銃 声 の 記 憶
「・・・ハァッ・・・くそ・・・」
殴らせろ、
功刀の声は風に掻き消えた。そうでなくとも言えたのかどうか分からない。
砂煙を上げて走るジープを睨み、功刀はその場に座り込む。「・・・バカ、くたばれ」
きっとあいつはあの中で笑っている。
理由なんかないんだろう。飽きて、出ていきたかっただけ。
握ったままだった弾を弾倉に込める。リボルバーを回して適当にセットし、構えた。
まだ届く。
指を引き金にかけ、引いた。弾は出ない。「・・・・・・ロクな死に方せんぞ・・・」
大きく息を吐いて銃をしまった。
ほぼ同時ぐらいに、先輩部隊が追いつくが既にジープは門を抜けていた。
指揮をしているのは城光だ。功刀を見て、笑った気がする。
彼等はすぐに優秀な指導者の元を散り、素早く指示通りに脱走者を追っていく。
騒がしさが消えた頃、残された功刀の元へ来たのは西園寺だった。「大丈夫?」
「だるいっス」
「そうでしょうね、三上君相手に一晩付き合って薬も飲まされすぐに走って」
「・・・俺・・・なして俺やったのか分かりません」
「簡単なことよ」腰に巻き付けていたジャケットをほどいて汚れを払った。
薬の所為なのか疲れの所為なのか、妙に眠い。だけど到底眠る気にはならなかった。「三上君のお父様にそっくり」
「・・・あいつは父親抱くんですか」
「父親じゃないから抱いたんでしょう。迷わないためにね。彼にとって父親は目標であり尊敬の対象、他の何とも替えられない」
「・・・・・・三上はこれからどうするんですか」
「さぁ、学校外のことは私には関係ないから」
「─────あの」
「何かしら」気持ちのいい風が吹いた。
悔しいほどに気持ちがいい。ふと、入学してからまともに校舎の外へ出たのは初めてじゃないだろうかと思い当たる。「もしかして俺 三上の代わりですか」
「そうね、そうして貰わないと困るわ」
「あいつ・・・そのつもりで・・・」見上げると西園寺は笑っている。
自分はきっと笑う人には縁がないのだ、そう言うことだろう。
西園寺はポケットから、さっきしまった小さな板を出す。「それはこっちで管理してる盗聴器よ」
「・・・そっちで?」
「ええ」
「・・・・・・」
「リアルタイムで誰かが聞いてるわ」
「・・・・・・」
「三上君も元気ねえ、今頃倒れてるんじゃないかしら」
「俺よりよっぽど丈夫みたいやったんで大丈夫じゃなかですか」皮肉を込めて言ってやる。くすくすと楽しげに笑い声。
「それはないわね、だって三上君はズルをしてたんだから」
「ズル?」
「ちょっとばかりドーピング」
「・・・セコ!」足を踏みならして無理矢理腰を上げる。
ジャケットを着て、ポケットからディスクを出す。無造作に地面に投げて落とした。
剥き出しのそれはきっともう聞けないだろう。だけど2度と聞く気もない。
功刀は銃を向ける。
引き金を引いて、3度目に弾が出た。久しぶりの轟音に反射的に目を瞑る。「お見事」
西園寺が拍手を送った。手袋に包まれたそれは余りいい音ではない。
砕けたディスクを足で払って欠片を散らす。「聞かなくて良かったの?」
「どうせロクなことやない」遠くで騒ぎ声がして、銃声だ、なんて声を聞き取って功刀は焦った。
習慣的に西園寺に敬礼をして、後は宜しくお願いしますと言い残して逃げていく。
その後ろ姿を見て西園寺は溜息を吐いた。もう聞こえない返事を返す。「いいわよ。嘘や偽証のひとつやふたつ」
「────・・・・・・夢見 悪ッ」
功刀は再び布団を頭まで引き上げた。
店の方からはいつものように三上と笠井の言い争いが聞こえてくる。
嫌な予感がしていると、案の定笠井を言い負かしたらしい三上がドライバー片手に部屋に入ってくる。「くーぬーぎーさーんお店出て下さーい」
「いやや」
「何だとコラ、おい。ギブアンドテイクだ、放り出すぞ」
「やってみ?」
「・・・・」功刀は起き上がって笑う。
諦めたようにドライバーを部屋の端に転がし、三上は功刀の布団を無理矢理引き剥がす。「店 出なくていいから寝るな!脳味噌腐るぞ!」
「今まで寝てないっちゃ、少しぐらい寝かせろ」
「何処が少しだ」
「だーれーのーせいでこき使われたとおもっとんのや!」
「さぁ」
「貴様じゃ貴様」
「寝溜めは出来ねぇんだよ」
「俺は出来る」布団を取り戻し、再び寝る体制に入った。
少し考えてから三上は隣にしゃがみ込む、ぐっと顔を寄せてみる。「・・・真っ昼間から襲うぞ、つっても夕方だけど」
「おっやる気か?できんのか?」
「・・・あの女何処まで喋った」
「まぁ三上氏の性生活は一通り聞かせてもらった」
