びゅーびゅー吹きつける風はいつまでもアタシを苛める気だ。
そんなときにオサレーな喫茶店が目に映って

(温かそうだ)

店内のカウンターにクラスメイトが居た。

そんなアタシ達は労働基準法にも引っ掛かる、煙草も吸えない未成年。


と あ る 喫 茶 店 に て 。


近くまで言ったらしっかりと目が合った。
ガラス越しにぶつかった視線のやり場に困って、彼はしばらく固まっていた。
そりゃそうだ、1週間ほど学校に行ってない奴がお約束のように煙草ふかして歩いてんだから。
何はともあれ寒い。来るモノは拒まない喫茶店のドアを押し開けて中に入った。
からんからん
部屋一杯のコーヒーの香りがぐあっとアタシに押し寄せる。

「・・・いらっしゃいませ」
「やぁ木田、高校生設定?」
「・・・親がやってるんだ」
「なんだ」

同じく法律違反組かと思ったのに。外見通りカタいのか。まぁコイツが中学生だという時点で法律違反な気がするが。
木田が小さく溜息を吐いた。読まれたのかもしれない。

「客なら何処にでも座れ」
「えーと、何か取り敢えず温かいもんちょーだい」

何処に座ろうかと店内を見回すと、・・・・・・犬と目が合った。
犬の方は木田と違って、一瞬だけ目を合わせて直ぐ閉じる。隅の1角の机の傍で丸くなっていた。

「犬!」
「・・・モカ。うちの犬だよ」
「フツー喫茶店とかそーゆー店に動物入れる?」
「1人に出来ないから」
「何それ」
「・・・下半身動かないから」

・・・あれだな、動物番組で頑張ったりする奴か。

「まぁそれもあるけどいい加減ぼけてるから」
「じーちゃんか」
「婆ちゃんだよ」

まぁいいか、犬は嫌いじゃない。少し離れたテーブルに付いた。
少し遅れて木田が紅茶を持ってくる。ついでに灰皿。何も言わずに机の上に置いていった。

「・・・・」
「別に止めはしない」
「そりゃどうも」

木田はまたカウンターに戻る。
こぽこぽとコーヒーメーカーの音がして、気付けば微かにBGM。
時々犬のいびきが聞こえて、アタシと木田以外にヒトは居ない。

「でも勧めはしないな」
「やー、勧められても困るかな」
「不味いだけだし」
「むっちゃ経験者発言じゃん」
「それに女の子だしな」

あ、クソ。
流した上にその話題か。

「いいんだよ、肺ガンでも何でも来い。子ども産む気もない。アタシはさっさと死にたいの、くちゃくちゃのお婆ちゃんになるなんてまっぴらだ」
「そうか?」
「おうよ。他人に下の世話までしてもらいながら生きたくないね、アタシなら死ぬ」
なら一生元気そうだけどな」
「・・・悪かったな病欠なくて」
「でもは可愛いお婆ちゃんになりそうだけど」

・・・・・・あー、駄目だ。こいつはどうも話しにくい。
教師共がこぞって音読させたがるバリトン。確かに耳に心地いいけど。

(アルトだったら怖すぎる)

「じゃあコレは要らなかったか、年とるの祝われても嬉しくないだろう」

かたんと木田がカウンターに置いたのはケーキ。
真っ黒のチョコ系と思しきしっとりケーキに真っ白な生クリームが。

「要るッ!」

咄嗟に(殆ど反射的だ、女の子の性)叫ぶと、木田が苦笑しながら持ってきた。
ピカピカの銀のスプーンと一緒に、アタシの前に置かれる。
・・・・・・ん?

「・・・誕生日知ってんの?」
「俺と同じ」
「ふーん、そうなんだ」
「そんなに甘くないから心配はないぞ」
「ダイエットなんかしてませんー」

太ってても多分しない。
人間の欲求に逆らうことはイイコトじゃない。多分。

「俺は年とるのは嬉しいけどな」

アタシが一口食べるのを待って木田が言った。
誕生日を喜ぶ声だ。

「・・・外見と年齢が一致するから?」
「違う・・・」




「木田ーっ!」

からんからん
あれ、アタシが入ってきたとき鳴ったかな?さっきのことも出てこない。
ドアを押し開けて入ってきたのは、・・・・・・犬だ!!

(正しくは犬っぽいなんだけどアタシには尻尾が見えた)

「よう木田!遊びに来ちゃった!」
「上原」
「桜庭も来てるよ〜、若菜達とか。俺だけチャリ!」

誰だこの騒がしい奴は。
学校の奴ではないことは確かだ、木田にこれだけ馴れ馴れしくかつテンションの高い奴は見たことない。

「誕生日おめでとう!」
「・・・ありがとう」

────ああ、
だからアンタは誕生日が楽しいんだな。



店内は一気に騒がしくなった。
大人の雰囲気のオサレなカフェに中学生が溢れてる。
あぁ、こーいうのがイヤだから学校行かないンじゃん。クソ。


「あにッ」
「悪いけど今だけやめてくれるか」

木田がアタシの口から煙草を抜き取り、灰皿にぎゅっと押しつけた。
火ィ点けたばっかなんだけど。

「・・・なんでアタシが自由権侵害されるんですかー」
「法律違反は自由権じゃない。ココには未来のJリーガーが揃ってるから勘弁してくれ」

Jリーガー
・・・って、サッカー?

