電 池 切 れ (オリジ)
赤いMDが一枚と、写真が一枚。
残った彼女はそれだけ。
「何聞いてるの?」
「何も」
「だってMD聞いてんじゃん」
「じゃあ話かけんなよ」
「何も聞いてないならいいじゃん」
「・・・矛盾って知ってるか」
「あっはっは無視無視」
「・・・・」顔をしかめてへらっと笑う相手を見た。
制服もきっちり着た優等生代表。髪の赤い自分と並んでいるとどう見られるか知っているんだろうか。「・・・授業は?」
「お、やっと俺のこと気にしてきたね」
「つかウゼェよ」
「今は世界史でーす、自習なので腹痛ってコトで」
「意味わかんねェ」
「直訳すると君に会いに来た」
「キモイ」君って辺りが。
指摘してやると声を立てて笑う。
それから目をそらしたくて制服のポケットにつけたMDのリモコンを見た。数字は変わっていく。
5分経った、もうすぐ曲が終わる。75分のディスクに5分強。それだけ。「────ぁ」
「何?」
「・・・別に」電池が切れた。
最後まで歌わずに死んでしまった。「・・・なぁ、お前、ホモ?」
「は?何でよ。俺は純粋にー、君が一緒に住んでる小説家のセンセーとお付き合いになりたいが為に君にアタックしてるんだよ」
「不純だし」
「ホモじゃないよ」
「あっそ」ネクタイを少し緩める手。首。
「屋上好きだね」
「嫌い」「そう?俺も実はちょっと高所恐怖症なんだよなー、足元からブルッとすんの」
「あ、でも昼飯の時はいないよね。何処で食ってんの?」
「そーいや食堂のメニュー増えるらしいよ」
「あーチャイムだ。次は物理かー」
「君は?次もここ?」
「ねぇ」
「首」
「・・・何?」
「首絞めていい?」
「・・・やだよ、何それ、趣味?それとも本気?どっちにしろごめんだよ、俺は君の欲求不満を解消したいわけでも君を犯罪者にしたいわけでもないから」
「・・・・・・」
「・・・あれ、MD止まってるね。いつから?止めてくれた、・・・わけはないか。はい、電池あげるよ」
「・・・え」はい、と突き出された拳。
固まっていると強引に電池を押しつけられた。単3電池が2本。「電池が切れたら俺が充電してあげるから、MDに飽きたら俺の話聞いてよ」
「・・・・・・つーか」このウォークマンじゃこの電池使えないんだけど。
「何?」
「・・・・」ぜったい嫌いだ。
こいつは絶対嫌い、いつか心を許してしまいそうな気がするから。
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