「いっとくけどなぁ、好きで薬ばっか使ってたわけじゃねーぞ、学校の女ども自分の体改造してやがんの、あわせようと思ったらしゃーねぇんだよ。そうでもしねぇと情報よこさねぇし」
「俺はいっぺんも使っとらん」
「・・・マジで?愛理とか美都子も?」
「おう」
「え、優衣とかハツも?」
「おう」
「・・・・・・って誰がんなガセ真面目に聞くかっつの」
「ホントやっちゅーの」
「有り得ません。愛理なんかすっげー体に金かかってんだぞ、過去最高の出来と職人に言わせたんだぞ」
「そうなん?」
「あーりーえーん、」屈辱だ、
三上が呟いて功刀はにやりと笑う。学校の中では太刀打ちできなかった男は、ここ数年ですっかり変わってしまっているようだ。
だけどきっとこっちの方が本当の三上なんだろうと思うときがある。「店長ー」
コンコン、とご丁寧にノックをしてから笠井がドアを開けた。
不機嫌な三上に睨まれて一瞬ためらうが、すぐに気を取り直して口を開く。「あと1時間後に断水らしいですよ」
「1時間後?今日?」
「はい。今誠二が来て」
「・・・ったく・・・またいきなりそーゆー連絡してくるだろ?ふっざけんな。いつまで?」
「さぁ、今日は派手に火事起こすらしいので・・・広がったら時間掛かるんじゃないですか」
「はぁ?くっそ・・・めんどくせーな。笠井店閉めていいからとっとと帰って数日風呂入ってねェ情報屋を風呂につっこめ」
「はーい。店長もですよ!」
「分かってるよ!」笠井が部屋を出ていって、三上は不機嫌さを増したようで舌打ちをして立ち上がる。
「・・・何で火事の予定があるんや?」
「ああ、火葬日」
「火葬?」
「そう、そこら辺で適当に死んだ奴とかちゃんと葬式する金がない奴とか動物とか生ゴミとか昔の写真とか、いっぺんに焼くんだよ」
「・・・ふーん・・・」
「起きろ、今から即行風呂。時間ねぇから一緒」
「一緒!キモ!」
「俺だって遠慮してぇよ・・・」
「・・・それ誰が彫ったんや?」
「あ?あぁ・・・」三上が脇腹を撫でた。ホースの先を細めて功刀は三上に水を掛ける。
男ふたりが裸で風呂場とは、非常に味気ない。しかも三上。
三上の脇腹、がんじがらめに絡まる鎖の塊。コメントしがたい刺青だ。「・・・途中からは、城光」
「ヨシ?」
「ああ・・・あいつも抜けたけど、西園寺の下で何かやってたし」
「それは知っとる」
「学校いる頃は途中までしかなかったんだけどな。初め彫ってたのは親父」
「・・・・・・」ホースからの水は三上の体で跳ね返る。
功刀はホースを三上に渡し、脱衣所に出て体を拭いた。「・・・もう、何言ってたとか覚えてねェけど、あれキツかったなー」
三上は愁いを帯びた溜息を吐く。
水は滴っているが、残念ながら裸にホースという出で立ちなので何とも言えない。「床の貯蔵庫にさ、押し込まれて。んでうち結構古かったから、それ隙間あんだよ」
「・・・意味なかと」
「ねーんだよ。隙間から明かりが入ってくんだよ。外の様子までは見えねーけど。
・・・銃声、先に聞いたのか。サイレンサー付いてたのか?もうわかんねぇ。けど隙間が急に塞がって、何かが膝に落ちてきた」蛇口を捻って水を止め、ホースを手放した三上に功刀はタオルを渡してやる。
「後で見たら血だった。匂いで分かってたけどな」
「西園寺が」功刀は唐突に口を開く。
「西園寺が総合課から傭兵課に異動になったんやと」
「・・・そら・・・気の毒に。またあの女、テリトリー広げる気だな」
「本気なんやろか」
「本気なんじゃねーの?政府乗っ取り、なんてアホな目標」三上は着替えてからホースを回収する。きちんと中の水を抜いて蛇口にかけた。
「・・・なぁ、シャワー直せや」
「そのうち」折角綺麗になったというのに三上は裸足で店へ出た。
レジに鍵を掛け、一通り戸締まりを確認する。「火事 見に行く?」
「それってどうなん?」
「おもしれーよ、叫ぶ奴とか泣く奴とか吐く奴とか」部屋に戻って靴をひっかけ、自分で聞いておきながら無理矢理功刀を引っ張って店を出る。
鍵を掛け、その鍵を功刀に持たせた。「あんなみんな同じ顔した養成機関よりはずっとおもしれぇ」
ごめんなさい。
ええごめんなさい。
三カズ三カズ言ってるけどあたしは三カズという言葉に酔っているだけで三カズを書く気はないと言っても過言ではありません(オイ)。
ていうかね。違うのよ。
カズさん書けないのよ。アンダスタン?書けてないだしょ?
もうオリジでイイです。オリキャラでどうぞ。
カズさんではないと思って読めばいいかと(今更)。
設楽とかまで行こうかと思ったけど力尽きましたっていうかぶっちゃけ考え中です。バーカバーカ!
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