煙草やめたら。

淡泊な中西さん。そんな君も好き。書き易いんだけどね。
中三にする予定はなかったんだけどね・・・（性）