バ イ ト 先 の 日 常 (情報屋)


「・・・おい何見てんだ笠井」
「求人広告を」
「お前はここでバイトしてんだろ?ん?」
「・・・・・・」

にこりと似合わない笑顔を見せる三上に笠井もにこりと応戦する。
三上が経営する小さな喫茶店、そこは廃ビルのように見えるビルにある。そんな場所で商売をしているのは消して儲けが目的ではないのだが。
薄っぺらな求人広告を丁寧に折り畳み、それをポケットにしまって。

「バイトというのは俺が給与を受け取って成立するんですけどね」
「わっ、笠井ってば給料もらってないの?やだー」

中西がカウンターでけらけら笑う。三上はきっとそっちを睨み付けた。

「だったらテメェ金払えよ!」
「あらやだ、奢りでしょ?」
「だぁれが奢るかっつの!」
「ケチー、どうせ安モンのコーヒーじゃん」
「金はらわねぇから安モン出してんだよ!笠井もうだうだゆってんじゃねぇ、今更だろうが!功刀だってただ働きだぞ!?」
「あいつは仕事してない上ここの居候でしょ!?俺は本来辰巳さんの助手なんです!」
「だったら仕事についていったらどうですかー」
「ぐ・・・だって今回は俺の知り合いに会う可能性があるから・・・」
「辰巳も昔は歩き回ってたけどよー、もう最近じゃ情報収集はパソコンのみだもんなー、ひとりで回ってて大丈夫かどうか」
「た、辰巳さんは大丈夫ですよ!それより俺の給料!」
「チッ・・・」

時給がいくらで仕事時間がこれほどでと笠井はホワイトボードに書き殴って三上に突きつける。
溜まりに溜まった給与はパッと見ただけでは桁すら数えられない。

「は・・・払えるかッ」
「本来なら払って貰ってる額です!」
「お前は辰巳に養ってもらってるからいいだろーが!」
「俺は店長が辰巳さんから場所代ふんだくってるの知ってるんですよ」
「う・・・」

喫茶店の片隅を情報屋に貸しているのは事実だが。
さぁ、と詰め寄る笠井に反撃のタイミングを逃した三上を見て中西は笑う。

「笠井笠井、そんなに金が要るんだったらバイト紹介してやろうか」
「・・・なんか中西さんには頼りたくないです」
「なんでー?ちゃんと相手選んでやるからー、上手く行けば一緒にご飯食べるだけでも金貰えるよ」
「体は売りません!」
「今の世で仕事選んでちゃ生活できないよ〜?いいセン行くと思うんだけどなぁ」
「嬉しくないです」
「あ、じゃあ毛売るとか」
「・・・・・・毛?」
「そう。体毛。売れるよ」
「・・・・・・」
「変態はいっぱい居るからね、下の毛とかね。顔写真つけるともっと高くなるかもね」
「・・・・・・」
「お、悩んでる?悩んでる?」
「・・・いっ、いやっ、そういうことはしませんってば!」
「そーぉ?切羽詰まったら連絡ちょうだいねぇ」
「そーいや辰巳の独立資金も中西が集めたよな」
「んー?まぁねぇ、俺あの頃辰巳の犬だったから・・・v」
「えっ・・・」
「・・・ふっふ、聞いてない?俺ってば辰巳にかしづいちゃってたのよ?」
「・・・・・・」

「・・・・・・お前らそうやってあることないこと吹き込むな・・・」

帰ってきた辰巳は笠井からの疑いの視線を受けて胃痛を覚えるのだ。

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