さ よ な ら を 言 わ な い 別 れ 方


────あんたが俺を捨てるようなことがもしあるとしたらその時はサヨナラなんてかっこつけたこと言わずもう二度と顔見せンなってぐらいこっぴどく捨ててくんない?そしたら俺はあんたの所為で心に傷を負ってそれで一生を生きてやるから。

その男はひどくひねくれたことを笑顔で囁いた。
じゃあさよならって言って捨ててやるよ、(もし捨てるようなことがあるとするなら)




その部屋に入るのに持ち物検査は必要なくて、例えば俺がこのペンじゃなくてナイフを持って入ったとしても状況は変わらないだろう。
他に誰も居ない静かな部屋で一対一。
眠るあいつは死んだように眠っている、ように見える。だけど死んだようになんて控えめに眠れる男ではなくて、だからきっとこれは死んでる。今ここで思い出にしてしまうことは可能。

布を少し捲って腕を取る。冷たい手。
ペンのキャップを抜くと気持ちのいい音がする。
ペン先を腕に押しつけた。くすぐったがらないのでまだ書きやすい。

さよならは言わない、捨てるわけではないから。捨てられたとも言いきれない。
明日か明後日か10年後かぐらいに俺も死ぬから、

またな、とだけ。
ばっかじゃねーの、なんて笑う声が聞こえそう。
もう二度とあんたには会えねーよ、

 

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