「と言うか真田が死ぬから」
「一馬煙草の匂い駄目だもんなー」

加わった声に振り返る。
どんぐり目がアタシをじっと見た。

「木田の彼女?」
「まっさかー。アタシは学校の問題児、木田氏は先生方のお気に入り。万が一つか億に一ぐらいの確立で付き合うことになったとしても、木田が別れろって説得されるに決まってんじゃん」
「へー、木田やっぱ凄いんだ」
「何言ってるんだ、常に上位にいる奴が」
「あ、そーなの?」

一応テストは受けてるけど結果は見てない。

「・・・なぁ、あんたらサッカーやってんの?」
「おう!サインもらっとく?」
「それって数年後に売れる?」
「売るのッ!?」

若菜という奴のリアクションに笑ってやった。
コイツは付き合いやすいかもしれない。

「木田も?」
「木田はDFー」
「あーそれっぽい」

イヤだなぁ。ゴール前にでーんとコイツが構えてたら。
何処から抜けたらいいんだろう。
どうやってゴールを?

まぁアタシには目指すモノがないけれど。

「・・・煙草って旨い?」
「結人」
「判ってるって、やるわけねーじゃん」

アレ。そんなもん?
一馬とか言う奴がじとっと若菜を見た。
・・・一瞬、アタシを睨んだ気がする。

「・・・要る?」
「アハハやんねーよ、好奇心はあるけど俺は自分が可愛いのv」

ふーん
そうか、そんなモンか。

「・・・腹減った」
「賛成」

パタンと長髪がメニューを閉じた。何だっけ、桜庭だったか?
同意したのはさっきのわんこ、上原。

「オムライスが食いたい」
「・・・誰か桜庭に字を教えてやれ、メニューにない」
「いーなーオムライス」
「・・・・・・何人分」

ハァと木田が溜息を吐いて、後ろの席で万歳が起きた。



「ハイ」
「・・・・・・」
「要らないか?」
「・・・要る」

輝く金色のオムライスが。
コレはメニューに入れるべきだ、絶対。

「うわーっ木田カッコイーv」
「茶化すな!・・・ハイ、サンドイッチが真田でサラダが郭」
「・・・ホントに出てくるとは思わなかったよ」
「昨日の残り」
「うわーっ!木田セコッ」

・・・嘘吐け。
そのしゃきしゃきレタスは間違っても昨日のもんじゃないぞ。オイ。
寧ろ残りが晩飯だろう?
イイなぁ、食べたーい。

「・・・俺木田と結婚したい。っていうか結婚して」
「あ、俺もー。何このオムライス!」
「木田にだったら姉ちゃん渡してもいい!」
「でたよ上原のノロケ・・・」

・・・シスコンか?コイツ。
金色の玉子にスプーンを刺す。一口。
・・・・・・アタシが金持ちだったら絶対専属シェフにしてやる。

他の客が一向に入ってこないのは、店の位置が悪いんだろうか。
ふと思って入り口を見れば、OPENと下げられている。
こっち側にOPENってこたぁ、CLOSE?
・・・この男!アタシを追い払うことも出来たのに!

(でもアタシがそれに気付かなかったのはこの男の所為だ)

わぁわぁ騒いでる声で、BGM何か全く聞こえない。
木田がふと気が付いたように、犬・・・モカだっけ?を抱き上げた。一瞬シンとする。
どっこいしょとばかりに、日の当たる位置に移してやっていた。

「・・・なぁ、木田マジで俺と結婚しない?」
「・・・遠慮するよ桜庭・・・」
「あ、じゃあ俺の姉ちゃんやる!そしたら俺木田と兄弟じゃん!」
「若菜・・・」

三白眼が困ってるぞ。
あぁ、木田とかあんまり考えたことなかったけど、結婚したい男ナンバーワンなのかもしれない。

モカの移動した場所にはオレンジ色の夕日が射し込んでいる。
温かそう。イイなぁ。暖房の効いてる室内だけど、やっぱりあんな感じのいい。

「・・・そろそろ帰るかな」
「送ろうか?」
「・・・・・・・・・」

何つった?
この男は今何つった?
普通にさらりと何かぬかした!

「要らないよ!」
「・・・そうか?気を付けてな」
「・・・お金」
「いい、誕生日プレゼント」
「おー、木田おっとこ前ー。ついでに俺等は?」
「メニューに載ってる分だけでも払え」

そしてオムレツ他はサービスかい。
ああ何て悔しい男。

「木田」
「何だ?」
「じゃあアタシも誕生日プレゼント」

クソ、コイツでかすぎるな。
ぐいと胸元を引っ張って、アタシは必死で背伸び。


少なくともアタシはファーストキスだ。


狂った。上等。

「じゃあねっ」
「・・・・・・
「何さっ!」

引き止めるなよ、恥ずかしいのに!!

「煙草はやめた方がいいな」

・・・・・・・・・経験者発言ッ!!?
クソーッ!!!



帰りに煙草を捨てたアタシが居た。

 

 


木田さんはぴばすでーい。
朝(昼だって)ベッドの中で気付いて慌てて考えた。 その割にはまとまったよね!ね!!
辰巳さんとの書き分けが出来ないよ!(撃沈)

021201

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