「いらっしゃいませー! あ、ちゃん」
「こんちは。木田は?」
「駄目ね。死んだみたいに寝てるわ」

不思議の国のアリスの口から物騒な言葉を聞いた。


洋 服 の 中 身


「ハローミスター木田。ご機嫌いかが?」
「最悪だ」
「あらあら。ご愁傷様」

何だかちょっといい気分?
にやりと笑ってやって、は木田を見下ろした。否、見下すという方がいいかもしれない。
の微笑みに木田は嫌そうな顔をした。

「あ、何その顔ー。折角お見舞いに来てやったというのにさ!」
「お見舞いという態度かそれは」
「ええ勿論。週末課題を持ってきて差し上げたわ」
「いらない・・・」
「数学でーす」

けらけら笑いながら持ってきたプリントを机の上に置いた。
それから勝手に机の傍の椅子をベッドの傍に運び、そこに落ち着く。

「んで、大丈夫?」
「・・・さっき計ったら7度だったけど」
「あーらま。風邪長いねー、1週間も休んでんじゃん」
「1週間・・・まぁ今週は3連休あったから休んだのは4日だけどな」
「抵抗力ないんじゃないの?」

何故だか感じる優越感に、面白くなってはやっぱり笑う。
くるりと部屋を見回した。
木田の部屋に入るのは初めてだった。そこは予想外・・・だ。
几帳面そうなくせに部屋は余り綺麗とは言えない。ものが少ないのが救いだろう。

「部屋いつもこんな?」
「・・・こんな。殆ど寝るときしか使ってないから」
「ふーん。ベッドタウン?」

不意には立ち上がり、壁に掛けてあったカレンダーの前に立つ。
日めくりカレンダーの、日付が1週間前だ。木田が風邪をひいた日。

「めくっていい?」
「どうぞ、」

日、・・・月火水木金土そして本日日曜日。
今日は私服の日。木田は着古したTシャツでベッドの中。

「・・・明日は学校来る?」
「行けたらな」
「来てね」
「・・・なんか、あったか?」
「何でもない日だけど」

は今日少し意識して露出度が高め。
木田の傍で顔を覗き込むと、すっと布団から伸びた腕が胸元を押さえる。

「・・・セクハラ?」
「見えるから」
「どうぞ見てー。但し今日の谷間は作り物」

にやりと笑ったが、木田の手を取った。

「触る?」
「遠慮する」
「あのさぁ、木田。お母様部屋に上がってこないかな?」
「・・・多分」
「何してもばれないかな?」
「・・・多分な」
「ふーん、そっか。 何かする?」
「しない」
「つまんない男」

木田の手をベッドに落とし、は椅子に座って脚を組む。
それから少し考えて足を下ろし、部屋を見回した。
ふと足元に見つけたのは、

「・・・煙草?」
「ん?・・・落ちてる?」
「うん、落ちてますが」

は煙草の箱を拾い上げた。
まだ封の開いていない煙草の箱は少しへこんでいる。

「・・・吸わないよね、」
「あるだけ」
「何で?」
「・・・さぁ」
「貰っていい?」
「やめたんじゃなかったのか?」
「やめてないよ、金がないだけ」
「吸うなら外」

しばらく考えて、じゃあいいと煙草を机の上に置いた。
コンコン、とドアがノックされ、木田が返事をする前に開いた。ドアの向こうにはアリス。
木田の母親をやっているその人は可愛らしい喫茶店の店長で、嘘みたいに可愛らしい衣装を着ている。

「圭ちゃん熱大丈夫?」
「7度」
「・・・大丈夫ね?」
「・・・行きます」
ちゃんもお店にいらっしゃい、ケーキ出すからv」

にこり、と彼女は微笑んでそこを出ていった。
木田がベッドから降りて、を立たせて部屋から押し出す。

「・・・ん?起きるの?」
「そろそろ忙しくなる時間だから」
「・・・風邪っぴき?」
「あの人は使えるものは亡者でも使う」

着替えるから、とドアが閉められ。
ドアの前でしばし考え、は部屋に中に声を掛ける。

「・・・ねえ木田、あんたのお母様って」
「好きなものはホラー映画」
「・・・すげぇ裏切りだ!」

あんなにふわふわで可愛らしいくせに。
どうりで木田の性格が悪くなるはずだ、
うんうんと頷くは開いたドアに頭をぶつけた。

 

 


謝りどころ?
木田さんとお母さんは仲良しです。
ぶっちゃけお母さんのイメージはブラックなヒナキ(っポイ!)。
そっちに気を取られ「圭ちゃん」につっこみ忘れるヒロイン。
煙草については伏線のつもりですが本当は誕生日話に続けたいのですが誕生日がとうに過ぎてしまいタイミングを外し・・・

031216

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