ネ ク タ イ (中西)


「おーい、起きたかー?」
「なんとかー」
「先行くよー」
「はいよ」

欠伸をかみ殺して中西はブレザーに袖を通す。
ばいばい、と手を振って根岸が行くのを横目に見て、時計を睨みつつネクタイを手にした。

「・・・やった・・・」

だらんと垂れたネクタイを手に中西は肩を落とす。
廊下に顔を出すが勿論根岸の姿はもうなく、中西は諦めてネクタイを振り回して部屋を出た。
食堂の前で後輩を見つけ、出ていく彼を捕まえる。

「笠井、ネクタイ結んでくんない?」
「え」
「解けちゃったのよ」
「・・・中西先輩ネクタイ結ぶ練習しないんですか」
「意外性で可愛いでしょう。学校までこのままでもいいんだけど今日立ち番いるし」
「え〜・・・俺も向き変わると出来ないかも・・・」

取り敢えず中西の首にネクタイを回し、笠井はそれを手にしばらく考えて手を動かす。
普段はネクタイを結んだ状態のままにしてあるのだが、今朝は何故か解けたらしい。
笠井が頑張って格闘するがどうも上手くいかないようだ。中西の方が諦める。身長差のお陰で腰が痛い。

「まぁいっか、どうせ立ち番和田センセーだし結んで貰おう」
「おい、」

肩を叩かれて振り返れば辰巳が立っている。今正に学校へ向かおうと玄関へ向かう最中のようだ。

「あぁごめん、邪魔?」
「じゃなくて」

ネクタイを引っ張られて真正面に立つ。
普段から外しているシャツの第一ボタンも留められて、辰巳がいとも簡単にネクタイを結んだ。よし、と自己満足に呟いてそのまま鞄を持ち直す。

「・・・苦しい」
「慣れる」
「・・・俺明日から辰巳にネクタイ結んで貰おうかな」
「二度とやらないからな」
「なんでよー、今の頼んでないじゃんー」
「早くしないと遅刻だぞ」
「待っててよ、鞄取ってくるから」
「10秒な」
「あーもうッ」

中西は階段を駆け上がり、辰巳は玄関へ向かい。
残された笠井は不満そうに顔をしかめる。

「・・・別に良いですけどねー」

朝っぱらからノロケんなよ。
喧嘩中の身には毒だ。思った矢先に不器用、と後ろから三上の声が飛んでくる。

「・・・なんであいつら朝っぱらからああなんだよ」
「・・・辰巳先輩が三上先輩と違って優しいからじゃないですか?」
「俺が優しくないってか?あぁ?」
「自分が優しいとでも思ってるんですか?」

お前らも朝っぱらからしかも出入り口で喧嘩してるなよ!
食堂から出られなくなった人間は遅刻の心配をするのだった。

 

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