重 い (山崎)
刀はきっと人の血を吸う。ひとりふたりと斬るたびに刀は重くなっていく。
仕事だと割り切ってるといえば嘘になってしまうけど、それでも納得はしているしそれを承知で、覚悟の上で真選組に入隊した。
「山崎」
「あ、ハイッ」
そっち持て、と言われ、誰かが斬った人の足を持ち上げる。
もう血は大分出ているだろうけど、その体は重い。
恋人や妻子はいたのだろうか。俺から見える足だけでは年も分からない。
「今回は手こずったな」
「・・・そうですね」
「山崎ィ!」
「ハァイ!」
落ち着かないまま返事をしたのでおかしなことになった。
山崎!もう一度叫ばれて声の主が分かり、慌ててそっちへ駆けていく。
血に濡れた廊下。土足で室内を進む感覚にも慣れない。足が重い。
「はいよっ、副長お呼びでっ」
「何人か逃げた」
「はい、幹部格にいた男は追わせています」
「そうか」
「・・・・」
土方副長は綺麗なもんだ。返り血も殆どない。
頬が薄く切れているけどそれは沖田隊長によるものだと見て知っている。
またひとり側を仏が運ばれていった。血を吸った着物。
「───山崎」
「・・・大丈夫です」
毎回思う。
この人達は俺が報告をしなければ死ななかった人達だ。でも見逃せば他の人達が死ぬことになる。
だから
間違ってない。
重い。
手足が重くなる。方から腕が重みに耐え切れず落ちてしまわないかと思う。
「帰るぞ」
「───はいよっ」
手足が動く限り俺はこの重さを感じ続けるんだろう。
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