0 7 : ポ ッ キ ー

「中西ー、飴ちょーだい」
「どうぞー」
「どうもー」

中西は根岸に向かって飴を投げた。
隣で見ていたクラスメイトに、要る?と聞いてみる。

「いや、いい」
「そう」
「つーか、お前ら普通に『校則違反』だしな」
「『勉強に関係のないものは持ってこない』ね。まぁ勉強には関係ないけどさー、生活には関係あんのよねェ」

ポケットから出した飴を口に含む。
一瞬甘い香り。ばれるぞ、と忠告するが、何を根拠にか中西は大丈夫大丈夫と軽く返す。

「生活って?」
「煙草やめたから口が寂しくて」
「・・・中西さんって部活は何でしたっけ?」
「サッカー部に在籍しております」

クラスメイトが何か言う前に煩いよ、と言っておく。

「だからやめたんじゃない」
「ふーん・・・でもお前と煙草ってイメージ合いすぎな」
「三上みたいなこと言わないでくれる?俺が単純みたいじゃない」

共犯だ!
中西が敵のポケットに飴を幾つかねじ込んだ。

「なんで煙草やめんの?やっぱ体力?」
「んー・・・つーか、それはあんま関係ないんだけどねーまぁゼロじゃないけど」
「何?訳アリくせー」
「単純って言われるからやなんだよねー三上に言われたし」
「何だよ」
「好きな人が煙草嫌いってゆったからさ」
「・・・・・・」
「何よ、単純で悪かったね」
「いや・・・単純とかじゃなくてお前に好きな人ってのがショックだ・・・」
「何それ・・・」




「というわけでキスして下さい」
「他に相手を捜してくれ」

正座で真面目腐った顔で言われても、そんなセリフを吐かれては真面目の真の字も見えてこない。
辰巳は本から顔を上げずに即答する。昼休み、折角の快晴だから青空の下で読書としゃれ込んでいたのに。屋上には珍しく人影がない。

「なんでー、じゃあ笠井とするよ?」
「どうぞ」
「ホントにしに行くよ?教室だろうが廊下だろうが職員室だろうが洋画バリに激しい奴を笠井が本気で泣こうがわめこうがぶちかましてくるよ?」
「やりかねないからやめてくれ!」

可愛い後輩を生贄にすることは辰巳には出来ない。
神か悪魔か紙一重の男はにやりと笑い、辰巳が本から顔を上げた隙を狙って唇を重ねる。

「・・・・・・」
「だって飴なくなっちゃったんだよ」

もっかい、と顔を寄せてくる中西の顔を本で叩く。
辰巳は深く溜息を吐いて、不機嫌な表情の中西の前に箱を差し出した。笠井の代わりの犠牲だ。

「・・・ポッキー?」
「食っとけ」
「えー、授業中不可じゃん。貰うけど」
「授業中ってお前・・・」

赤いパッケージの箱を手にし、中西は早々とそれを開ける。
袋を開けるのを待って、辰巳は1本拝借した。

「つーか辰巳なんでこんなん持ってんの?」
「まだ英語やってないか?ゲームやった賞品」
「あら豪華なこと。英語のセンセー若いもんね」
「持って帰って食えって言ってたけどな」
「ふーん・・・」

1本口まで持っていき、くわえる前に中西は何となく隣を見る。

「・・・・・」

中西は再び本を読み始めようとした辰巳の手を下ろし、平然と辰巳のくわえたポッキーの反対側を食べる。。
辰巳に驚く間も与えずにぱきぱきっと短くして。

「・・・・・・」
「英語の先生なかなかイイモノくれたねェ?」

しまった。
辰巳がそんなことを思ったってもう時間は戻らない。


ポッキーゲームってどういうゲームなのか知らないんですが。
何をどうしたら勝ち負けが決まるんですか?

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